九州自然歩道を週末に歩き倒す

目標は九州自然歩道の総延長2932km踏破。

九州自然歩道 50日目 黄金色の収穫の秋 熊本県阿蘇郡高森町清水峠~山都町笹原 2020年9月20日

 本日は標高1000mの南阿蘇外輪山からのスタート。昨夜は夜半に少しだけ雨がパラついたが、その後は晴れて星がきれいだった。トイレに行こうとライトを着けたら、すぐ近くでビーーーというシカの警告音が響き、数頭の足音が遠ざかった。きっと雨でヒトの臭いに気が付かなかったのだろう。

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 6:00にテントから出ると根子岳が正面に聳える。最高のロケーションだ。気温は9℃。半袖Tシャツ1枚だと少し肌寒い。撤収を済ませ、根子岳を見ながら山コーヒーを味わい、7:10に行動開始。

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 昨日の外輪山は藪漕ぎの大盛りだったため少し慎重にスタートする。しかし、いつまで進んでも道が良い。通常の山道の2倍以上の幅で草刈りが行われている。刈られた葉を見ると、この1か月以内に整備がされているよう。ラッキーだ。草原から杉が植林された森に変わり、その後は広葉樹の森に変わる。両脇の笹は背丈を軽く超えるので、もし草刈りされていなかったら恐怖の藪漕ぎだったはずだ。

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 広葉樹の森に上りの木道が現れる。300段以上ある天空まで続くような木道。整備状況は最高に良いが、もし、ひとし君カードをもらっていたならばここでそのカードを行使して100mワープすべきようなコース。

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空まで続くような木道が伸びる

 汗だくになって木道の頂上まで上がるとそこが高千穂野(たかじょうや、1100m)だった。このあたりは聖域のようで、野焼きされた痕跡がなく、広葉樹の森が広がっている。少し先に進むと阿蘇岳が正面に見える絶好のロケーションにベンチが設置してある。ここでシリアルの朝食とした。

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 朝食を済ませて9:00に行動再開。9:07には天神峠(1000m)に到着した。少し進むと水の音が聞こえてきた。山道の脇に小さな沢が流れている。ここは外輪山コース初の水場。洗顔、歯磨きを済ませて再出発。

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 さらに20分ほど歩き、9:42に多津山峠(1060m)に到着。ここまで山道の整備状況は最高に良い。さらに1.4km先の駒返峠(1070m)には10:14に到着。コースタイムよりもずいぶん早く到着した。ここでは反対側から外輪山を歩いている登山者と初めて出会った。清水峠より先の山道の状態をありのままに伝えると、清水峠で高森に下山しようかなと言いながら出発していった。ちょっと悪いことをしたような気がした。

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 駒返峠からは南阿蘇外輪山から南に折れて山都町に向かう。これから先も山道の整備状況が良いように祈りながら駒返峠を左折して進む。ここも両側は背丈を軽く超えるような笹なのだが、しっかりと草刈りがされている。このあたりは先週ぐらいに刈ったばかりのようで、いまだに笹の良いにおいが漂っている。笹原が終わると杉の植樹林に変わるが、相変わらず整備状況は良い。なんなく林道に到達。

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 ここからは九州自然歩道に従って山中に突入する方法と、並行する林道を安全に進む方法があるが、今日の整備状況の良さから一か八かで山中に突入した。すると、ここも幅広い山路が整備されている。奇蹟だ。コースの最後こそ、間伐材が散乱しており、自然歩道が一部消失していたが、ほとんど問題なし。大矢国有林入り口までの5kmの道のりを1時間で踏破した。舗装路と変わりないタイムだ。

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 ここからは自動車も通行可能な林道を歩く。よく手入れされた山が続く。3kmほど歩くと舗装路に変わり、休憩を挟んで13:17に稲生野の集落に到着。バス停があるので時刻表を確認。平日のみ2便で、山歩きへの利用は困難そうな運行状況だった。ここには食堂があるような地図情報があったので探してみたが店舗はなし。バス停の前に自販機があったので飲料水を補給した。

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 いくつか小さな集落を抜けたところで、川沿いの気持ちのよさそうなところがあったので、道路から下りて行ってラーメンの昼食とした。川の水は透き通り、心地よい昼食だった。

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 さらに進むと、九州自然歩道は県道から離れ、手掘り風の小川トンネルを抜け、山越えルートに入る。小さな峠を超えると後谷の集落に着いた。川沿いの集落だが、集落の前面が一面の田んぼになっており、黄金色の稲穂が揺れて輝いていた。

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 あまりの見事さにしばらく見とれていると、地元の90歳のおじいさんが電動カートで通りかかり、地域の説明をしてくれた。米の銘柄はヒノヒカリで、10月に収穫予定、数年前に運転免許を返上して、現在はこれが愛車とのこと。

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 おじいさんとは15:53に分かれ先に進むと、5kmほどで通潤橋の分水と、さらに500mほど遡って通潤用水の取水口に出た。

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 時間は17:00ちょうど。時間もよいので、このあたりで今日の活動を終えることにした。 

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2020年9月20日 九州自然歩道 51日目 熊本県阿蘇郡高森町清水峠~上益城郡山都町笹原 晴れのち曇り 気温24/9 距離21.1km 行動時間9:47 平均速度2.7km/h 33693歩

九州自然歩道 49日目 藪漕ぎ上等南阿蘇外輪山 熊本県阿蘇郡高森町高森中央~高森町清水峠 2020年9月19日

 今回の九州自然歩道は、阿蘇カルデラの内部の南端にある高森町からの再開。自宅から高森からはバスを乗り継いで5時間近くかかるため、金曜夜から同地の民宿に前泊となった。本日は5:00に起床し、高森の市街地を散策してから朝食を頂いて7:48に出発。カルデラの中だが、標高は550mからのスタート。

