九州自然歩道を週末に歩き倒す

目標は九州自然歩道の総延長2932km踏破。

九州自然歩道 57日目 球磨川源流域から人吉盆地へと下る 熊本県球磨郡水上村湯山温泉~球磨郡多良木町ブルートレインたらぎ 2020年10月17日

 本日は熊本県南部の球磨川源流域の湯山温泉からのトレッキング再開。今朝、福岡の自宅からは地下鉄、新幹線、高速バス、コミュニティバス、ローカルバスと5時間以上かけて乗り継いで、10:36にトレッキング開始地点に到着した。

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ようやくトレッキング再開地点に到着

 前回は五木村から白蔵峠を超えて球磨川源流域を目指したのだが、通行止めに阻まれて、本来の九州自然歩道のコースを30km近くショートカットして湯前(ゆのまえ)駅まで歩いている。今回は、未踏破のコースをなるべく短くすべく、湯前駅から未踏部分の九州自然歩道をバスで可能な限り遡ってから歩くことにした。

 人吉駅からローカルバスで1時間ほどかけてたどり着いた終点のバス停の名前が市房山登山口。あいにくの雨で、美しい独立峰の市房山(標高1722m)は今日はまったく見えない。晴れていたら登ってみたかったのだが、2019年7月の豪雨のために登山路が壊滅的な状況で、入山禁止になっている。バス停で雨具を装着して、湯前方面に向けて行動を開始した。

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正面に市房山が見えるはずなのだが

 湯山温泉は落ち着いた温泉の町。いくつかの温泉旅館と民宿、製材所、わずかな商店がある。町のメインストリートは石畳となっており、温泉町の雰囲気を醸し出している。

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 温泉街を過ぎると、九州自然歩道は国道338号線に合流する。にわかにダンプカーの往来が激しくなる。球磨川の水を湛えた市房ダム湖の上流部分に差し掛かるが、国道は無事なのだが、脇道には大きな崩落部分が見える。しきりに行き来するダンプカーは、さらに上流の道路工事のためだろうなと思いつつ、下流に向かって進む。

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 11:20に球磨川に架かるつり橋が見えてきた。橋長は100mを超えるような木製の本格的なつり橋だ。水輝橋という名で、風に吹かれて揺れて心地よい。橋の上からの景色は良いはずだが、あいにくの雨でいま一つの状態。河岸には木材がかなり堆積している。

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 つり橋を過ぎたところに弁当屋があり、昼食を食べながらしばらく休憩。その後はゆっくりと、緑色の水を湛えた雨の市房ダム湖の眺めを楽しみながら歩いた。

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 市房ダムのダム体には12:30に到着した。晴れていれば、正面に市房山が見えるであろうが残念。雲の切れ間に、ほんのわずかだけ頂上部分が見え隠れしている。

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市房山がわずかに見える

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 ダムからしばらく下っていくと、奥球磨ループ橋が見えてきた。標高差100mほどのスイッチバックを回避するために造られたのであろう360°のループ橋。村のシンボルのようで、展望台まで作られている。このあたり一帯は桜の名所のよう。

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 13:00を過ぎたあたりで、国道338号線沿いの村の中心地を過ぎて2kmほどの高橋集落で国道を左に折れ、球磨川を渡る。幸野ダムという小規模のダムが水を湛えている。

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水上村役場 ループ橋のすぐ下にある

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幸野ダム

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 幸野ダムからは球磨川の南岸を進むことになる。幸野ダムは取水口になっているようで道路に並行して水路が走っている。面白いことに、この水路は上部が覆われたパイプラインのような構造となって続いている。ところどころ側面を石垣で補強している。上部が開いた水路に天井を付けたわけではないと思われるので、土管のようなシールドを連結して作った水路なのだろうか。どこにも案内板がないが、構造や由来が気になる。

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幸野ダムから水路が始まる

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道路に沿って水路が続く

 13:52にトンネル構造の水路が水門から解放された部分にようやくたどり着いた。ここからはいくつかの方面に分岐して配水されているようだ。

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2kmほど進んだここでようやく水面が顔を出す

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 このあたりから九州自然歩道は右に折れる。しばらく進むと石段の先に鳥居が見える。石段を上がってみると、よく手入れされた里宮神社だった。市房神社の下宮のようだ。かつては湯前城が置かれたとされている。このあたりで雨が止んできたため、雨具を脱いでザックに片付けた。

