九州自然歩道を週末に歩き倒す

目標は九州自然歩道の総延長2932km踏破。

九州自然歩道 76日目 大隅半島の北風は冷たいが缶コーヒーは温かかった 鹿児島県肝属郡南大隅町佐多風力発電所~南大隅町根占ネッピー館 2021年1月17日 

 風車を甘く見たのが失敗だった。夜半には10m以上の風が吹いたようで、テントが何度も風にあおられた。風車の音も大きくなり、爆音といってよいほどの音を一晩中放っていた。今日の日程は余裕があるので、7:15の日の出を待って行動を開始すればよかったのだが、羽根が分解されんばかりの音を立てて頭上で回転する風車に耐えきれずに、5:30には起床して、5:55の真っ暗な中で行動を開始した。ヘッドライトの明かりを頼りに歩き出す。山の上には風車の赤いランプが点滅している。

f:id:nayutakun:20210119193500j:plain

真っ暗闇でこんな写真しかない 赤いランプは風車

 15分ほどで菖栄の集落に出て、暗闇の中を地図に従って右折と左折を繰り返し、7:00ごろに竹野(たけんの)の集落に着いたあたりでようやく辺りが明るくなってきた。竹野集落からは野尻野(のじんの)の風力発電所が近いが、地域住民は夜寝るときに騒音が気にならないか心配になってきた。

f:id:nayutakun:20210119193553j:plain

f:id:nayutakun:20210119193607j:plain

標識がしっかり立てられていて助かった

f:id:nayutakun:20210119193639j:plain

野尻野にも多くの風車が回る

 竹野から少し高度を上げて、7:21に野尻野の小学校の跡地に到着した。小学校の先からは野尻野の草原が見えた。家畜の飼料にするためか、サイロがいくつか設置してあった。

f:id:nayutakun:20210119193722j:plain

集落の近くにも風車

f:id:nayutakun:20210119193744j:plain

野尻野の小学校跡

f:id:nayutakun:20210119193813j:plain

野尻野の草原とサイロ

 野尻野の最後の風車を通り過ぎて、立派に舗装された林道が始まった。林道をしばらく進み、7:40に野首岳南登山口に到着した。

f:id:nayutakun:20210119193901j:plain

野尻野の最後の風車を過ぎると舗装された林道が始まる

f:id:nayutakun:20210119193938j:plain

風車の先に野首嶽の南登山口

 登山道は草がしっかりと刈ってあり、整備はよく行き届いていた。落ち葉の積もったところには、イノシシが掘った後が残っており、油断するといつでもイノシシが現れそうな雰囲気が漂っていた。高度が上がってくると、木道が設置されており、歩きやすい山道だった。

f:id:nayutakun:20210119194018j:plain

南登山道の整備状況はまずまず

f:id:nayutakun:20210119194104j:plain

イノシシの踏み跡は多い

f:id:nayutakun:20210119194127j:plain

ところどころ木道がある

 8:12に稜線に出て、勾配は緩くなってきた。尾根の西側には海が拡がっているはずだが、樹木が多く、眺望はほとんどなかった。それでも稜線近くは風が強く、体温が急激に下がっていった。

f:id:nayutakun:20210119194207j:plain

稜線は風が強く、寒かった

 8:38に748mの小ピークを越え、9:03に野首岳の897mの頂上に到達した。頂上は直径15mほどの円形の芝生の平地であったが、南を除いて、他の方向はすべて樹木が邪魔をして、眺望はあまり良くない。また、山頂につきものの山名標識も、かつてそうであったかもしれない木切れが落ちているだけだった。やむなく三角点を撮影しておいた。山頂では、水とミカンの朝食とした。

