今日は早い時間に雲仙の温泉に到着して、ゆっくりとお湯を楽しみたかったので、早起きをして5:37に行動を開始した。天気は悪くない。少し寒い。今朝の気温は8℃しかなかった。
傾斜のきつい山道を妙見岳に向かって進む。妙見岳も雲仙岳の一つ。九州の山の雲仙という名前は有名だが、じつは雲仙岳という名の山はなく、主峰の普賢岳に、妙見岳、国見岳、そして最も新しくできた平成新山などを加えた、周辺の山の集合を雲仙岳と呼ぶ。今回は吹越峠の登山口からは最も近い妙見岳を最初の目標に進む。
早起きの効果があり、5:59には標高1300m近い妙見岳と国見岳の分岐に到着した。分岐部からはすでに平成新山の煙が見える。まずは分岐から標高差のほとんどない南の妙見岳(1333m)に向かい、6:14に妙見神社にお参りして分岐部に引き返した。
次に分岐部から北に向かい国見岳を目指す。国見岳はなだらかな尾根が連なった妙見岳に比べると、ずいぶんと鋭角的な山。頂上付近には鎖場がつけてあるのが下からもわかる。
国見岳に登り始めてから10分ほどで頂上に着いた。ここは眺めが良い。1347mの頂上からは360度の眺望があり、有明海、橘湾、普賢岳がたっぷりと楽しめる。
国見岳から分岐部に引き返し、今度は普賢岳、妙見岳、国見岳でできた深い谷間をぐるりと回って平成新山を間近に眺めるコースに向かう。7:28に鬼人谷口(きじんだにぐち)という何とも恐ろしい名称のポイントに着き、ここから北東に、平成新山の北の斜面に向かって歩きはじめる。
途中に風穴(かぜあな)という洞窟が2カ所あり、洞窟の奥から吹き出てくる冷風で汗をかいた身体を冷やした。風穴は、かつては蚕の冷温養殖に使用されていた洞窟だそうだ。
8:17には周回コースの北端の鳩穴分かれに到着した。ここは有明海を正面に望む景色の良いところ。ベンチが設えてあり、ここでシリアルの朝食とした。この先には、かつて鳩穴という洞窟があったそうだが、1991年の普賢岳の火砕流で埋没してしまった。
8:41に行動を再開。ここからは標高差150mほどの直登ルートを進み、立石の峰の1325mのピークを目指す。ここからは傾斜がきついのとコースの幅が狭いため、右回りの一方通行に指定されている。9:00に屹立した岩が目印の立石の峰に到着した。
ここからほぼ平坦な道を10分ほど歩いたところが平成新山のピークに最も近いところ。展望所のすぐ足元から蒸気が噴き出ており、爆発したらどうしようかと少し心配になるほど。足元には角の尖った石が散在しており、平成新山から落石してきたのではないかと思われる。
平成新山を間近に眺めてからは、少しずつ高度を落としながら、谷底にある霧氷沢に向かう。ここは冬季の樹氷がきれいなところ。いまは白いヤマボウシの苞が谷を埋める樹木の緑に映えている。
今回の最後のピークとなる普賢岳には9:45に到着した。標高は1359m。かつては長崎県内では最も高い山であったが、現在は1483mの平成新山に抜かれている。ここも眺望は素晴らしい。
南には島原半島の先端の口之津が続き、その先には次の目標となる天草諸島が海を隔ててグルリと目に入る。天草はこの目で見るとかなり広い。ここを踏破するのには何日かかるだろうか。
眺望を楽しみながらコーヒーを淹れた。山頂で飲むコーヒーはこの上なく美味しい。
10:21に行動を再開し、普賢岳から紅葉谷に降りて、そこから妙見岳と普賢岳との間の谷にあたる部分をアップダウンしながら進み、あざみ谷を経て11:23に仁田峠ロープウェイ乗り場に到着した。ここでは久しぶりの炭酸飲料水コーラでのどを潤した。
仁田峠にはめずらしくゴミ箱が設置してあった。最近は街中や公共施設からゴミ箱が消えつつある。観光地でもゴミの持ち帰りを要請するところが多くなってきた。ゴミ処分のコストや環境意識の向上のためとは思うが、長期に歩く場合にはゴミ箱がない現状は大変困る。今回は、仁田峠の管理者に感謝しつつ、2日分のたまったゴミを処分させてもらった。ザックが軽くなる。本当にありがたかった。
仁田峠からは、コンクリートの石段でできた道をコツコツ下り、12:25に池の原に到着した。
ここはミヤマキリシマの名所なのだが、すでに花期は過ぎており、いくつかの株が咲いているのみであった。本来このあたりには見渡す限りにミヤマキリシマが生えており、5月の最盛期には赤一色の光景だったのではないかと思われる。
ここから再度山道に入り、12:45に温泉街の北端にあたるおしどりの池の畔近くに到着した。
ここから市街地に向かって歩いていると、コンクリート造りの四角い箱のような建物から、タオルを持った女性が出てくるのが見えた。正面には別所浴場と小さく書いてある。地域の共同浴場のようだ。入り口には100円と書かれた、穴の開いた金属製の棒が建ててある。料金箱だ。誰でも入ることができるのだろうか?
男湯を覗いてみると誰もいない。強い硫黄臭がする。かなりワイルドな公衆浴場だが、思い切って入ってみることとした。
中には更衣場所と、数段の階段を下りたところに2m×2mほどのコンクリート製の浴槽が一つ。服を脱いで階段を下りた。恐る恐る湯桶にお湯を取り、かけ湯をしてみた。ビックリするほど熱い。こんなに熱いのは手前の方だけかと思い、奥に回って湯温を確かめてみたら、さらに熱い。奥にかけ流しの出湯口があるようだった。
罰ゲームか拷問のように熱い。東京の下町界隈の銭湯よりも熱い(例として、熱いので知られる上野御徒町の燕湯は46℃)。最初は足首までしか浸かることができなかった。冷水の蛇口があるが、入れて冷ましても良いものか分からない。後で入ってきた地元の人から、「べらんめい、雲仙の湯にはこうやって入(へえ)るんだよ!」とか言われたら、かなわない。罰ゲーム級の熱湯に真っ向勝負で挑むこととした。
蛇口の冷水で真っ赤になった足を冷やして、次は膝まで浸かる。動くと熱い。さっと飛び出て、膝から下にホースの冷水をかけて処置を施してから、次は腰まで浸かる。最後は肩まで浸かって60数えて外に出た。これ以上浸かったら生命の危険を感じたため、これで雲仙の温泉は終わりとした。最後まで誰も入浴者は訪れず、正式な入浴の仕方は不明のままだった。筋肉痛をほぐすことはできなかったが、ローカル感のたっぷりな温泉に浸かることができて満足だった。
着替えを済ませてから、別所浴場の前のベンチで身体を冷やした。風が心地よかった。
それから雲仙温泉街を散策し、地獄めぐりの後、焼きたての温泉煎餅を賞味した。
14:45の雲仙始発の諫早行きのローカルバスの乗客は2名。のんびりとした気分で、福岡への帰途についた。
2020年6月21日 九州自然歩道 29日目 長崎県雲仙市吹越~雲仙市小浜町雲仙 曇り 気温28/8℃ 距離9.4km 行動時間8:36 27381歩