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 ここからしばらくは、畑の中に家が点在するのんびりした歩道を歩き、14:30に湯前駅前のレストランの徳丸に到着した。ここには前回も訪れており、有名なチャンポンを頂いたが、今回はソース焼きそばの昼食とした。こちらはちゃんぽんほど洗練されてはいなかった。

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 昼食の後、15:00に行動再開し、九州自然歩道に戻る。刈り取りまつばかりの水田を眺めながら進み、県道33号線人吉水上線に合流した。

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球磨川を渡る

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 15:26に猫寺として知られる生善院観音に到着した。なんとものんびりした雰囲気の寺だが、由来を読んでみたらずいぶん通称とは異なることに驚かされた。

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猫寺

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 この先は多良木町に入る。県道の交通量はそれほど多くなく、のんびりと歩くことができる。球磨川に沿って、刈り取りを終えた水田を眺めながら下流に向かって進む。

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 16:10に青蓮(しょうれん)寺に到着。阿弥陀堂の茅葺が見事。

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青蓮寺阿弥陀堂

 この先は狭い街道路に沿って民家が並ぶ。ときおりダンプカーが通るが、軒先をかすめるようにして通過する。

 民家の間にりっぱな石蔵が見えたので覗いてみた。多良木町埋蔵文化財センターだった。地元の発掘物や相良藩の古文書などを展示している。石蔵がとても立派。キュレーターの方に聞いてみたら、昭和初期に建てられた農協の米の貯蔵庫だとのこと。このあたりは良田が多く、各所に貯蔵用の石蔵があるとのこと。

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 家並みを抜けたあたりが里城(さとんじょう)。ここから里の城大橋を渡って、球磨川を越える。多良木の中心地が見えてきた。

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 2kmほど歩き、17:30にくま川鉄道多良木駅に隣接した宿泊施設ブルートレインたらぎに到着した。ここは、かつて国鉄が運行していたブルートレインをそのまま宿泊施設として利用したもの。機材ははやぶさ。40年ぐらい前に乗った気がする。今日はいい夢が見られそうだ。

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2020年10月17日 九州自然歩道 58日目 熊本県球磨郡水上村湯山温泉~球磨郡多良木町ブルートレインたらぎ 雨のち曇り 気温15/8 距離20.6km 行動時間7:02 36742歩

九州自然歩道 56日目 通行止めの球磨川源流域を迂回 熊本県球磨郡水上村白蔵越~湯前町湯前駅 2020年10月4日

 本日は五木村水上村の境界である白蔵越から、2kmほど小川内川に向かって谷を下った地点からのスタート。本来、九州自然歩道は白蔵越よりも5kmほど北の白蔵峠を通過して球磨川源流域に進むのだが、白蔵峠、球磨川源流域ともに通行止めの情報により、昨日の時点で白蔵峠の10kmほど手前から迂回路を巡り巡って白蔵越までたどり着いている。

 昨夜は、白蔵越を過ぎて水上村に入って2kmぐらいの地点の、杉の植林のために整備された林道脇の草地で一夜を過ごした。虫の音が子守唄のように一晩耳元で鳴ってくれていた。

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 本日の目標とするのは、九州自然歩道上にある、くま川鉄道湯前駅。非常に残念なことに本年7月の豪雨災害のためにくま川鉄道は運行を休止しており、鉄道を利用することはできない。くま川鉄道は前身が国鉄湯前線の、戦前から営業している歴史のある路線。未乗区間だっただけに残念だが、それ以上に月曜からの仕事のために福岡に帰らなければならない私にとって運行休止は切実な問題。ようやく最近、くま川鉄道はバスによる代替運行を始めたようだが、定期券利用者のみ利用可能で、かつ平日のみの運行というかなり渋い対応。同区間を1日4便ほど運行する他社のバスの時間に間に合わせるしかない。

 テントの中で6:00に起床したが、まだ谷間には日は差してこない。近くの水場で歯を磨き、顔を洗う。冷たい水で顔を洗うと、朝の気分は大分違う。テントを撤収していると、山の上の方から1発の銃声が響いてきた。2分ほど間を置いて2発目の銃声が聞こえた。どうやら仕留めたようだなと思いながら、日が差し込んできた6:47に行動を開始した。