f:id:nayutakun:20210119194240j:plain

野首岳の山頂

f:id:nayutakun:20210119194319j:plain

三角点を撮影した

f:id:nayutakun:20210119194345j:plain

手前が野尻野の風車群で奥が佐多の風車群

 野首岳の山頂から、今度は北登山口に降りる。南登山口からの山道と北登山道への山道は、サクランボの軸のような形態で分岐しており、気をつけて歩かないと見落としやすい。間違えて進んで引き返したところで、南方面には黄色テープ、北方面には赤色テープで目印がつけられているのに気がついた。

f:id:nayutakun:20210119194454j:plain

野首岳の南登山道と北登山道の分岐部は少し分かりにくい

f:id:nayutakun:20210119194538j:plain

北登山道からは少しだけ海が見える

 山頂から下った北登山口までは500mほどと短く、9:22には林道まで到達した。登山口付近には舗装された広い駐車場が設置されていた。北風があまりに寒く、ザックからダウンジャケットを取り出して身につけた。ここからは4kmほどの舗装された林道が続く。標高は800mほど。風が冷たい。

f:id:nayutakun:20210119194622j:plain

野首岳北登山口には駐車スペースがある

f:id:nayutakun:20210119194652j:plain

北登山口からは再び林道に合流

 10:18に辻岳の南登山口に到着した。ここには自動車が2台停めてあり、先行した登山者がいるようだった。辻岳の登山道の整備状態は非常に良好。草が刈られ、踏み跡がしっかり付いており、理想的な登山道。地元で人気のある山のようで、子供連れの家族が下山するところとすれ違った。20分ほどで773mの山頂に到着した。山頂には大きな岩があり、その上からは360°の眺望が得られた。とくに南の野首嶽が海に向かって鋭角に落ち込む様は迫力があった。南西には開聞岳錦江湾を隔てて見えた。それにしても風が強い。

f:id:nayutakun:20210119194831j:plain

辻岳南登山道はとても快適

f:id:nayutakun:20210119194903j:plain

ほどなく山頂の岩が見えてくる

f:id:nayutakun:20210119194931j:plain

山頂は360°ひらけている

f:id:nayutakun:20210119194958j:plain

岩の上からの眺望が良い

f:id:nayutakun:20210119195022j:plain

野首岳が海に落ちていくカーブが大迫力

f:id:nayutakun:20210119195103j:plain

 山頂では10分ほどゆっくりして、北登山口に向かって降下をはじめた。北登山口は最初、海に向かって下るが、海に飛び込むかのような角度で降りるのが爽快だった。11:13には辻岳北登山口に到着し、ふたたびもったいないぐらい立派な林道を北に向かって歩き始めた。

f:id:nayutakun:20210119195129j:plain

北登山道は海に向かって下りていく

f:id:nayutakun:20210119195200j:plain

ほんの少しだけ荒れたところがあるが道は分かりやすい

f:id:nayutakun:20210119195228j:plain

ほどなく辻岳北登山口に出る

 20分ほど舗装路を下り、11:34にパノラマパーク西原台の入口に到着した。ここはパラグライダーのテイクオフのためのフィールド。まちがいなく前面の開けた眺望の良いところなので、少し寄り道をした。芝生の斜面が拡がり、大隅半島の西岸はすべて見渡すことができた。ここからテイクオフするときはさぞや気持ちよいだろうなと思われた。

f:id:nayutakun:20210119195254j:plain

ふたたび立派な林道を歩く

f:id:nayutakun:20210119195320j:plain

パノラマパーク西原台に寄り道

f:id:nayutakun:20210119195348j:plain

きれいに整備された公園

f:id:nayutakun:20210119195405j:plain

立ち寄った甲斐のある眺望

f:id:nayutakun:20210119195437j:plain

 パノラマパークから林道に引き返して、舗装路を下る。根占の町がずいぶん近くに見えてきた。12:00ごろには標高50mほどの林道根占中央線の起点の分岐に到着した。ここからは九州自然歩道の標識に従って右折して、田園風景の中を歩く。