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高森湧水トンネル

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今日は阿蘇山がきれいに見える

 高森の町はずれまで来ると阿蘇山がきれいに見える。先週は雨の中だったから、青空をバックにした阿蘇の風景が目に沁みる。8:10には高森の東の村山集落に到着し、ここから黒岩峠に向かう山道に入る。

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もうヒガンバナが咲いている 秋だ

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村山集落からの山道 正面が清栄山

 高森から黒岩峠に向かう道は牧草地の中の舗装路。緑の芝生に白いカーペットを敷いたような道路で、快適に高度を上げる。牧草地には数頭の牛がのんびりと草を食んでいる。

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牧草地の中の道を歩く

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 9:09に黒岩峠に到着。標高は870m。ここから西に高森峠に向かって進もうと思っていたところ、ちょうど清栄山(せいえいさん、1006m)への登山道を整備している高森オールドボーイズから、清栄山の登山道の草取りが半分位できたから上ったどうかと声をかけられた。今日は距離が長いから困ったなと思いつつも、そういわれたら登らないわけにはいかない。黒岩峠に荷物を置き、山頂まで走って登った。コースタイム上り30分のところ15分、下り20分を9分。黒岩峠ではオールドボーイズが早かねーと褒めてくれた。

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黒岩峠では清栄山の山道の整備中

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根子岳

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阿蘇山

 黒岩峠で小休止の後、本日の本来のコースの南阿蘇外輪山コースを西に向かって9:52に進み始めた。カルデラの外輪山の稜線に沿って、最初の目標は3.3km先の高森峠。柵を乗り越えて牧草地に進む。阿蘇山を眺めながらの草原の中の心地よい道と思ったのは最初だけ。進むにつれて、道が見えないほどの藪になっている。外輪山の辺縁を歩くため、右側は崖だが、背丈より高いススキに覆われており、前に進めない。足を踏み外すと崖に落ちそう。また、ススキの中にアザミが生えていて棘がズボンの上から容赦なく刺す。半袖の上腕はススキで切れて切り傷だらけ。汗がしみる。フラフラになりながら11:00に高森峠(872m)に到着。ここで福岡から持参の果物を昼食として食べた。

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道があれば草原の中の心地よい道

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草原の景色は最高

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藪漕ぎは大変

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道があれば最高

 11:30から行動再開。高森峠の標識が倒れており、登山道の入り口がわからない。地図に従って入り口を探すが藪に覆われており見つからない。やむなく牧草地の柵を開けて進む。道はなく、牛が歩いた後なのか、深い溝が掘れている。50mほどの標高差の牧草地を登り切ったところで九州自然歩道の標識を発見。登山道は見つからなかったが、結果はオーライ。しかし、この先も道は見えず、ときどき草に隠れた標識が現れるだけ。全力で藪漕ぎして先に進む。とくに外輪山のエッジに沿ったところの藪は深く、ススキとアザミで身体中傷だらけ。1.9kmの行程に1時間半かかり、13:03にようやく中坂峠(830m)に到着。藪漕ぎは体にこたえる。30分休憩し、13:30に行動再開。

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ここから突破

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道は、ない

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道があったら最高

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こういうところは地獄

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ときには牛と鉢合わせ

 次の目標は2.1km先の崩土峠。中坂峠からの登山道は入り口こそ藪に覆われていたが、意外と草が短く歩きやすい。コースタイムどおり、60分で標高880mの崩土峠に到着した。

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山中の太陽光発電施設

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このぐらいなら道がなくても歩く

 次は1.6km先の長谷峠。ここは最初から藪漕ぎの連続。まったく道が見えず、藪が深すぎて前に進めないため外輪山の外側にエスケープ。本線がどこか不明のままグルリと南に大きく迂回して1時間以上かけて15:40に長谷峠に到着。

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いきなり入り口からこうだとやる気がなくなる

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このアザミが凶暴

 この先は2.0km先の清水峠。ここも藪オンリー。もうどこからでもかかってこいの気分。道があろうがなかろうが、地図のとおりに真っすぐ進む。腕も足も傷だらけ。わずか2kmに1時間半以上かかり、17:18にようやく清水峠(920m)に到着。

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もう、藪漕ぎ上等

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倒木だって気にしない

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誰かが落とした弁当のミニトマトかと思ったらキノコ

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こんなのは藪のうちに入らなくなった

 そろそろ暗くなってきたので、本日の野営地を探さなければならない。清水峠からは、その先の無線中継所までサービス用の舗装路が続く。20分ほど歩いたところで根子岳を正面に望む草地を見つけて、本日はここでビバーク。標高はちょうど1000m。南阿蘇外輪山の藪漕ぎの1日だった。

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正面が根子岳

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2020年9月19日 九州自然歩道 50日目 熊本県阿蘇郡高森町高森中央~高森町清水峠 曇り 気温24/13 距離19.6km 行動時間9:49 平均速度2.1km/h 40368歩

往路交通:

西新15:13福岡市営地下鉄-博多15:27/博多BT15:40西鉄高速バスひのくに号-益城IC17:09/益城インター口17:24産交バス快速たかもり号-高森中央18:38 (阿蘇高森前泊)

九州自然歩道 48日目 阿蘇はでっかいどー 熊本県阿蘇市阿蘇駅~阿蘇郡高森町高森中央 2020年9月12日

 今回の九州自然歩道は、熊本県阿蘇市にある豊肥線阿蘇駅から再開。ここから阿蘇五岳の間を通る日の尾峠を抜けて阿蘇カルデラを北から南に縦断する。

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豊肥線阿蘇駅に到着

 日曜日に仕事が入ってしまい、歩くことができるのは実質的に9月12日の土曜のみで、また豊肥線は運行数が少なく九州自然歩道の再開地点まで乗り継ぎが4回ほど必要で、福岡から5時間近くかかってしまうので、今回は金曜の夜から豊肥線の駅のある熊本県菊池郡大津町に前泊。これからこんな旅程が多くなりそう。それだけ旅情も味わえるが、だんだん遊び以上のものになってきた。