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山から流れる冷たい水で顔を洗う

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周囲が明るくなって行動開始

 晴れた日の山の朝には素晴らしい光景が見られる。今朝は、谷間に漂う細かな水滴に朝日が散乱して薄紅色に染まった山々を見ることができた。写真ではその質感を伝えられないのが残念。だれか一緒に歩いてみませんか?と言いたくなるぐらい美しい朝がある。

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九州山地の朝

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 野営地からは、ほどほどに整備された林道を下る。植林されたスギの周囲の下草は丁寧に刈られており、この林道が林業のために活用されていること、山が大切に育てられていることがよくわかる。周囲の山を見渡すと、針葉樹の収穫を終えたばかりの区画や、幼木を植えたばかりの区画、40年は生育したであろう立派なスギの育った区画などが見事に管理されていることがわかる。球磨地区の山林の手入れで気づいたのが、北側の枝は丁寧に払ってあるのに対して、南側の枝は落としていないところが目立つこと。一般には下枝が成長すると節目を形成するので、柾目を良しとする針葉樹では全周を丁寧に落とすかと思っていたので、不思議に感じる。林業関係者に尋ねてみたい質問項目とした。

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林道の整備状況は良好

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南側の下枝が払われていないのが目立つ

 そんなことを考えながら林道を下っていると、白い軽トラックが山の上から降りてきた。通り過ぎるときにチラリと見えた荷台には、首から血を流したシカが横たわっていた。さっきの銃声の標的がこれだったのかと分かる。

 ここから先の林道は地図には記載されていなかったが、問題なく通行できた。8:00に林道は谷底を走っている県道161号線に合流した。ここは地図上では4軒ほどの家の集まる水洗集落であるが、居住者はいないようだった。県道161号線は昨日、五木村の竹の川から下梶原川を上流に向かって走行していた道路と同じ番号。峠を越えてふたたび復活しているが、地図では峠の手前で消えており、峠を越えた谷で記載が始まり、連続してはいない。どこから復活したのか遡って見てみたい気もしたが、今日はやめておいた。

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もう一度歩きたいと思わせるほど快適な林道

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県道161号線に合流

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荒スゲ谷川に沿って進む

 舗装路を球磨川の源流の一つの荒スゲ谷川に沿って下る。この川も透明度が高い。少し深さのあるところは緑色に見える。そんなところには大きなヤマメが隠れているような気がする。紅葉が始まったばかりのカエデもちらほら見られ、あと1月もすれば渓流を美しく染めているだろうなと思われた。

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 9:00に数軒の手入れの良い庭を持った家の集まる坂下集落に到達した。ここでは川の畔に座って、ビスケットの朝食をとった。今回は予期しない長距離の迂回も覚悟していたため、荷物を軽くするためにコンロを積んでいない。残念ながら、朝のコーヒーを楽しむことはできない。

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坂下集落

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川縁で朝食

 このあたりから川の名称は小川内川に変わっている。しばらく川に沿った道をのんびりと歩く。このあたりの田んぼは、稲の収穫を終えて、はざ掛けをしているところがある。今どき手のかかるはざ掛けでの天日干しは珍しいだろうなと思ったら、無人販売所に新米が置いてあった。1.5kgとずっしり重いが、迷わず購入した。おそらく目の前の田んぼで収穫したはざ掛け米。自分の目で確かめたはざ掛けの、その新米を食べるという贅沢はなかなかできない。

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収穫を終えた田も目立ちはじめた

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はざ掛けで天日乾燥している稲

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無人販売所を覗いてみる

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おそらく目の前の田んぼで収穫された米 買うしかない

 そこから1kmほど歩いたところに水上村の街並みが現れた。水が良いからだろう。酒造所もある。家の建ち並ぶ町では、自転車で通りかかった中学生と思しき集団が元気よく挨拶してくれる。正しい日本の姿を見たようで、こちらの背筋も伸びる。

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水上村の市街地に入る

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メインストリートで中学生と挨拶を交わす

 診療所や小学校の並ぶ通りを抜け、球磨川にかかる橋を渡る。橋の下の球磨川は、川辺川と同じく美しい緑色の水に牛乳をこぼしてしまったような色調。きっと上流の石灰岩質のところを激流が削った結果なのだろう。東の方には市房山の堂々とした山が聳えている。

