朝、テントから出ると、眼下には湖が拡がっていた。昨夜わずかに雨が降ったことを除けば上々の滑り出し。湿ったテントを片付けて、7:30に行動開始した。
天拝湖のほとりを歩き、小さな山口集落を抜けて基山に向かう山道に入る。集落は全体が金網で囲まれており、柵を開けて人が出入りする。九州自然歩道の通る集落は、このように金網で囲まれたところが多い。過疎化が進むと、野生動物とヒトとのパワーバランスが変わってくることを示している。
基山までは快適な山道。6kmほど進むと突然前が開け、樹木が伐採されて土が剥き出しになった基山の頂上が見える。最後の100mの草地を上って基山の頂上(標高404m)に8:54に到着。佐賀平野が眼下に広がる。
基山の山頂には、かつて大宰府の西の守りであった基肄城が建てられ、いまでも石垣が残る。基山の展望台では、コンロでコーヒーを入れ、佐賀平野の展望を楽しんだ。頂上では大きなヤドリギが、風に揺れていた。
基山から東を見ると、次の目標の九千部山のアンテナがはるか彼方に見える。ここから先は、福岡県と佐賀県を境する長い縦走路だ。基山からは杉の植林された整備状態の良い舗装路。
1時間ほど進んだところで、ヤギを連れた親子に出会う。聞けば、ヤギは草地の整備のために飼育しているとのこと。ここを牧場として開拓して、乳牛を飼育する予定だという。飼育するのは、濃厚な牛乳が生産されるものの、搾乳量が少ないことで知られるジャージー種。しかも配合飼料なしで飼育するとの説明。真摯に酪農に取り組む姿勢に心が打たれる。搾乳開始は2年後の予定。基山牧場のジャージー牛が楽しみだ。
古屋敷の集落からは、神社横を抜けて山道に入る。ここは民家の敷地内を通過するためか、コースに標識がなく要注意のポイント。
少し進み、南向き斜面の風の当たらないところで昼食とする。昼食は、コンロで温めたご飯とレトルトカレー、小松菜の味噌汁とした。
尾根伝いに権現山などの小さなピークをいくつか超え、15:00に九千部山(くせんぶやま。標高848m)の頂上に到着。ここは九州新幹線筑紫トンネルのほぼ真上に位置する。山頂付近には多数の中継アンテナが立ち並ぶ。昼から晴れてきたので、福岡市内まで見渡すことができる。
ここからは広葉樹に囲まれた快適な山道が続き、石谷山(754m)を経由して、七曲峠に17:30に到着。
夕方から北西の風が強くなってきたため、風の当たりにくいこの峠に野営することとした。テントを設営し、コンロでお湯を沸かして、アルファ米の夕ご飯とした。周囲からはイノシシの威嚇するかのような声が聞こえる。
2020年1月12日 九州自然歩道 11日目 福岡県筑紫野市天拝湖~佐賀県三養基郡基山町基山~佐賀県鳥栖市九千部山~佐賀県三養基郡みやき町七曲峠 曇りのち晴れ 気温6/2 距離21.2km 行動時間7:51 40476歩