今回の九州自然歩道は、熊本県阿蘇市にある豊肥線の阿蘇駅から再開。ここから阿蘇五岳の間を通る日の尾峠を抜けて阿蘇カルデラを北から南に縦断する。
日曜日に仕事が入ってしまい、歩くことができるのは実質的に9月12日の土曜のみで、また豊肥線は運行数が少なく九州自然歩道の再開地点まで乗り継ぎが4回ほど必要で、福岡から5時間近くかかってしまうので、今回は金曜の夜から豊肥線の駅のある熊本県菊池郡大津町に前泊。これからこんな旅程が多くなりそう。それだけ旅情も味わえるが、だんだん遊び以上のものになってきた。
豊肥線の阿蘇駅には6:36に到着。乗客は6名で、阿蘇駅で下車したのは自分一人だけ。あいにく結構な雨が降っている。立派な駅舎の中で上下の雨具と、ゲイターを装着して出発。駅の正面には阿蘇山が聳えている。
駅からは国道57号線を東に進み、1kmほどで国道を離れ、蔵原集落の中に進み九州自然歩道に復帰した。蔵原のはずれにはソバ畑が白い花の満開を迎えている。
4kmほど進んだ豊肥線の宮地駅の近くのジョイフルで朝食とした。本来は宮地駅の手前で南に折れて仙酔峡を経由するように九州自然歩道の本線は進むのだが、6年前の豪雨の後に本線は通行不能になっている。今回は宮地駅を過ぎたところから分岐する九州自然歩道の支線を使ってカルデラを縦断することとした。
雨は降りしきっており、阿蘇山はほとんど雲に隠されている。幸い、支線の道路状況は良好で、雨の中を快調に高度を上げていく。
宮地から支線に入って1時間ほどの9:16に、本線と合流する桜ケ水に到着した。地図を見ると、本線は仙酔峡から桜ケ水に向かう道の2カ所で崩落しているよう。草原の中に気持ちのよさそうなコースが見えているので、いつか歩けるようになったら歩いてみたいなと思いつつ先に進む。
ここからはススキの原の中の舗装路を進んでいく。いかにも阿蘇という風景。時折横切る谷川には土砂が堆積し、土石流の痕跡が残されているようだ。
阿蘇五岳の中を横切る日の尾峠の標高は990m。現在は880mほどまで上っているが、なだらかな阿蘇の山並みのためか、それほどの高度を感じない。東の方やカルデラの北の方は時折日が差しているようで、振り返ると眩しい緑が目に入る。
日の尾峠まで1kmほどの辺りに阿蘇高岳への登山口があったが、残念ながら現在は火山活動のためにこの登山口は立ち入り禁止。また、根子岳へのルートも崩落している箇所が多数あるので注意するようにとの案内がある。
ほとんど休憩せずに進んだこともあり、予定よりも1時間ほど早い10:30に日の尾峠に到着。ここから先も、舗装状態は良好で、道の両側には放牧された牛が遠くにチラホラ見える。道路には牛の通行を阻止するためと思われる金属製のメッシュ状の通路やゲートがいくつか現れた。
11:10には峠から4kmほどの鍋の平キャンプ場に到着した。ここは芝生の心地よさそうなキャンプ場。今回はテント泊するつもりはないが、水場やテントサイトの状況などを確認しておく。鍋の平にはカフェがあるようだったので、営業していたら休憩しようと思っていたが、残念ながら閉店してしまっていた。
かくなるうえは、昼食にはゆっくり時間をかけて名物の高森田楽でも食べようと歩みを進め、12:00に高森田楽村に到着した。予約なしでも食べられるとのことで、雨具を脱いで畳敷きの囲炉裏の傍に陣取った。高森田楽は、この地区でしか採れない名物のつるの子芋や、豆腐、こんにゃく、ヤマメなどを炭火で炙って、みそダレをつけて食べるもの。たまたま手が空いていた店主が丁寧に時間をかけて焼いて出してくれた。高菜ご飯とだご汁もついていたが、高菜ご飯が最高に美味しかった。
昼ご飯の田楽にはたっぷりと1時間以上かけ、晴れ間が見えるようになった13:20に田楽村を出発した。目指すは露天風呂の真正面に阿蘇の山々が見えるという月廻り温泉。歩き始めてしばらくするとまたもや大粒の雨が降り出してきたため、せっかく乾かした雨具を再度装着して歩き始めた。結局、3kmほどに1時間ほどかけて歩き、14:20に月廻り温泉に到着した。
月廻り温泉は評判通りの素晴らしい景色の温泉。露天風呂からも、室内湯からも、根子岳や高岳などの阿蘇五山が真正面に見える。お湯もトロトロで心地よい。1時間ほどゆっくり入浴し、もう一回雨具をたたみ直してバックパックに詰めて、帰りのバスが出る高森に向かって歩き始めた。
この頃になると、根子岳と高岳の頭を隠していた雲がかなり減り、きれいな山容が見えてきた。高森の中心街に入る直前には、道路の正面に阿蘇高岳が見えてきた。大学1年の時に、熊本出身の同級生が、「阿蘇はまーーーごつふとかっぞー」と自分の家の裏庭のように自慢していたが、熊本県人が自慢する気持ちが少し理解できた気がする。
16:10に高森中央のバス停に到着し、300mほど先の高森駅まで足を延ばした。ここを走っていた南阿蘇鉄道高森線は、2016年の熊本地震以来、熊本方面につながる立野との連絡を欠き、全10駅中のうち終点の高森から4駅先の中松間までで運行している。かつては国鉄の高森線で、高千穂を経由して宮崎県の延岡まで連絡する九州横断鉄道となる予定だった夢のある路線だっただけに、現在の状況には忸怩たる思いがありそうだ。
2020年9月12日 九州自然歩道 49日目 熊本県阿蘇市阿蘇駅~阿蘇郡高森町高森中央 雨のち曇り 気温29/22 距離23.0km 行動時間6:30 平均速度3.3km/h 39351歩
往路交通:
別府18:08福岡市営地下鉄-天神南18:18/天神バスセンター18:30西鉄高速バスひのくに号-20:10武蔵ヶ丘/武蔵塚20:36JR豊肥線-20:50肥後大津 (肥後大津前泊)
復路交通:
高森中央18:18産交バス快速たかもり号-益城インターチェンジ口19:25/益城IC西鉄高速バスひのくに号19:40-博多BT21:13