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水上村の診療所

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村立小学校のデザインも素敵だ

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球磨川は独特な色合い

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東の方角には霊山市房山が聳える

 球磨川を渡ると、湯前(ゆのまえ)町に入る。時計のある通りを過ぎ、湯前駅に到着した。湯前駅をターミナルとするくま川鉄道は、2020年7月豪雨で甚大な被害を受け運休中。線路は赤く錆び付いていた。

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湯前町のメインストリートに立つ時計台

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現在運行を休止しているくま川鉄道湯前駅

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赤く錆びた線路が悲しい

 駅からすぐそばの、歴史のありそうな商工会館の前を通り、湯前まんが美術館を覗いてみようと行ってみたが、ここも7月豪雨の被害を受けたようで現在休館中。11:30にふたたび湯前駅に戻って、湯前ではとびきり有名な徳丸のチャンポンを食べるために行列に並んで、本日の行動終了とした。 

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湯前商工会館

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湯前まんが美術館

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満員の徳丸に並んでちゃんぽんの昼食

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2020年10月4日 九州自然歩道 57日目 熊本県球磨郡水上村白蔵越~湯前町湯前駅 晴れ 気温27/9 距離17.1km 行動時間4:43 平均速度4.3km/h 23988歩

九州自然歩道 55日目 標高1000mの心地よい林道を歩く 熊本県球磨郡五木村頭地~水上村白蔵越 2020年10月3日

 金曜日の昨夜は熊本県人吉市に前泊した。現在トレッキングしているのは九州山地の中になるため、まずはトレッキング再開地に到着するのが一苦労。今朝は前泊した人吉のホテルを6:00に出て、人吉駅から7:02の五木村行きの数少ないバスに乗った。標高1000m近い山々から川辺川に見事なV字を形成した谷の東岸をバスは走り、8:00に五木村頭地に到着した。天気は快晴。気温は22℃。最高のコンディションだ。

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五木村の中心地 頭地

 五木村からは国道445号線を川辺川に沿って北上する。先週は上流から歩いた道だが、何度歩いても美しい渓谷だ。ここがダム湖に沈むのは残酷だ。トンネルを抜け、つり橋を右手に眺め、9:00に4.3km先の竹の川に到着した。ここが先週、九州自然歩道から離脱した地点。竹の川から県道161号線に右折して下梶原川に沿って東に進む。

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五木村から川辺川に沿って上流に向かって歩く

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道路からずいぶん下を川辺川が流れる

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トンネルを抜け

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つり橋を右手に見て

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川辺川に右側から下梶原川が合流する竹の川が前回の離脱地点

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今日は右折して下梶原川を上流に向かう

 下梶原川はヤマメのキャッチアンドリリース制限をしている珍しい川。キャッチアンドリリースとは、釣った魚を持ち帰らずに、そのまま逃がすスポーツフィッシングに特化した釣りの楽しみ方。少ない傷で魚を針から外すことができる、返しのない針を使う。しかもルアー、フライのみで、エサ釣りは禁止。魚とのだまし合いに限定しているわけだ。このあたりには、観光にスポーツフィッシングを導入した先駆者がいるようだ。それにしても透明度の高い川だ。川辺川もきれいだったが、乳白色の濁りが特徴的だった。これに対して、下梶原川は透明度が極めて高く、水中の石が一つ一つ数えられるほど。

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キャッチアンドリリース(C&R)の案内表示

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透明度の高い下梶原川

 30分ほど舗装路を歩くと、三浦の集落を通過した。対岸の山に石灰岩の岩肌が見え、その真ん中に穴が開いている。天狗岩という名だと解説する看板が設置してある。時間があったらこの穴の中を覗いてみたい気もするが、どうも簡単にそこに行ける道はなさそうだ。

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三浦集落の対岸にある天狗岩

 道路沿いには水力発電所が現れた。この地域一帯には水力発電所が多い。このあたりの水力発電は、大型のダムを利用したものではなく、川の上流の取水口から、下流に送水管で送って発電に使うもののようで、規模は小さいようだ。川の様相が大きく変わることがなく、好感を感じる。

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原発電所

 さらに20分ほど歩くと蛍の里という民宿が現れた。竹の川で看板を見かけた民宿だ。川べりに建つワイルドな趣のある民宿だが、営業中の札がかかっているので覗いてみることにした。時間が少し早いが、イノシシ肉のランチもいいかと思ったからだ。しかし、ここのところしばらく営業はしていないとのこと。残念ながら先に進む。