 豊肥線阿蘇駅には6:36に到着。乗客は6名で、阿蘇駅で下車したのは自分一人だけ。あいにく結構な雨が降っている。立派な駅舎の中で上下の雨具と、ゲイターを装着して出発。駅の正面には阿蘇山が聳えている。

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阿蘇駅

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駅の正面にはドーンと阿蘇山

 駅からは国道57号線を東に進み、1kmほどで国道を離れ、蔵原集落の中に進み九州自然歩道に復帰した。蔵原のはずれにはソバ畑が白い花の満開を迎えている。

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しばらく国道57号線を歩く

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蔵原の街の中を進む

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ソバ畑が現れる

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ソバの花が満開

 4kmほど進んだ豊肥線宮地駅の近くのジョイフルで朝食とした。本来は宮地駅の手前で南に折れて仙酔峡を経由するように九州自然歩道の本線は進むのだが、6年前の豪雨の後に本線は通行不能になっている。今回は宮地駅を過ぎたところから分岐する九州自然歩道の支線を使ってカルデラを縦断することとした。

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久しぶりのお米の朝ご飯 美味しい

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宮地駅

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九州自然歩道の支線に入る

 雨は降りしきっており、阿蘇山はほとんど雲に隠されている。幸い、支線の道路状況は良好で、雨の中を快調に高度を上げていく。

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雲で阿蘇山が見えなくなった

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雨は休まず降る

 宮地から支線に入って1時間ほどの9:16に、本線と合流する桜ケ水に到着した。地図を見ると、本線は仙酔峡から桜ケ水に向かう道の2カ所で崩落しているよう。草原の中に気持ちのよさそうなコースが見えているので、いつか歩けるようになったら歩いてみたいなと思いつつ先に進む。

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桜の水からは仙酔峡からの草原の道が見える

 ここからはススキの原の中の舗装路を進んでいく。いかにも阿蘇という風景。時折横切る谷川には土砂が堆積し、土石流の痕跡が残されているようだ。

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草原の中の道が心地よい

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土石流の痕跡か

 阿蘇五岳の中を横切る日の尾峠の標高は990m。現在は880mほどまで上っているが、なだらかな阿蘇の山並みのためか、それほどの高度を感じない。東の方やカルデラの北の方は時折日が差しているようで、振り返ると眩しい緑が目に入る。

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外輪山やカルデラの中の家々が見える

 日の尾峠まで1kmほどの辺りに阿蘇高岳への登山口があったが、残念ながら現在は火山活動のためにこの登山口は立ち入り禁止。また、根子岳へのルートも崩落している箇所が多数あるので注意するようにとの案内がある。

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 ほとんど休憩せずに進んだこともあり、予定よりも1時間ほど早い10:30に日の尾峠に到着。ここから先も、舗装状態は良好で、道の両側には放牧された牛が遠くにチラホラ見える。道路には牛の通行を阻止するためと思われる金属製のメッシュ状の通路やゲートがいくつか現れた。

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日野尾峠を通過

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牛の脱走防止か?

 11:10には峠から4kmほどの鍋の平キャンプ場に到着した。ここは芝生の心地よさそうなキャンプ場。今回はテント泊するつもりはないが、水場やテントサイトの状況などを確認しておく。鍋の平にはカフェがあるようだったので、営業していたら休憩しようと思っていたが、残念ながら閉店してしまっていた。

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鍋の平キャンプ場

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カフェは閉店していた

 かくなるうえは、昼食にはゆっくり時間をかけて名物の高森田楽でも食べようと歩みを進め、12:00に高森田楽村に到着した。予約なしでも食べられるとのことで、雨具を脱いで畳敷きの囲炉裏の傍に陣取った。高森田楽は、この地区でしか採れない名物のつるの子芋や、豆腐、こんにゃく、ヤマメなどを炭火で炙って、みそダレをつけて食べるもの。たまたま手が空いていた店主が丁寧に時間をかけて焼いて出してくれた。高菜ご飯とだご汁もついていたが、高菜ご飯が最高に美味しかった。

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高森田楽村

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囲炉裏で炭で焼いて食べる田楽

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高菜ご飯とだご汁も美味しい

 昼ご飯の田楽にはたっぷりと1時間以上かけ、晴れ間が見えるようになった13:20に田楽村を出発した。目指すは露天風呂の真正面に阿蘇の山々が見えるという月廻り温泉。歩き始めてしばらくするとまたもや大粒の雨が降り出してきたため、せっかく乾かした雨具を再度装着して歩き始めた。結局、3kmほどに1時間ほどかけて歩き、14:20に月廻り温泉に到着した。

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高森のラクダ山

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月廻り温泉に到着

 月廻り温泉は評判通りの素晴らしい景色の温泉。露天風呂からも、室内湯からも、根子岳高岳などの阿蘇五山が真正面に見える。お湯もトロトロで心地よい。1時間ほどゆっくり入浴し、もう一回雨具をたたみ直してバックパックに詰めて、帰りのバスが出る高森に向かって歩き始めた。

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根子岳が正面に見える

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頭は雲の中だが、高岳も見える

 この頃になると、根子岳高岳の頭を隠していた雲がかなり減り、きれいな山容が見えてきた。高森の中心街に入る直前には、道路の正面に阿蘇高岳が見えてきた。大学1年の時に、熊本出身の同級生が、「阿蘇はまーーーごつふとかっぞー」と自分の家の裏庭のように自慢していたが、熊本県人が自慢する気持ちが少し理解できた気がする。