f:id:nayutakun:20210119195512j:plain

林道を下ると根占の町が見えてきた

f:id:nayutakun:20210119195541j:plain

林道の終点まで来ると里の匂いがしてきた

 12:22に大久保集落、12:36に打越集落、12:50に大中原集落と、集落の中を右折、左折を繰り返すが、そのたびに標識が立てられていて迷うことはない。

f:id:nayutakun:20210119195638j:plain

田園風景の中を進む

f:id:nayutakun:20210119195708j:plain

f:id:nayutakun:20210119195726j:plain

右左折を繰り返すが標識はしっかりしている

f:id:nayutakun:20210119195754j:plain

f:id:nayutakun:20210119195814j:plain

滑川小学校跡も快適そうな芝生の校庭だった

 13:01に滑川集落に到着した。ここが最寄りの公共交通機関に最も近い地点で、今回はここで九州自然歩道を離脱して福岡への帰途に着くことにした。

f:id:nayutakun:20210119195923j:plain

今回の離脱地点の滑川

f:id:nayutakun:20210119195941j:plain

次回はここに戻るつもり

 福岡までの復路の第1候補は根占港からフェリーで山川に渡り、指宿枕崎線で鹿児島まで出る方法。根占港まで6.5kmほどあるが、そこまでは公共交通機関はない。根占港に向かう県道563号線を歩いていると、白い軽トラがクラクションを鳴らして停まって助手席を指さす。歩いているんですと言って帽子をとって断りながら挨拶をしたら、手を振って笑って走り去った。

f:id:nayutakun:20210119200027j:plain

県道563号線に合流

f:id:nayutakun:20210119200051j:plain

f:id:nayutakun:20210119200107j:plain

辻岳ははるか後方に

 さらに1kmほど歩いた出口集落では、本日始めての自販機を見つけてザックを下ろしたら、別の白い軽トラが後ろから来て停まった。運転席から降りた男性が自販機に千円札を入れると、財布を持って立っている私に向かって好きなボタンを押せという。礼を言ってホットコーヒーを頂いたら、男性もコーヒーを2本購入した。男性はいつか、大隅半島の東岸に植物の採集のために山に入ったときに、一人歩きの女性が大きなザックを担いで一人旅をしているのに出会って感動したという。女性が地元の人間でも知らないようなところに歩いて行き、テントを張って寝るという大胆さに驚いていた。大隅半島には美しいところがたくさんあるから、もう少し暖かくなったらもっといろいろなところを歩いて欲しいと言って去って行った。この人は、ザックを担いだ私にコーヒーを奢りたいためにわざわざ欲しくもないコーヒーを買ったような雰囲気だった。頂いたコーヒーは、私のお腹と心を温めてくれた。

f:id:nayutakun:20210119200200j:plain

この自販機で喉の渇きを癒やそうとした

f:id:nayutakun:20210119200429j:plain

まだまだ根占の町は遠い

 そんなこんなで6.5km歩き、根占の町を通過した。根占大橋を渡るときに見えた海面が白かったので、いやな予感がした。14:34に根占港に到着したときには脱力してしまった。予感が的中した。さて、どうやって福岡に帰ろうか。人生は修行だ。

f:id:nayutakun:20210119200527j:plain

根占の町のこの木は南蛮船の係留に使われたという

f:id:nayutakun:20210119200619j:plain

根占大橋を渡るときの白波を見ていやな予感がした

f:id:nayutakun:20210119200711j:plain

いやな予感は的中確率が高い

f:id:nayutakun:20210121084237j:plain

f:id:nayutakun:20210121084248j:plain

2021年1月17日 九州自然歩道 76日目 鹿児島県肝属郡南大隅町佐多風力発電所南大隅町根占ネッピー館 曇り後晴れ 気温7/2℃ 行動時間8:48 距離28.1km 45785歩

 

復路交通:根占ネッピー館17:13-鹿屋18:03/19:00-垂水港19:47/19:55-鴨池港20:35/20:45-鹿児島中央21:08/21:36-博多23:23