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民宿蛍の里 残念ながら休業中

 さらに下梶原川の上流に向かって舗装路が続く。右手につり橋が見えてきた。小原(こばる)橋という50mほどの長さのつり橋だ。対岸に家は見えないが、かつては住む人がいたのか、それとも里山の管理にでも使うのだろうか。とりあえず、つり橋を見かけたら渡ることにしている。橋の上からの眺めは最高だった。

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小原橋

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橋の上からの景色は最高

 10:34に本日10km地点の一の股橋に到着した。ここで橋を渡ったら日当方面に向かう大規模林道に分岐しているが、林道は通行止めとなっていた。小休止の後、九州自然歩道のコースに従って、さらに上流に歩く。

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五木村から歩いて10km地点の一の股橋

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さらに上流に向かって進む

 幸いこれまでのところ、舗装された道路にはそれほどひどい崩落個所はなく、歩きにくいようなところはない。ほとんど自動車の通行もなく快適に歩くことができる。山はどんどん深くなる。谷底まで太陽の光が届き、暖かくなってきた。ポツンと現れた民家の傍には、シイタケの圃場とソバの畑があった。

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スクリーンで囲まれたシイタケの圃場とソバ畑

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さらに山が続く

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ときどきこんなところがある

 12:00に下梶原の集落に到着した。ここには直進方向通行止めの大きな看板が立てかけてある。事前に現地に電話で確認したところ、九州自然歩道の進むこの先の峠は歩いても越せない状況で、さらに峠を超えた先の球磨川上流部は豪雨による被害が大きく、入山禁止になっているとのこと。やむなく、ここから大きく迂回して日当に向かい、林道を経由して九州自然歩道に復帰可能なところまで進むこととした。

 数軒の家からなる下梶原集落で橋を渡り、今度は下流に向かって西に方向を変えた後、スイッチバックを繰り返して山の上に向かう。正面に美しい山が見えてきた。おそらく高塚山だ。スギとヒノキの植林の中を高度を上げながら進み、13:10に標高867mの峠に着いた。

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まずは下梶原川を右手に見ながら下流に向かう

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分岐部でスイッチバックし、傾斜のきつい林道に入った

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さらにスイッチバックしながら高度を上げていく

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正面には高塚山が見えてきた

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杉林を抜けたら峠

 車がまったく通らない舗装路の真ん中に寝転がって休憩。空の青さが目に沁みるほどきれいだ。気温は22℃。心地よい風が左から吹く。葉のこすれあう音以外は何も聞こえない。

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峠に寝転がって見上げた空の色が、沁みた

 峠から林道は2つに分かれる。一つは頂上の標高が1200mほどの無名の山の北を回って広域林道に出るコースで、5kmほどと距離は短いが2か所の谷をアップダウンする。もう一つは同じ山の南を通るコースで、最初に200mほど登って標高1000mに到達した後は、等高線3本程度(30m)を上下するだけのほとんど平坦なコースだが、距離は北回りの2倍以上ある。ここまでの行程を振り返ると、沢のあるような深い谷では道路の崩落が生じている可能性が高い。今回は道路の崩落のリスクが少なそうな南大回りコースを選択した。

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峠から南回りの距離の長いコースを選択

 南回りコースは未舗装だがよく整備された広い林道だった。人の手がしっかり入った杉の植林があるので、林業に活用されている道路なのだろう。自動車の轍もくっきりとついている。標高が1000mとなったところで厳しいアップダウンはなくなり、日当たりの良い快適な林道が続く。

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未舗装だが広い林道、両側にネットが張ってある

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標高1000mの快適な林道 ここにもネット

 林道の道路脇には黒いネットを張ってある。歩行者の転落防止のためではないだろう。おそらくシカが新芽を食べたり樹皮を剥ぐのを防ぐためのネットだろう。

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景色も良好

 しばらく歩いたところで道路の大きな崩落個所があった。ここから急に道路が荒れ始めた。崩落個所から先はしばらく自動車が入っていないからだろう。それでもたいして歩きにくいわけではない。ときどき木を跨げばよい程度だ。

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この程度は何ということはない

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時には崩落個所も

 気持ちよく林道を歩いていたら、ほんの20mほど先にシカが見え、すぐに斜面の下に走って逃げた。お尻の白いマークが印象的。まだ小さなシカで、食事に集中したあまり、私の足音に気が付かなかったようだ。珍しいことに斜面の下からこちらを観察している。道路が崩落した後は人があまり入っていないため、人を珍しく思ったのだろうか。写真に収めることができたのは珍しい。しばらくこちらをじっと見て、踵を返して逃げていった。その後しばらくは、谷では複数のシカが高い声の警告音を鳴らしていた。