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道路の正面に阿蘇山がドーン

 16:10に高森中央のバス停に到着し、300mほど先の高森駅まで足を延ばした。ここを走っていた南阿蘇鉄道高森線は、2016年の熊本地震以来、熊本方面につながる立野との連絡を欠き、全10駅中のうち終点の高森から4駅先の中松間までで運行している。かつては国鉄の高森線で、高千穂を経由して宮崎県の延岡まで連絡する九州横断鉄道となる予定だった夢のある路線だっただけに、現在の状況には忸怩たる思いがありそうだ。

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高森駅の駅舎

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2020年9月12日 九州自然歩道 49日目 熊本県阿蘇市阿蘇駅阿蘇郡高森町高森中央 雨のち曇り 気温29/22 距離23.0km 行動時間6:30 平均速度3.3km/h 39351歩

往路交通:

別府18:08福岡市営地下鉄天神南18:18/天神バスセンター18:30西鉄高速バスひのくに号-20:10武蔵ヶ丘/武蔵塚20:36JR豊肥線-20:50肥後大津 (肥後大津前泊)

肥後大津5:44JR豊肥線阿蘇6:36

復路交通:

高森中央18:18産交バス快速たかもり号-益城インターチェンジ口19:25/益城IC西鉄高速バスひのくに号19:40-博多BT21:13

九州自然歩道 47日目 外輪山を越えて阿蘇カルデラ内に降下 熊本県菊池市菊池渓谷~阿蘇市阿蘇駅 2020年9月6日

 昨夜は熊本県菊池市菊池渓谷ビバークし、早朝からトレッキング再開。あたりがうす明るくなる5:00には撤収を開始し、6:15に行動を開始した。大型の台風が接近しているので、早めに行動して、早々に帰途につく予定。午後3時ぐらいまでは交通機関が動くのではないかと予想。

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6:15から行動開始

 出発時の雨はほんの小降り。風向きは南風で、阿蘇カルデラの外輪山の北側斜面を登っているからか、風雨はほとんどない。6:30には菊池渓谷の北端の清水谷橋に到着した。

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川幅はどんどん狭くなる

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清水谷橋 ここは間違えやすいポイント

 ここに九州自然歩道の標識があったのだが、標識の向いた方向によく考えもせずに進んだら、1kmほど進んだところで立派な林道に出てしまい、道を誤ったことに気が付く。やむなく同じ道を引き返し、7:00に清水谷橋を再出発した。

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快適に進んだが、不自然なゲートでようやく道の間違いに気が付く

 ときおり風雨が吹きつけるようになった。谷は深く、川の流れはまったく見えなくなった。時折倒木が道をふさぐが、それほどの問題はない。

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谷が深くて川は見えない

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 1時間ぐらいで谷を構成していた木々がなくなり、一面のイネ科の斜面に変わり、周囲が明るくなる。いよいよ阿蘇に入った。

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阿蘇の風景に変わる

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 絵本のような阿蘇の典型的な風景の中をさらに30分ほど歩き、8:30に外輪山の北端のエッジに当たる兜岩展望所に到着した。風雨は強い。南風に乗って、下方から雲が斜面に沿ってものすごい勢いで流れていく。

 今日は時間がないので先を急ぐ。

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兜岩展望所からカルデラ内を眺める

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 次の目標は、兜岩展望所のほぼ真下の内牧(うちのまき)温泉。地図が破線になっているのが気にかかる。外輪山からの降り口は兜岩展望所から西に250mほど進んだ位置。舗装路を進み、降り口は難なく見つかった。しかし、ほんの10mほど降りて、その先の道はほとんど流されていることに気が付いた。そもそもこの下山路は、外輪山からカルデラ内に真下に流れる沢を利用したもののよう。巨大な石が沢をふさいでいる。先日の豪雨の影響かもしれない。浮石も多く危険な状態。ときおり、根ごと倒れた木が行く手を阻む。そのたびに大きく迂回して、藪漕ぎ。高度差400m近くを2時間かけて、ようやく林道にたどり着いた。

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 そこから内牧温泉まではおよそ30分。11:00ごろに到着した。今回は温泉には目もくれずに先を急ぐ。

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内牧温泉

 内牧温泉からはカルデラ内を流れる黒川に沿った農道を6km歩く。遮るものは何もない。風が強くて写真を撮る余裕もない。油断すると畑の中に吹き飛ばされそう。ひたすら目標の阿蘇駅を目指して歩く。バックパックのカバーが飛ばされそうなほど大きな音を立てる。向かい風でなくてよかった。

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 目的地の阿蘇駅に到着したのは12:30。予想が外れ、12:00以降の列車は運休になっている。さて、どうやって帰ろうか。これから多難な1日が始まる予感がする。 

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2020年9月6日 九州自然歩道 47日目 熊本県菊池市菊池渓谷阿蘇市阿蘇駅 大雨 気温28/26 距離17.7km 行動時間6:15 平均速度3.1km/h 26947歩

復路交通:

JR阿蘇駅13:30タクシー-肥後大津駅14:00(台風直撃にて熊本県内のすべての交通機関が運休したため9月6日~9月8日は肥後大津市内のホテルに宿泊)

肥後大津5:00タクシー-武蔵ヶ丘6:07西鉄高速バスひのくに号-博多BT7:35

 

九州自然歩道 46日目 碧く美しき菊池渓谷 熊本県菊池市菊池~菊池渓谷 2020年9月5日

 今回の九州自然歩道は、熊本県菊池市の菊池公園からのトレッキング再開。5:30に家を出てから、乗り換えを4回行い、9時過ぎに菊池に到着した。菊池公園には真ん中に菊池武光公の立派な像が設置されている。これについては少し調べてみた。

