今回の九州自然歩道トレッキングも、金曜の夜から宮崎に前泊。夕食には名物の釜揚げうどんと肉巻きを食べて早めにベッドに入った。
本日土曜日の天候は雨。5:40にホテルを出て、宮崎駅に向かう。6:01の始発の列車で都農に6:40に到着。今回は、大変ズルいと思うのだが、都農駅から尾鈴キャンプ場まではタクシーを利用。前回は尾鈴山瀑布群から都農駅まで歩いたのだが、17kmほどある。現地までは公共交通機関利用か徒歩のみと決めており、本来はScheduled Public Transportation(時刻表のある公共交通機関)を意図していたのだが、今回だけは勘弁してほしい。当地の公共交通機関網はものすごく貧弱で、土日のみでは次の目的地にたどり着くことができなくなってしまうのだ。
都農駅に日豊本線の列車が到着したときには、予約をしていたタクシーがすでに待ってくれていた。気のよい男性の運転手さんで、かつて都農の町まで走っていたトロッコ列車の跡などを教えてくれた。先日は、リヤカーを曳いて日本一周をしている人を見かけたとか。話が弾み、目的地まで退屈しなかった。
尾鈴キャンプ場入り口までは30分ほど乗車し、7:15に到着した。あいにく強い雨が降っており、運転手さんは心配そうにこちらを見る。上下の雨具を装着し、靴にはゲーターを着けて、7:30に行動を開始した。
県道307号線から橋を渡り、トロッコ道のトンネルを抜けてしばらく進み、もう一つの橋を渡るとキャンプ場。設備の整った快適そうなキャンプ場だが、誰も宿泊していないようだ。いつか再来の時のために山小屋の位置を確認して先に進む。
キャンプ場の裏手から階段を上り、高度を上げていく。右手に川が見えてきて、まずは若葉の滝が出てきた。これも十分に見事な滝。滝壺からの流れにあった置き石を伝い、対岸に徒渉する。徒渉地点から100mほど進むと矢研(やとぎ)の滝が現れた。落差73mの壮大な滝で、日本の滝100選に選ばれている。東遷前の神武天皇がここで矢を研いだことから矢研の滝と名付けられたとのこと。
矢研の滝から若葉の滝にいったん引き返し、今度は山に向かう道を上っていく。谷川に架けられた梯子の片方が水中に降りている。そこから対岸の梯子まで5mほどは膝下の深さの川を徒渉しなければならない。やむなく、靴と靴下、ゲーターを脱いで、ズボンを膝上までたくし上げて徒渉した。水は冷たく、川の石が足に突き刺さる。
対岸にたどり着き、タオルで足を拭いていると、目の前の落ち葉の中から、3cmほどの長さの茶色のミミズのような生物が、尺取り虫のような運動をしながら近づいてきた。初めて見たが、これがヒルだとすぐに分かった。炭酸ガスに反応するようで、こちらにロックオンしてものすごい勢いで接近してくる。恐ろしい。すぐに撃退した。すでに素足にくっついた個体はいないか確認してから、靴下を履いた。
さらに山道を進み、今度は矢研の滝を上から眺める。このあたりの山道もかつてはトロッコ列車が走っていたようだ。幅1.5mほどの切り通しが作られており、全体に勾配は緩やか。山道としては非常に歩きやすい。
谷間の小さな流れのあるところには、幅の狭い橋が架かっている。これもトロッコ列車の橋を利用しているようだ。
矢研の滝の上流には、天の磐船(あまのいわぶね)というニギハヤヒコノミコトが高天原から乗り捨てた船だとされる石があるが、これは無理をしすぎ。どうみても浮かびそうには見えない。
ここから先もトロッコ道が続く。ところどころに枕木も残っている。よく見ると、レールを止める犬釘のようなものが残った枕木もある。このトロッコ道は渓流のすぐ横を走っていたようだ。今から70年ほど前は、この道の上の線路を、切り出した材木を積んだトロッコが走っていたと思うとワクワクしてくる。もし、現在もトロッコ列車が走っていたならば、週末ごとに日本中のその筋のマニアが大集合しているのではないだろうか。