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こちらをじっと見つめるシカ こんな近くで立ち止まるのは珍しい

 15:30にりっぱな舗装路の広域林道に合流した。ここまで歩いた距離は22.9km。現在の標高は1122m。南回りの林道で正解だったかもしれない。崩落個所はあったものの、それほど苦労せずに通過できたから。

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舗装された広域林道に合流

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道路脇にはアケビが成っていた

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 舗装路を1kmほど歩いて、16:05に白蔵越の峠に到着した。ここから舗装路を離れ、五木村から水上村に向かう林道に入る。林道の整備状況は良好。正面には市房山が見えてきた。立派な山だ。

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白蔵越に到着

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奥の尖った山が市房山

 このあたりの山の手入れは非常に良い。しばらく林道を歩き、高度が900mを切った辺りで、林道わきに心地よさそうな草地を見つけた。16:46と少し早めだが、谷間ではすでに日が落ちている。草地の小石や杉の枯れ枝をどけて整地し、テントの設営を開始した。

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2020年10月3日 九州自然歩道 56日目 熊本県球磨郡五木村頭地~水上村白蔵越 晴れ 気温22/9 距離26.0km 行動時間8:46 平均速度3.7km/h 40964歩

往路交通:

博多19:04九州新幹線新八代19:58/20:06B&S高速バス-人吉IC20:43 (人吉市前泊)

人吉駅前7:02九州産交バス五木村頭地7:59

九州自然歩道 54日目 清流川辺川を眺めながら子守唄の里へ 熊本県八代市泉町仁田尾(五家荘)~球磨郡五木村頭地 2020年9月27日

 昨夜は五家荘の集落の一つ、仁田尾(にたお)のはずれにテントを設営した。標高は834mあったが、それほど冷え込みはなく、夏用のシュラフで心地よく眠ることができた。谷が深いため陽光が差し込まず、まだ暗かったが、6:00に起床して撤収作業を始めた。今日はバス停まで25kmほどあり、しかもそのバスは1日4便ほどしかないため、早めに行動することとして6:35には行動開始。歩き始めるころに、ようやく山の端を太陽の光が照らし始めた。

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 行動を始めてすぐにヒゲのおじいさんがウォーキングしているところに遭遇した。挨拶を交わすと、「観光ですか?」と尋ねられた。「観光です」と答えると、「以前、この辺りは秘境とか言われていたけど、今ではこんなにひらけてしまって」との返事。いいや、今でも十分に秘境ですと思いながらも、「ずっとこちらにお住まいですか?」と尋ねると、「お父さんが京都から引っ越してきた。」とのこと。「おじいさんは大宰府で亡くなったけど。」と続く。「ひょっとしたら、おじいさんって、道真(みちざね)さん?」と恐る恐る尋ねてみたら、「そう、わしが49代目。」と返事が来てビックリした。

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 聞けば、このおじいさん、仁田尾の左座(ぞうざ)家の49代目当主。菅原道真大宰府で亡くなった後、政敵の藤原家に血脈を絶たれることを恐れた長男は、五家荘の仁田尾に逃れて左座太郎を名乗り、初代の左座家の当主となったとのこと。今話している目の前の方が49代目。千年近く前の菅原道真のことを、数年前に亡くなったおじいさんのように語る。道真の次男の方は、菅次郎を名乗って、同じ五家荘の樅木に逃げたとのこと。菅家がまだ続いているかどうかは聞き忘れてしまった。

 五家荘は平家の落人集落だと思っていたが、5つの集落のうち仁田尾、樅木の2つは菅原道真の子孫によって作られ、椎原、久連子、葉木が平家の集落だということも初めて知った。今日は、この秘境がなぜ千年続いたか理解できた。血脈を絶やさないために、徹底的に親から子への伝承があったのだろう。49代を経てなお、おじいさんは大宰府で亡くなった、おとうさんが京都から引っ越してきたと、千年近く前のことをついこの間のことのように口から出てくる当主の言葉を聞けば、それと知れる。

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 49代目と別れた後は、6km先の椎原に向けてどんどん高度を下げていく。頭の上を水力発電の送水管が越えていく。内大臣峡もそうだったが、九州の脊梁山脈に近いこの地は降水量が多く、水力発電の適地として利用されている。