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菊池武光像 残念ながら逆光

 菊池武光(1319年ごろ~1373年)は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将で、菊池氏第15代当主。九州における南朝勢力として武功に優れたことから、今なお菊池市民に親しまれているようだ。そもそも菊池氏は、諸説はあるが、平安時代藤原氏に源流を持つとされる名家のよう。西郷隆盛も菊池氏の出とされている。

 菊池氏は南朝を支えた武光の時代を頂点とし、その没後は次第に勢力を失った。17代菊池武朝北朝方に大敗し、19代のころから一族の間で家督をめぐる争いが持ち上がり、22代菊池能運の1504年の死を最後に菊池氏は滅亡。下克上の時代に入り、領地は菊池三家老と言われた赤星・城・隈部氏らに横取りされてしまった。しかし、落ち着いた菊池の街並みには、菊池氏の治世の名残を感じさせるような気がする。

 菊池公園の小高い丘の上に登ると、そこが菊池神社。今日はここにお参りしてから先に進む。

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菊池神社

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菊池市街も一望できる

 丘を下りて、菊池川に向かって進むと集落が現れた。集落には澄んだ水の流れる水路が通っていた。築地井手という水路で、加藤清正が作ったとのこと。現在も菊池の水田に水を供給している。築地井手の取水口辺りの菊池川の水はとてもきれい。地図のとおりに右手に菊池川を眺めながら進んでいたが、九州電力の立ち入り禁止のフェンスがあり、この先には進めない。残念ながら3kmほど戻ることになってしまった。

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築地井手

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取水口辺りの菊池川

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この先は行き止まり

 立派な県道に戻り、3kmほど進んでから右に折れて、大柿の集落を経て、菊池川に沿って進む九州自然歩道に復帰した。大柿の集落には柿はなく、栗畑が多い。そして棚田の緑が美しい。道路沿いに小さなラーメン屋があった。地図ではここが最後の補給地。ちょうど正午だったので、ここで昼食を済ませた。

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大柿の栗林

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大柿の棚田

 さらに進むと、集落のはずれには千畳敷という、広い河原のエリアがあり、ここでは子供たちが川で水遊びをしていた。今時珍しいが、とても気持ちよさそう。この先はまた、菊池川を中心に両岸に田んぼが広がる。

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菊池川の水遊びスポット 千畳敷

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菊池川の両岸には水田が広がる

 14:00に菊池川に沿った道が交通量の多い県道45線に合流した。ちょうどここで大粒の雨が降ってきたため、ガソリンスタンドで雨宿りさせてもらう。15分ほどで小雨になったため、雨具をつけて歩き始めた。九州自然歩道は、ここからは県道45号線を歩く。歩道はなく、交通量が多く、歩きにくい。車から水しぶきをかけられる。

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ガソリンスタンドで雨宿り

 だんだん谷が深くなるにつれて、菊池川の水の色が変わってきた。つり橋の下はエメラルドグリーン。開けたところになると水の色は透明に変わるが、川底の石まで見える。

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エメラルドグリーンの川の色

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 菊池市内を出てから20kmほど。16:00にようやく菊池渓谷に到着した。今日は台風前夜で人がいない。静かな菊池渓谷をひとり歩き始めた。

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 最初に見えたのが黎明の滝。それにしても川の水の色が違う。

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 次が天狗滝。ひんやりして気持ちがいい。今日は菊池に到着したときは33℃あったが、ここは別世界。

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 そして四十三万滝。ちょうど川霧が出て、幽玄な雰囲気だ。

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 菊池渓谷入り口から1kmほど進んだ広河原の橋で一般散策路はおしまい。九州自然歩道はここからさらに上流域に進む。

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 菊池渓谷の上流域も道はよく整備されている。ときどき倒木が道をふさいでいるが、何とか通過できる。菊池渓谷は涼しく、景色もよいが、メマトイや蚊、虻の攻撃がすさまじい。忌避剤をものともせずに果敢にアタックする個体までいる。

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 さらに上流に進み、高度750mほどまできたところで飛翔生物の数がだいぶ減った。17:25になったところで行動を止め、野営の準備を開始した。

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2020年9月5日 九州自然歩道 46日目 熊本県菊池市菊池温泉~菊池渓谷 晴れ後曇り 気温33/24 距離25.8km 行動時間8:01 平均速度3.3km/h 42101歩

往路交通:

西新5:49福岡市営地下鉄-博多6:02/博多バスセンター6:18西鉄高速バスひのくに号-菊水IC7:27/7:32産交バス-山鹿温泉7:57/8:17産交バス-菊池温泉8:55

九州自然歩道 45日目 今なお菊池の中心は菊池武光公 熊本県山鹿市山鹿~菊池市菊池 2020年8月29日

 今回の九州自然歩道は、先週離脱した熊本県山鹿市の山鹿温泉さくら湯前からのトレッキング再開。山鹿温泉のさくら湯は、本当に造作が素晴らしい。2012年に再建したとは思えないほど時代がついた重みを感じる。いい仕事してる。今日はお湯には浸からずに、8:00に菊池温泉に向けて出発することにする。目標を温泉に設定するといい。歩く励みになる。

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本日のスタート地点となる山鹿温泉さくら湯

 山鹿市内には、豊前街道という北九州小倉につながる街道の跡が残っている。いまだに当時の様子を残すと思われる建造物が立ち並んだエリアがある。

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山鹿温泉 足湯

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山鹿温泉 豊前街道

 山鹿の市街地から3kmほど田園地帯を北上し、9:10に日輪寺に到着した。まずは立派な鐘楼が迎えてくれる。ここは大仏や赤穂浪士の遺髪を納めた塚で知られた名刹。このあたりは自分の守備範囲外でまったく知識はないが、赤穂浪士の討ち入りの後、義士の17名が熊本の細川家にお預けになったとのこと。その際、細川家の家臣の堀内伝衛門が義士を親身にお世話したうえ、主君細川も義士の遺髪を日輪寺に納めて顕彰したという。歌舞伎の中の話だけではないのだな。大仏もなかなかに立派なもの。

