隠居岳キャンプ場は快適だった。昨夜は雨の降らないところを見つけてテントを張り、ご飯を炊いて夕食。雨の音が聞こえなくなったところで外に出てみたら、雲の間からシリウスとベテルギウスが美しく輝いていた。
しかしながら6:30に起きてみると小雨が降っている。ゆっくりと支度をし、昨日の残りのおにぎりの朝食を済ませる。このキャンプ場には水道があったため、魔法瓶一杯に熱湯を沸かして入れておいた。これでどこでもコーヒーが飲める。
雨に当たらないところでテントを乾かし、パッキングを終え、展望台に行って佐世保の全景を眺めてみる。早岐と針尾島との間の水道がよく見える。西には佐世保の町も見える。このまま小雨のままでいてくれたらいいなと思いながら8:14にキャンプ場を出発する。
キャンプ場からは舗装された林道が続く。交通量は少ない。ときおり軽トラックが通り過ぎるのみ。杉の植林を抜けると早岐の町が見えてくる。正面には針尾島の山々が見える。この道は見晴らしがよく、交通量が少なくて快適だ。つづら折りの林道を先に進むと人家がチラホラと見えてくる。
快適な道をそのまま進んでいると、目印と思っていた貯水池が正面に現れた。本来はこの池の500mほど西を進むはず。地図を見たところ、九州自然歩道は500mぐらい手前で右に折れている。残念ながらここには標識が見当たらず、誤ってまっすぐ進んでしまったようだ。ここから東に進み、九州自然歩道に復帰を試みた。
ほどなく、次の目印の西九州自動車道との交差部にたどり着いた。ここから九州自然歩道に復帰。この道も、簡易舗装がされた快適な道だ。西九州自動車道の下を潜り抜けてから1kmほど進んだところで踏切を通過する。車1台がようやく通過できるほどの幅の狭い踏切で、事故が起きないものかと気になったので写真撮影。そこに電車が通過したので撮影したら、なんと伊万里行きのMRの列車だった。松浦鉄道は佐世保までのはずなのに、早岐まで直通運転しているようだ。さすがに涙ぐましいような営業努力をしているなと感心。
踏切から500mほど進んだところで10:10に観潮橋を通過。橋の下には川のような流れがあり、一見すると川にかけられた橋のように見えるが、ここは早岐と針尾島の間の海の水道、早岐瀬戸に架けられた橋。佐世保湾と大村湾を結ぶ水路のため、干満の差で川のように水が流れている。
ここからは早岐瀬戸に沿った交通量の多い道路を進む。景色は良いのだが、狭い道路で、交通量が多いので楽しい道のりではない。しばらく進み、車道が山手に進むところで、九州自然歩道は早岐瀬戸に沿って農道を進み始める。
農道の両側は水田と思われるのだが、田植えの前のこの時期にすでに水が満ちている。こんな状態で土が作れるのか少し心配になる。さらに進むと、水田のようなところにレンコンがいくつか転がっている。ここはレンコン栽培に利用されているんだと納得。
ここからは再び車道に合流して、歩きはじめる。しばらくバス通りを歩いていると、江上町の交差点近くでセブンイレブンを見つける。周囲には人家はほとんどないが、交通量が多いためだろう。ちょうど12:00となったので、ここでおでんと肉まんを購入して昼ご飯とする。セブンイレブンはWiFi環境があるから助かる。ここでたまったメール類を一気にダウンロードしておいた。
江上町交差点から2kmほど進んだところで、九州自然歩道の地図に従い、左に折れて車道を離れて林道に入る。標識はなく、荒れ果てた道に先行きが心配になる。九州自然歩道は、名の通った山の登山道は整備状況が優れている。無名の山は荒れ果てていることもある。整備状況が非常にばらつくのが、登山道と登山道との間のアプローチ路。標識がまったくなかったり、人家の軒先を通ったり、工事で道が消失していたり。今回も、そんなような嫌な予感のする雰囲気。このルートには人の通った痕跡が少なく、道端には大量のゴミが廃棄してある。そんな道を下って、早岐瀬戸の堤防まで出た。自然歩道はほとんど消失した状態。堤防の脇をすり抜けるようにして進むが、時折、樹木が生い茂り通過が困難になる。そんなところではずいぶん遠回りをして藪の中を進むことになる。
堤防に沿って、なんとか地図上では右に折れて山を登る地点らしきところまで到達したが、山の斜面を見ると、イノシシの泥遊びの痕跡と、数名の人間が斜面を泥まみれになりながらかろうじて登ったような痕跡がわずかに確認できるのみ。意を決して、道なき斜面を登り始める。20分ほどかけて、なんとか崖の上までたどり着くと、そこはミカン畑。ミカン畑には業務用の簡易舗装されたサービス路が見える。しかし、ミカン畑の周囲には、イノシシ除けの柵とイノシシ除けの電線が張り巡らせてあるので、ミカン畑には容易に入ることはできない。あたりを見回し、柵の一番低いところを乗り越えようと決心し、バックパックを外して先に柵の向こうに放り入れた。次いで、電線の上に上着を架けて感電しないように注意し、柵を何とか乗り越えた。200Vの電線注意と書いてあり、ビリっと来たら痛いだろうなと冷や汗が出た。
ミカン畑のサービス路に入ってからは快適だった。ところどころにイノシシ除けの柵があるが、人が通ることができるように、カギを開けて通過できる。ミカン畑の向こうには早岐瀬戸が流れている。南向きの斜面はすべてミカンが栽培されている。それも、興津、佐世保、上野、原口など、これまで目にしたことがない新品種のようだ。ちょうど雨が止んで、うっすらと日が差してきた。ミカン畑の向こうには、昨日登ってきた隠居岳が見える。
ミカン畑を過ぎると、再び車道に合流する。交通量は多いが、歩道があるため安心だ。しかし、これまで山の中を歩いてきたため、車によって発生する人工音が煩く感じる。8kmほど車道部分を歩いて西海橋に15:18に到着。1日3便しかないバスが15:14に出たばかりだった。
次の18:14のバスを待つ間、ホテルのロビーでゆっくりさせてもらう。次のバスの時間まで3時間。地方の公共交通機関の惨状を目の当たりにした。
2020年3月1日 九州自然歩道 20日目 長崎県佐世保市隠居岳~西海市西海橋 雨 気温12/0 距離 22.2km 行動時間7:09 33462歩
復路交通:西肥バス 西海橋西口 18:14-早岐駅前 18:40/早岐 19:00-博多20:38/福岡市営地下鉄 20:53-西新 21:07