今朝は延岡市の山中に設営したテントの中で5:00に目を覚ました。昨夜から風が強くなり、周囲の木々が風を受けてうなり、テントのフレームがしなっていた。天気予報では延岡市の風は3mとなっているが、標高700mほどの稜線にテントを張っているので、風の影響を受けやすい。
そのかわりに得られるのが朝の絶景。日の出前の紫がかった空に照らし出される新緑と、山の端から少しずつ顔を出す太陽を見ることができる。これは野営でないと見ることが難しい光景。
風に飛ばされないように気をつけてテントの撤収を終えて、5:40から行動を開始した。最初は幅4mの高規格の林道を快適に進む。このあたりは非舗装だが状態は良好。
6:18に茶臼山付近の舗装路に合流した。ここは林道石橋山線という高規格舗装林道で、ゆっくりとしたアップダウンがある。6:35に標高862mの峠を越えた後も、800m前後の稜線に近い快適な林道を歩く。自動車の交通はない。視界の開けたところからは、どこまでも九州山地の山々が続いている。たぶん、半径5km以内にいる人間は自分だけだろうと思う。なんとなく嬉しいような、寂しいような。
舗装路の脇に九州自然歩道の標識が現れた。いま現在歩いている舗装された林道は、古くからある山道を横断する形で作られているよう。地図を見ると、稜線に沿うように引かれた九州自然歩道の徒歩道の破線を、蛇行する二重線の1車線の道路が何度も横切っているのが分かる。
7:11に3つ目の九州自然歩道の標識から、舗装路を離れて山道に入った。この山道には踏み跡はあまり記されていないが、廃道とまではなっていない。年に1回ぐらい、地元の方が整備をしてくれているかもぐらいの荒れ方。20分ほど木々に囲まれた山道を歩き、7:34に前方の視界が開け、コンクリート舗装された林道に戻った。
林道が右に曲がるカーブの入り口にきれいな沢が流れていた。ここで洗顔をし、昨夜使った食器を洗った。昨夜のラーメンの匂いがいくらか軽減したクッカーでお湯を沸かし、山コーヒーとした。
香りの高いコーヒーで一服の後、8:12に行動再開した。ここから先は川沿いの良道。こういう道を歩いているときが、低山トレッキングで一番楽しい時間。
8:43にはふるさと林道下鹿川線に入り、段々畑が見えてきた。下の方には八幡森集落が見えてきた。9:00に下鹿川小学校の跡地に到着し、ここで小休止とした。ここまで3時間以上何も食べずに歩いていたため、お腹が空いてきた。ここでフリーズドライのかに雑炊に先ほど沸かしたお湯を注いで朝食とした。なかなか美味だった。
朝食を済ませて9:10に行動を再開した。集落を通り過ぎて橋を渡る。200mほど進んだところに自販機が設置してあったため、ここで飲料水を2本購入。自販機のところから舗装路と分かれて、矢筈岳トロッコ道に入る。
トロッコ道の看板を過ぎて300mほどは舗装路だったが、次いで非舗装路となりトロッコ道らしくなってきた。左には川が流れ、せせらぎの音が聞こえてくる。道幅はおよそ2mで路盤は堅固。勾配は緩やかで整備状況は極上。地域の方たちが、このトロッコ道をとても大切にしているのが伝わる。このまま1日中歩き続けてもいいやと思えるほど心地よく、歩きやすい。
前方に橋が見えてきた。鉄製の橋で、おそらくトロッコが走っていたのだろう。材木を2mほどの高さに積み上げた6両連結のトロッコが、時速5kmほどでコトコト音を立てて橋の向こうの木々の中から現れてくるような気がする。あー、たまらん。この橋を渡るトロッコが見てみたかった。
9:47にトンネルが現れた。花崗岩をくりぬいたトンネルで長さは50mほど。手堀り感がある。ライトをザックから出さずに進んだが、前方が明るいためなんとか進むことができる。天井からポチャリと水が落ちてくる。