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しばらく田園地帯を北上

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日輪寺の楼門

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日輪寺 十七義士髪塚

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日輪寺 大仏

 標高120mの日輪寺山の頂上まで登ると、山鹿の市街地が眼下に一望できる。今日は雲一つなく、金峰山や雲仙まで見通すことができる。この山の頂上は竜王山古墳。頂上が古墳そのものだった。菊池川の流域には古墳が多い。

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日輪寺山の山頂に向かう

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日輪寺山の山頂は竜王山古墳

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山鹿市街と向こうには雲仙が見える

 日輪寺山からはゆったりとした下り道。歩くのには快適だが、日差しはひたすら強い。コースの左右には濃い緑色の稲が並び、田によっては稲穂をすでにつけているものもある。歩きやすい道だが、汗の量がすごい。脱水を起こしそうで、自販機を見つけるたびに水分の補給を行う。

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大仏にも頭頂部に太陽が照りつける

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トレイルの整備状況は良好

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日陰のない田園地帯が続く

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ときおり貯水池があらわれる

 田園風景の中を進むと、前方の山の稜線に突起物が見えてくる。これが次の目標となる不動岩(ふどうがん)。山の下の方には鳥居があり、山の上まで参道が続く。スイッチバックを何度か繰り返し、12:00に不動岩に到着した。ここは人気のスポットのようで、見物に観光客が何組か来ている。たしかに、こんなところにこんな巨大な岩が残っているのは神の仕業としか思えない。

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稜線に不動岩が見えてきた

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山麓から続く参道の入り口の鳥居

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山中まで参道が続く

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巨大な岩が迫ってくる

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不動岩を見上げる

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眺望も良好

 不動岩にお参りした後は、脇の登山道から山の頂上を目指す。このあたりは標識がないので注意が要る。12:45に蒲生山の338mのピークに到達したが、残念ながらここは眺望がない。稜線に沿って高度を落としていくが、ここはメマトイと蚊が多い。虫よけスプレーを露出皮膚に何度か塗布するが、流れる汗が多すぎるためか、何か所か蚊に刺されてしまう。メマトイも執拗に顔面前方を飛翔する。ミント飴を用意したが、効き目はほとんどない。常に視界に数匹のメマトイが飛んでいる状態。上り坂では鼻腔に1匹飛び込んできた。くしゃみが出た。

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不動岩の脇にある登山道を登る 標識がないので注意がいる

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登山道は整備されているが、メマトイと蚊の襲撃が猛烈

 不動岩を向こうに見ながら、ミカン畑の中を右に左に曲がりながら高度を下げていく。その先にあったのは緑色の水を湛えた蒲生池。一人の釣り人がブラックバスを狙っていた。

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ミカン畑の中を下りていく

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ミカンが多数の実をつけている

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山間の蒲生池

 そこから先は鹿本の市街地に入り、市街地を縫う様にしてジグザグに舗装路を歩く。民来の交差点から国道325号線に左折する。時間は14:45。交通量が多く、車のエンジン音が耳につく。歩道があるため危険はないからよいが。そろそろお腹が空いてきたため、道路沿いにどこか昼食をとれるところがないか探すが、たまにある食堂は準備中の札を掲げている。

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しばらくはこんな舗装路を歩く

 2kmほど木陰のない国道の歩道を歩き、15:38に道の駅にたどり着いた。民来の交差点からわずか2kmに1時間近くかかったのは、何度も足がつったため。暑さと渇きで足がつる。セブンイレブンの店内で5分間クールダウンし、ベスト電器の店内で5分間クールダウンし、ようやく歩くことができる。舗装路で平坦だが、どこまでも木陰のないバイパス路のような国道で、今日は過酷なルートだ。道の駅ではサンドイッチの昼食をとり、40分ほど足を休める。

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ようやくたどり着いた道の駅かもと

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ここからもさらに真っすぐな国道が続く

 16:15に行動再開し、ふたたび国道を歩きはじめる。横を走る自動車の窓が開き、小学生ぐらいの女の子が頑張れと手を振って応援してくれた。うれしくなって元気が出た。30分もかからずに2km先の道の駅メロンドーム七城に到着した。ここでメロンアイスクリームを食べて小休止。外から雷鳴が聞こえてきた。もう少し天気がもってくれたらいいなと思いながら、早々にメロンドームを後にした。

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真っすぐな道の先には道の駅メロンドーム

 そこからさらに325号線をほぼまっすぐ5kmほど菊池に向かった進み、右に曲がる325号線と別れてからは菊池の市街地に入る。菊池の市街地も落ち着いたいい町だ。

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しばらく国道325号線が続く

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国道325号線は右に折れ、まっすぐ菊池市街に向かう

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菊池も美しい町

 18:00に菊池の中心地の菊池公園に到着した。公園の真ん中に菊池武光公の像が設置されている。南北朝時代の当地の当主がこんなに人気があるのが不思議な気分。どうも菊池川流域の栄枯衰勢を理解するためには南北朝時代の勉強も必要だ。そんなことを菊池温泉のお湯に浸かりながら考えて、肥後大津経由でバスを乗り継いで福岡への帰途についた。