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頭上を水力発電の送水管が走行する

 稜線はところどころ岩となっており、容易に越えることができない。トンネルをくぐって北向きの谷になると再び太陽の光は差し込まなくなる。谷底からは雲が湧いてくる。谷底には川辺川(かわべがわ)の流れが見えるようになってきた。

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トンネルをくぐると

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再び暗い谷

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雲がここで作られるかのような谷

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遥か下に川辺川が流れる

 脊梁山地に降る雨のため、この地には土砂災害が多い。急な斜面はコンクリートで固められたり、金網で保護されたりしているが、最近、大量の落石があったためか、ところどころガードレールが変形して、今なお難所であることがうかがわれる。

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 さらに高度を下げると、川辺川の水面が近づいてきた。しかし、豊富な水量の川辺川はなかなか超える場所がない。川が見え始めてから1kmほども上流に遡行して、ようやく川辺川をまたぐ桂橋を越えて対岸に渡ることができた。桂橋の標高は473m。今朝出発した仁田尾の標高は834mあったから、400m近く高度を下げたことになる。橋の上から眺める川辺川は、急流が岩を削るためか、水が白く見える。濁った水とは異なる。ミルクを流したような色なのだ。

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ここまで高度を落とすがまだ橋は架からない

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ようやく川辺川を渡る

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ここまで歩いてきた道が山肌を斜めに走る

 ここから1kmほど対岸の道を上り、昨日、大金峰への登山口に向かうために分かれた国道445号線に復帰し、8:00に五家荘の平家の里である椎原の市街地に到着した。

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椎原の中心地

 椎原は平家の落人伝説で知られるが、20軒ぐらいの家屋の集まった小さな集落。ほんの少しの商店と生徒のいなくなってしまった小学校がある。小学校は、現在は観光案内所として活用されているよう。

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現在は生徒のいない小学校

 8:00をすぎて椎原のある谷底にも太陽の光が届き始めた。川辺川に沿って下流に進み、8:30に椎原ダムという小規模なダムに到着した。ダムの水もミルクを流したようにうっすらと白い。川がすぐそばまで迫ったこのあたりの道路は岩を削って作った道で、道幅が狭く、この先500mに離合場所というとんでもない表示もある。

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椎原ダム

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この先500m離合できず

 川辺川の北岸と南岸の両側に道路がつけられているが、どちらかの道路が崩落のために通行できない状態になってところも多い。国道445号線は北岸から南岸に、南岸から北岸へと橋を渡り、ジグザグに下流に向かって進んでいく。その橋自体も、仮設の橋かと思われるものが時折現れる。

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対岸は通行不可

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これは仮設の橋か?

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 道路の状況にはやや不安があるが、道路の横に流れる川辺川の様子はとても美しい。しばらく川辺川の北岸を通る九州自然歩道を歩いていると、その先の歩道は土砂崩れで進むことができない状態になっていた。やむなく仮設橋のあたりまで戻り、南岸を進む国道445号線下流に進むこととした。

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いきなり通行止め

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橋を渡って九州自然歩道から国道に戻る

 南岸を進む国道は、緩いカーブを描く橋を越えて北岸にわたり、そのまま五家荘トンネルに続く。五家荘トンネルは長さ640mのトンネル。通行する自動車はほとんどなく、気持ちよく真ん中を歩いて進む。

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カーブした橋を渡り五家荘トンネルの中に入る

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長大なトンネルを独り占め

 五家荘トンネルを抜けた後、道路は五木村に入る。トンネルを出てからはしばらく日当たりの良い北岸の道を進む。川辺川からはかなり高い位置に道路は取り付けてある。トンネルの先は橋となっているが、この橋は川を渡らない橋。北岸の傾斜地には十分な広さを持った道路が取り付けられないため、橋脚を設置して北岸に沿うような道路が取り付けてある。

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日当たりの良い北岸

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川を渡らない橋が続く

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遥か下に川辺川

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一人で歩くのがもったいないほど美しい山、川、道、空

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川の色がとろけるように美しい

 橋の名に気を付けて見てみると、宮の首谷川橋なるちょっと薄気味悪い名前の橋もある。かつてここで何があったのだろうかと想像してしまう。道路の高度が下がり、川が近づいてきた。また、水力発電所を通り過ぎる。