ここもいい。妄想が爆発する。軌間700mmぐらいのトロッコをここに走らせてくれたら、乗りに来よう。たぶん、ここを走るトロッコを見たら、日本国民の85%ぐらいが乗ってみたいと感じると思う。日之影町の皆さん、矢筈岳トロッコ復活クラウドファンディングはじめたら支援させて頂きます。
トンネルの先も快適なトロッコ道を楽しみながら歩く。10:02には川までの視界の開けた休憩所に到着した。ここにはトイレ、水場、芝生、ベンチが設置してあり快適。何よりここからは左に比叡山、川を挟んで右に矢筈岳という、山容の優れた山が正面に見えるのが良い。ここではザックを下ろしてベンチに座り、しばらく休憩とした。今回はコースに含まれていないが、比叡山と矢筈岳にもいつか登ってみたい。
休憩所からもしばらくトロッコ道を進む。10:16に九州自然歩道の丹助岳分岐が現れ、ここを右折して泣く泣くトロッコ道を離れることにした。今度ここに来るときは、トロッコ道を端から端まで歩いたうえで、比叡山と矢筈岳に登ろうと決心した。
丹助岳を指し示す九州自然歩道の標識があまりにボロボロなので、行く末が心配だったが、歩き始めた山道は比較的整備状況が良好で安心した。しばらくは沢沿いに歩き、終盤に谷間に出たところで、鹿避けのネットに行く手を阻まれてコースが不明になる部分があったが、その後はまたしっかり整備された木道が現れ、10:56に普通林道丹助線と合流して小休止とした。
10分ほど休憩して行動再開。11:21に地図にはない舗装路に出た。舗装路を道なりに進むと、九州自然歩道の標識が出てきた。このあたりは新しくできた林道に、九州自然歩道が付け替えられているようだ。
最後に舗装路を離れて200mほど山道を登り、11:30に丹助小屋に到着した。小屋の周囲には芝生が植えられており、小屋の中は30畳ほどの木張りの床。入り口近くに囲炉裏場もある。ここで小休止し、荷物を置かせてもらって11:45から空荷で丹助岳への登山を開始した。
よく整備された登山道を上り、12:05に丹助岳(816m)の頂上に到着。360°グルリと素晴らしい眺望の山頂。
眺望を堪能した後、帰り道の途中にあった天狗岩に登ってみた。少し傾斜の急な岩場があるが、ロープが設置してあるので問題なく登ることができる。天狗岩から見える丹助岳の頂がまた素晴らしい。
のんびりと下って丹助小屋まで戻ると、男性二人がロープワークの練習をしている。隣のベンチに腰掛けて水分補給していると、地元の方とのことでいろいろ話が弾む。一人の方は、現在は福岡で働いているとのことで、自動車は福岡ナンバー。下まで送りましょうかと誘ってくれたが、丁寧にお断りして13:03に行動再開し、麓の日之影町の市街地まで残り9kmほどを歩き始めた。
丹助小屋からは舗装された林道が続く。程良く植林があり、歩きやすい。視界が開けたところからは市街地がチラリと見えるが、ずいぶん下の方にある。地図を見ると標高差が400mほどありそうだ。
14:10に国道218号線と合流した。ここは昨日、バスに乗るために山を登ってきたところ。上顔橋の袂から橋の下の一般道に下りて進んだが、あとで標識を確認すると、九州自然歩道の本来のコースは橋を渡ってから右に曲がれば良かったよう。
上顔橋を通り過ぎると日之影温泉の市街地が見えてきた。2回ほどスイッチバックを行い、高度を下げて川べりまで出た。五ヶ瀬川は水量が豊富で、流れが澄んでいる。100mほど下流に進むと、昨日泊まった列車の宿が見えてきた。これを見ると、なぜ高千穂線に乗ってみようと努力しなかったのか悔やんでも悔やみきれない。
14:47に日之影温泉に到着し、温泉に浸かって本日の行動を終了することにした。
2021年5月9日 九州自然歩道 103日目 宮崎県延岡市北方町上中尾~西臼杵郡日之影町日之影温泉駅 晴れ 27/13℃ 行動時間9:04 行動距離23.5km 37778歩
復路交通:青雲橋18:12西鉄高速バスごかせ号-博多BT21:57