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菊池公園の中央には菊池武光

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菊池神社の参道

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本日の締めは菊池城乃井温泉

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2020年8月29日 九州自然歩道 45日目 熊本県山鹿市山鹿温泉~菊池市菊池温泉 晴れ後曇り 気温36/24 距離29.9km 行動時間10:00 平均速度3.3km/h 49036歩

往路交通:

西新5:49福岡市営地下鉄-博多6:02/博多BT6:18西鉄高速バスひのくに号-菊水IC7:27/7:32九州産交バス-山鹿温泉7:57

復路交通:

菊池温泉市民広場前19:08九州産交バス-肥後大津19:48/19:54JR豊肥線-武蔵塚20:06/武蔵丘20:19西鉄高速バスひのくに号-博多BT21:57

九州自然歩道 44日目 和水で前方後円墳の上を歩いてしまった 熊本県和水町菊水~山鹿市山鹿 2020年8月22日

 今日は熊本県和水町の菊水インターチェンジからのトレッキング再開。本当に申し訳ないが、福岡県に接した熊本県最北部のこの町、和水町の読み方が分からなかった。

 私が物を知らないということもあるが、この町は菊水町平成の大合併三加和町と合併して和水町と、2006年に一般公募でつけられた町名。三加「和」+菊「水」で和水。読み方は「なごみ」と少しキラキラ系のひねりを効かせている。人名漢字辞典で引いてみると、和水で、なごみ、かずみ、わみず、と読ませる。

 カヌーイストの野田知佑の出身地と知って、俄然親近感が湧いた。菊池川を犬のガクと一緒にカヌーに乗って下っていく情景を描いた本があった気がする。和水町の真ん中には、菊池川がゆったりと流れている。20年近く前に、アウトドアが好きな弟と、愛知の実家近くの豊川水系をファルトボートという組み立て式のカヌーで下ったことがあったが、楽しかったなー。

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菊水の道路から見える菊池川

 福岡天神バスセンターから6:00の高速バスに乗り、7:27に菊水インターチェンジに到着した。定刻どおり。すぐそばのセブンイレブンでサンドイッチとコーヒーの朝食を済ませ、上下肢の露出皮膚面と頸部に虫除けスプレーを施して7:58に行動を開始。8:08に九州自然歩道の前回の離脱地点に復帰した。

 2kmほど交通量の多い県道を進み、8:28に江田交差点に到着した。ここで九州自然歩道から少し離れ、目標とした江田穴観音古墳のある和水町中央公民館に向かう。公民館への短い坂を登ると、そこは前方後円墳だった。

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公民館の中庭が前方後円墳

 今回最初に目にした古墳は若宮古墳。なんと、中央公民館の中庭が古墳だった。え?いきなり古墳?というぐらいに唐突に古墳が目の前に現れる。しかも、もとは全長50mほどの古墳だったものが、現在は削り取られて30mぐらいになってしまって、おそらくかつては古墳だった裾の部分にはアスファルトが敷かれて公用車が停められている。まぢ?古墳にこんな雑な扱いをしたらバチが当たるゾ。しかも、この若宮古墳はガイドブックの類いには掲載なし。こんな立派な前方後円墳がだよ。

 本命はこちらではなく、彩色古墳の江田穴観音古墳だが、案内板などが見当たらない。出だしから少しいやな予感がする。公民館の裏手という情報だけを頼りに、蜘蛛の巣を払いながら裏手の草ボーボーの斜面を下りていくと、日本遺産構成文化財江田穴観音古墳の御影石の立派な表示が草の中に埋もれている。え?彩色の横穴古墳がこんな待遇?

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 周囲をグルリと回ると、コンクリートで横穴式の石室の開口部を保護してあるところが見つかった。開口部には金属格子が設置してあり、中に入ることはできない。前室は岩を削り出して作られている。観音像が設置してある。これが江田穴観音かな。狭い入口から後室に続いているようだが暗くてよく見えない。彩色されている前室の側壁は、赤っぽい模様がようやく見えるだけ。こんな雨ざらしにしておいて大丈夫かなと心配になる。今日はこんな古墳がいくつも見られる予定なので、早々に切り上げて先に進む。

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江田穴観音古墳の開口部

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古墳内部

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さらに奥まで続く

 九州自然歩道に一端復帰し、今度は南に1kmほどコースを逸脱して江田船山古墳公園に向かう。ここは5世紀後半の国内最古の文字資料となる雄略天皇の名が刻まれた75文字の銘文銀象嵌銘大刀が出土したことでも有名。歴史の教科書には必ず登場するとのことであるが、私は高校の時に日本史を選択していないので習っていないはず。記憶にございません。

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この丘全体が江田船山古墳公園

 江田船山古墳は全長62m、後円直径41mのりっぱな前方後円墳。築造は5世紀後半と推定されている。埋葬施設は後円部分の中央部分に石棺が残されており、羨道(えんどう)という玄室(げんしつ、死者を埋葬する墓室)と外部とをつなぐ部分まで入ることができる。江田船山古墳の出土品92点は国宝に指定され、東京国立博物館に展示保管されている。すぐ隣には京塚古墳という円墳が控えている。このあと、公園内の肥後民族村でいくつかの古民家見学もしたが、今回は古墳のインパクトが強すぎるので省略。

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江田船山古墳 前方部から

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江田船山古墳 後円部から

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江田船山古墳 埋葬施設開口部

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内部に入ることができる

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隣の京塚古墳

 次に訪れたのが虚空蔵塚(こくんぞうづか)古墳。江田船山古墳から100mほどしか離れていない。墳長52mの前方後円墳。6世紀前半の築造と見られており、内部は未調査。