トロッコ道を抜け、9:33に自動車の轍の跡のある林道に合流した。林道には現在も伐採されたスギ材が並べられている。心地よい林道をしばらく歩く。9:45に九州自然歩道の分岐の標識が出てきたが、地図ではさらに200m先に分岐があるように見える。9:50に地図上の分岐点から川に向かって降りたところ、トロッコ列車の線路跡にたどり着いた。さきほど林道で終点だと思っていたトロッコ列車は、さらに上流まで線路が敷設してあったようだ。ただしこのコースはメインテナンスがあまりよくなく、倒木が多く、一部は藪になっている。もう少し進むと、橋長20mほどのやや長めの橋が出てきた。ここからは急斜面となり、この先には線路は敷設してなかったように見える。
10:18にさらに川沿いに進んだところで、コースを示す赤テープが現れ、川向こうにも赤テープがはためいている。ここが渡渉地点のようだ。昨日からの雨のせいか、流れが速く見える。赤テープの少し上流に大きな石が並べておいてある。ふたたび靴を脱いで、ズボンを膝上までたくし上げた。水は冷たい。意外に流れが速く、油断すると水流に押されて転倒しそうになる。水面に頭を出した石を掴みながら、無事に渡渉することができた。
徒渉した後は山道をぐんぐん登っていく。10:33にも小さな渡渉地点があったが、今度は靴を脱がずに石伝いに渡渉することができた。
10:35には林道との交差が現れた。林道が歩けるかと期待したが、すぐ目の前に遊歩道の看板があり、スギの植林の山道に進む。ここまで山道と徒渉はずいぶん堪能したので、そろそろ歩きやすい林道を歩いても文句はない。さいわい、下草のしっかり刈ってある歩き易い山道でホッとした。今日は雨で下草は雨をたっぷり含んでいるので、藪漕ぎをしようものならばずぶ濡れになってしまう。
11:00にはふたたび林道と交差。ここも遊歩道の小さな看板が立てられており、すぐに山道に入る。しばらくスギの植林を縫うように進むが、11:23に藪の中に入っていった。GPSで方向を確認するが間違いはない。藪漕ぎでしばらく格闘したら抜けることができた。
この後、しばらくは谷間を進み、12:11に川べりに出た。ここからは川の上流に向かって進む。地図で石並川と確認できた。この川は絶景の連続だった。岩をくりぬいたような深い淵が現れたと思ったら、左からしぶきを立てて勢いよく流れ込こむ支流がある。その上流では本流も二つに分かれて左右から滝になって合流している。まだ行ったことはないが、写真でよく見る高千穂峡のようだ。
山道は左の滝に沿って登っていくが、7段ぐらいの滝となっている。右の川の部分もさらに落差のある滝になっているようだが、よく見えず、滝の音だけが聞こえてくる。
左の滝の4段目ぐらいのところに赤いテープが現れ、徒渉地点とされているかと思われた。向こう岸の岩が削られており、道が続いているのが見える。しかし、本日は水量が多く、この滝を渡ることはできそうにない。
そこで、一段上の滝まで巻き、靴を脱いで徒渉する。しばらく前に進んだ人がいるようで、うっすらと踏み跡がついている。こちらの滝の流れ出しの方は幅が狭いが、今日は水量が多く、足が取られそう。岩も滑りやすく、慎重に水につけた素足を進め、ようやく対岸の石にしがみついた。渡り終えたのは12:16だった。雨のためか滝の水は濁っているが、見事な滝だ。滝の名前を示す看板はない。落差こそそれほどないが、滝のコンビネーションと岩をくりぬいて流れる様がすばらしい。
