福岡の自宅のベッドで目が覚めた。今日は土曜日。カーテンの隙間から見える外はまだ真っ暗な4:30。窓の外からは雨の音が聞こえる。今日は歩きたくない。冬の雨の日に一日中山道を歩くなんて、ゾッとする。そのうえ、歩いた後には雨に濡れた地面の上にテントを張って、その中で一晩過ごすなんて、拷問だ。ああ、いやだいやだと思いながらも、ベッドから這いずり出てシャワーを浴びたら、覚悟が決まった。
5:36の地下鉄に乗って、博多からは6:10の新幹線つばめ307号。鹿児島中央駅でバスに乗り換え、鴨池港から垂水に渡り、ふたたびバスに揺られて大隅半島の先端に近い根占の町に着いたのは11:17だった。大隅半島もやっぱり雨だった。
根占の町には大きなAコープがある。まずはバス停前のAコープで今晩のご飯と今から食べる昼食を買い込む。会計を済ませて、昼ご飯に購入した焼きうどんを電子レンジで温めて屋根のあるバス停で昼食とした。雨は次第に強くなってきた。あー、歩きたくない。雨具をつけて、ザックにはレインカバーを装着して11:40に行動開始した。
まずは県道563号線を東に進み、高度を上げていく。レインコートの下は少し汗ばんできた。標高200mほどの峠を越えて道路が平らになった3km地点の自転車競技場を12:28に通過した。ここは鹿児島国体の会場予定だったところ。昨年は中止になったが、いつこの会場が使われるのだろう。
12:46に県道の分岐を通過し、12:56に先週、九州自然歩道を離脱した滑川(なめい)の標識の立つ分岐点に到着した。行動開始してから約5kmだった。50mほど先に公民館があったため、軒先を借りて小休止。サーモスのお湯でインスタントのキャラメルラテを作って体を温めた。
13:10に行動を再開し、滑川小学校の跡地を通過。小学校が廃校になるというのは悲しい。この地域を巣立つ子供はいないのだ。小学校の入り口には定番の二宮金次郎の銅像が据えてある。当時は薪を担ぎながら本を読む勤勉さを強調したのだろうが、現代に置き換えると歩きスマホに該当しそうな気がする。
ここから先は田園風景の中を歩く。ただし、雨が強く、スマホのシャッターがなかなか反応しないため、あまり写真が撮れない。13:36に門木(かどき)集落、13:54に八重(はえ)集落を通過した。本日の九州自然歩道復帰は滑川(なめい)からで、その前の集落は横別府(よこびう)。このあたりの地名の読みは変化球の切れがよすぎて、なかなか読めない。九州自然歩道も小刻みに右に左に折れるが、こちらは標識がしっかり設置してあり、まず迷うことはない。
14:00に門木調整池を通過したが、このあたりから雨はいよいよ強く降り始めた。レインコートの首の辺りから、服の中に雨が入り込む。靴もずいぶん湿ってきた。
ずぶ濡れの状態で14:40に花瀬公園キャンプ場に到着した。管理棟に行ってみたが、シーズンオフなのか人はいないようだった。広い芝生のフィールドの端に屋根のあるベンチがあった。広い屋根に覆われていて、幸いベンチとテーブルは濡れていなかった。
快適そうなキャンプ場なので、時間は早いが、ここで行動を終えようかと思い、荷物を下ろした。濡れた髪の毛をタオルで拭きながら考えた。選択肢は3つある。
1. 本日はここで行動をやめ、キャンプ場でゆっくりする。雨に濡れず快適だが、そんなことでいいのかと心の中の鬼軍曹がお尻を棒でたたく。しかも、翌日の行程が30kmを越えて心配。
2. 行けるところまで行ってしまう。鬼軍曹は満足かもしれないが、もし、この先に屋根のある野営適地が見つからない場合は、今晩の雨はかなりつらそう。びしょびしょのまま寝袋に入ることになりそう。
3. ここから行けるところまで行き、ひょっとしたらこの先に路線があるのではないかと思われるコミュニティバスで、このキャンプ場まで引き返す。
じつは、花瀬公園キャンプ場の入り口に入る前にコミュニティバスのバス停を見つけていた。コミュニティバスの多くは、乗換案内のアプリで検察されないため、ルート検討の際に見落とされる。コミュニティバスの時刻表の写真を撮っておいたので、確認したら1日3便あり、17:30ごろにここを通過する便がある。運良くこれからのコースの行き先にバス停があれば、そこまで歩いて引き返すことができそうだ。
ということで、運を天に任せて、行けるところまで遡ってみよう作戦をとることにして、15:00に行動再開した。目標地点は雄川の滝。NHK大河ドラマの西郷どんのタイトルバックに使われた滝で、エメラルドグリーンの滝壺が美しい。キャンプ場からは7kmほど。雄川の滝を見学して、あわよくばバスでキャンプ場まで戻ってこよう。
キャンプ場から雄川に架けられた花瀬橋を渡る。橋の上から見える川は奇観といっていい。川と言うよりも、ひびの入った岩盤。水は岩盤のひびの中を流れている。板を敷いたような川だ。川の上を歩けそうなので、河原に降りてみた。まさに板敷き川。川の上を歩いて、真ん中まで行ってみた。水量は少なく、ひびの中しか水が流れていないため、靴を濡らすことなく川の真ん中まで行くことができる。忍法川歩きの術を体現できる。
川のそばには島津藩のお茶亭跡がある。やはりこの川はお茶でもすすりながら眺める価値がある。
花瀬橋を渡った後は、雄川に沿って下流に向かい、雄川の滝を目指す。狙い通り、コミュニティバスのバス停が現れた。時刻表を確認しながら、逆算して進めるところまで進んでみることにした。
5kmほど進んだ地点で、雄川の滝の分岐部が現れた。ここから目標までは1.5km。ここからはバス路線から外れてしまうよう。現在の時間は16:15で、1.5kmならばバスの通過する17:15ぐらいまでに、往復してさらに10分以上滞在できるとみて左折した。
靴の中はびちょびちょになったが、16:30に雄川の滝に到着して、エメラルドグリーンの滝壺をこの目で見ることができた。
雄川の滝からは、ふたたび速いペースで歩いてバス路線まで出たのが16:50。さらに1kmほど先に進み、17:08に国道448号と交差する田代麓に到着して本日の行動は終了。17:16にやってきたコミュニティバスに乗って17:38に花瀬公園キャンプ場に戻ることができた。
キャンプ場は自分一人だけ。屋根の下にテントを設営し、お湯を沸かして夕食とした。雨は降り続いている。
2021年1月23日 九州自然歩道 77日目 鹿児島県肝属郡南大隅町根占~肝属郡錦江町花瀬公園キャンプ場 雨 気温19/11℃ 行動時間5:27 距離23.5km 35030歩
往路交通:西新5:36福岡市営地下鉄-博多5:50/6:10九州新幹線つばめ307号-鹿児島中央7:58/8:10鹿児島交通バス-鴨池港8:38/8:50垂水鴨池フェリー-垂水港9:50/10:05鹿児島交通バス-根占11:10