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虚空蔵塚古墳

 その次はさらに150mほど進んだ先にある塚坊主古墳。墳長43m、後円直径30mの前方後円墳。内部の発掘調査が進んでおり、毎年3月と10月頃に一般公開している。

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塚坊主古墳

 公園の入口には石人像が立っているが、ここもコロナ対策支援中。いい人そうな顔をしている。これで江田船山古墳公園はだいたい見学終了。2時間ぐらいかけてじっくりと見学した。見どころ満載だった。もっと予習してから来たらよかったかな。

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江田船山古墳公園のシンボルの石人

 ここからは県道をまたいで隣の集落の中の小高い丘を登り、トンカラリンに向かう。トンカラリンとは、一見すると水路のようにも見える全長464mのトンネル型の遺構。著書の古代史擬で邪馬台国九州説を唱えた松本清張が、トンカラリンを卑弥呼の祭祀のためのものと示唆したこともあり、謎の遺構とされている。実際に上から下まで歩いてみたが、最上部には菅原神社があり、中間地点には集落の湧水場所、下方部分には横穴式古墳がいくつか。トンカラリンの中には実際に潜ってみることもできたようだが、熊本地震の後に安全性が確保できていないとのことで、内部に入ることはできず残念。

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トンカラリン最上部近くにある菅原神社

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地下空洞

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まだまだ続く地下通路

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この辺が中間地点

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集落に利用された湧水地点

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石組みの通路が続き

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座席のような構造も

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終点近くには横穴式の墳墓

 昼食は江田船山古墳公園内のキャンプ場管理施設のカフェで石窯で焼いたピザ。もちもちのクラストが美味しかった。公園の北には道の駅菊水ロマン館があるのだが、よく見てみるとこれも前方後円墳の形態。この地区は古墳一色だった。てか、古墳だらけで、それぞれの古墳に対する扱いが雑すぎ。それぞれの古墳、文化遺産級だろ?古墳削って駐車場にしたり、畑になってるところもあるんだから、まぢビックリ。

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石窯で焼いたピザ おすすめ

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カヌー乗り場もある

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前方後円墳型の道の駅菊水ロマン館

 ランチを済ませて12:27から行動再開。ここからは菊水と山鹿をつなぐ舗装路を15kmほど進むだけ。稲穂をつけ始めた水田の横の舗装路を進む。午前中は直射日光が頭頂部をジリジリと焦がしていたが、だんだん雲が多くなってきた。前方に積乱雲が発生し、雷鳴が聞こえてきた。少しぐらい雨が降った方が気温が下がって歩きやすいかもしれない、と思う間もなく大粒の雨が雷鳴とともに降ってきた。少し濡れながら歩き、集落に入ったところで神社が見えたので、お参りついでに雨宿りをさせてもらった。

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田園風景の中を山鹿に向かう

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だんだん日照が弱くなり

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積乱雲が発生し雷鳴が聞こえる

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大粒の雨が落下し始める

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神社で雨宿り

 30分ほどで小降りになったため14:30から行動再開。ここから先は県道16号玉名山鹿線で、交通量が多く、うるさく、危険。ときおり自動車から水しぶきをかけられる。

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 15:15に山鹿の市街地についた。最初に山鹿バスセンターで今日の帰りのバス便があることを確認。バスセンター自体、隈研吾の設計かと思わせる木製の情緒のある建物だった。

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山鹿大堰橋を渡ると市街地に入る

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木造のバスセンターのセンスが良い

 ここから市街地を通って、本日の最終目標地として定めた銭湯のさくら湯に向かったのだが、今回もまたもや謝らなければならない、ごめん山鹿。お盆に提灯を頭に乗せて踊るところだろ?ぐらいの意識しかなかった山鹿だが、ここって日本遺産に指定してもよくね?ってぐらい立派な建造物が残された町だった。

 最初に立ち寄ったのが金剛乗寺。825年に空海によって開かれた寺院で、かつては西の高野山と称されたとか。門前には石門も遺されている。

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金剛乗寺

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金剛乗寺石門

 次が旧安田銀行山鹿支店。現在は山鹿灯籠民芸館として使われている。竣工は1925年で設計者は不明。

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安田銀行山鹿支店

 そして八千代座。なんでこんなところに歌舞伎座が?と思うような絢爛豪華でクラッシックな木造建築。ここは1910年に山鹿の旦那衆が出資して建てた劇場。1973年に経営不振で閉鎖されていたが、1990年に坂東玉三郎が舞台公演をし、その後平成の大修理を行い再興している。いまなお現役の芝居小屋で、9月には海老蔵さんが来演予定。

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八千代座

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内部の造りも豪華

 そこから小路を出ると目の前にあるのがさくら湯。え?これが銭湯?1640年に建造された肥後の細川の殿様の宿泊施設であるお茶屋を起源とし、明治期には道後温泉の棟梁による改修を得て、1973年まで市民のための元湯として使われていたが惜しまれつつ取り壊された。しばらくは、さくら湯はビル内で営業を続けていたが、2012年に江戸期の建築様式を再現した木造の温泉として再開。今回は山鹿の旦那衆が出資したかどうかは分からないが、やるぜ、山鹿。感動してしまった。さくら湯は、死ぬまでに入るべき温泉に登録させてもらった。本日の汗はここですっかり落としてから、バスに乗って福岡への帰途に着いた。

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さくら湯

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2020年8月22日 九州自然歩道 44日目 熊本県和水町菊水~山鹿市山鹿温泉 晴れのち雨 気温33/26 距離24.4km 行動時間9:47 平均速度4.7km/h 40024歩

往路交通:

西新5:36福岡市営地下鉄-天神5:44/天神バスセンター6:00西鉄高速バスひのくに号-菊水IC7:27

復路交通:

山鹿バスセンター18:20九州産交バス-玉名19:21/20:03JR鹿児島本線-大牟田20:22/20:53西鉄大牟田線-薬院21:53/22:04福岡市営地下鉄-別府22:10