滝を渡り終えた後はスギの植林を抜けて、12:29に橋のたもとで林道と合流した。標識には林道西林神隠線と書いてあり、北の西林山と西の神隠山の裾野を流れる石並川に沿って敷設された林道のようだ。雨が弱くなってきたので、材木置き場で荷物を下ろし、昼食とした。林道沿いにはコース中の数少ない平地があり、先行された方たちはこのあたりで野営をすることが多いようだ。
12:50に行動再開。林道を400mほど西に上流に向かって歩いて、九州自然歩道の標識に従って河原に出た。ここにも赤テープが巻いてある。この川は、川幅があり、深く、流れが早い。赤テープの徒渉地点では膝上まで水に浸かりそうだ。しばらく上流まで遡行して、一番狭いところを探してズボンを一番上までたくし上げて徒渉を開始した。流れが強く、荷物を担いだ身体は安定しない。足を動かすと下流に持って行かれる。転倒しないようにすり足で慎重に進む。長く水に浸かっていたため、足が痺れてきた。水面はズボンギリギリで、少し濡れてしまった。ようやく対岸にたどり着き、靴を履き終えたのが13:53。この徒渉はなかなか難易度が高かった。
ここから先は勾配の強いスギの植林を進む。地図を見てみると、標高差が400mを越える上りが続く。14:41にようやく稜線上に出た。稜線上には標識があらわれホッとした。稜線からはほぼ同程度の高度の山道を北に向かって進む。
15:00ごろに稜線上の眺望のある小ピークに出た。雨はようやく止んで、日が差してきた。山の緑が眩しい。
15:17に林道に出た。新しくできたばかりの林道で地図には載っていない。ここでは九州自然歩道が林道によって分断されているが、階段が自然歩道を連結するように設置されている。階段部分を日差しが照らしていたので、雨具を脱いで乾かしながらコーヒーブレイクとした。ホテルでサーモスに詰め込んだお湯がまだ熱い。インスタントのカフェオレの甘さが身体にしみる。
15:33に行動再開。雨は止んだが、藪を歩くと水しぶきを浴びるため、再度雨具を装着して歩き始める。今回もスギの植林を下り、16:04に林道と交差。ここでもコーヒーブレイク。砂防ダムから落ちてくる水で顔を洗う。冷たい水が心地よい。
林道には自然遊歩道の白い標識があり、16:21にそこから下って行動再開。スギの植林であるが、ところどころに倒木がある。地図の九州自然歩道を示す破線からは少し外れているが、ヤマトホの歩行コースをトレースして先に進む。16:40に林道と交差してさらに山道を下り、16:46に小さな谷川を渡渉した。
17:05に迫内川の上流の砂防ダムに出た。赤いリボンがぶら下がる渡渉地点は川幅が10m近くあり、最も深いところは膝を優に超す。ここはズボンをたくし上げても濡れてしまいそうだ。ここはまず、河原の石を徒渉地点に放り込んでおいてから、靴を脱いで渡った。すこしズボンが濡れてしまったが被害は軽微。対岸にたどり着いたら、ヒルが近づいてくる前に靴を履いて歩き始めた。
17:20に徒渉を終えて舗装路に出た。あと2kmほどで目的地の牧水公園に着く。振り返ると西林山が西日に照らされて新緑が燃えている。
しばらく舗装路を歩いていると家並みが見えてきた。のんびりとした町のようだ。
17:56に牧水公園に到着した。満開のツツジが見事だ。残念ながら本日は牧水公園の食堂や施設はコロナ対策のために休館。キャンプ場も閉鎖されていた。今日はキャンプ場に宿泊するつもりだったので残念だ。暗くなる前に野営可能な平地を探さなければ。
2021年4月17日 九州自然歩道 98日目 宮崎県児湯郡都農町尾鈴キャンプ場~宮崎県日向市東郷町牧水公園 雨のち晴れ 21/6℃ 行動時間10:43 18.5km 38025歩
往路交通:
福岡空港18:25ANA4671-宮崎空港19:10/19:18-宮崎19:28(前泊)
宮崎6:10日豊本線-都農6:40/6:45タクシー-尾鈴山キャンプ場7:15