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宮首谷川

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 北岸から南岸への橋を渡ったところの宮園の集落には11:25に到着。ここでは集落のすぐそばを川辺川が流れている。宮園集落には樹齢500年といわれる大きな公孫樹の木がある。雄株のため銀杏の実は付けていない。この木の下にベンチがあったため、しばらく小休止とした。宮園には久しぶりに小売店があったが、日曜は営業していないようであった。

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宮園集落

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樹齢500年の公孫樹

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残念ながら休日はお休み

 11:10に行動を再開し、川辺川のすぐ横を歩く。1kmほど進んだところに、対岸の鶴集落への吊り橋があったため、用もないのに渡ってみた。川から吹いてくる風が心地よかった。

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吊り橋の上から上流を眺める

 その先は、川辺川の取水のための堰堤や、岩を刻みながら流れる川の景色を楽しみながらゆっくりと歩を進めた。

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 11:55に川辺川が南から流れてくる梶原川と合流する竹の川集落に到着した。九州自然歩道はここから南に梶原川の上流に進むが、今回はここで九州自然歩道を離れ、バス停のある4km先の五木村に向かう。

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竹の川集落

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川辺川(右)と梶原川(左)が合流する

 しばらくは川面に近い道路を進むが、橋を渡り、北岸を進むようになると、路面の状態の整った規格の良い道路に変わる。トンネルを超え、新しい橋梁の建設が行われている。川辺川はずいぶん下方に見えるようになってきた。ここは川辺川ダムの建設が進んでいたら水没する予定のところだったのかなと思いながら進む。

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残念ながらこの吊り橋は通行禁止

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建設中の橋

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川辺川は遥か眼下に

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 川辺川がはるか下に見える椿橋を渡る。五木村の中心になる頭地地区はもうすぐだ。カーブを曲がると新しく大きな橋が見えてきた。橋の下にはいくつかの家が残っているが、ほとんどの住居は高台に移った後のようだ。川辺川ダムは建設の是非をめぐり長い間揉めてきたが、現在は中止の方向になっているかと思ったが、これから先はどうなるだろう。

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椿橋を渡ると五木村の中心地はもうすぐ

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五木村の家々が見えてきた

 13:20に五木村頭地に到着した。五木村は五木の子守歌で知られている。数年前にできたばかりの頭地大橋を往復し、川辺川の両岸にあったはずの住居が移転した跡地を上から眺める。その後に、五木阿蘇神社、村役場、道の駅などを見学し、13:50に温泉施設に到着した。バスの時間まで3時間ほどある。間に合ってよかった。温泉施設で汚れを落とし、ゆっくりすることとした。

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頭地大橋

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川沿いの家々はすでにほとんど転居を済ませたよう

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橋の中央にはバンジージャンプの施設がある

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五木阿蘇神社

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道の駅

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眺めの良い露天風呂

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2020年9月27日 九州自然歩道 55日目 熊本県八代市泉町仁田尾(五家荘)~球磨郡五木村頭地 晴れ 気温26/9 距離24.3km 行動時間7:16 平均速度3.7km/h 34648歩

復路交通:

五木村頭地16:45九産バス-人吉郵便局前17:39/人吉IC17:55西鉄高速バススーパーフェニックスー博多BT20:32

九州自然歩道 53日目 九州最後の秘境を歩く 熊本県下益城郡美里町砥用~八代市五家荘 2020年9月26日

 今日は美里町の砥用から九州自然歩道に復帰。本数の限られたバスを乗り継ぐため前日の夜から熊本に前泊している。バスは砥用に8:00に到着し、しばらく民家の並ぶ街並みを歩き、次の目的地の五家荘に続く国道445号線との合流点に8:15に到着した。

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国道445号線に合流

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砥用の田んぼも黄金色に染まっている

 まずは15km先の東山本店という五家荘の入り口に位置する土産物店で昼食を摂ることを目標とする。片側1車線の舗装状態の良好な道路を、正面の山をめがけて進んでいく。道路の右には津留川の清流が流れる。国道の交通量は少なく、10分に1台程度。快調に歩を進める。

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今日の最初の目標はあの山を越えた向こう側

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国道445号線は津留川と並行して走る

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 1時間ほど歩いたところで風情のある、やまめ茶屋を通過。まだ営業していないようだ。次いで下津留の集落を通り過ぎる。下津留の集落は週に2便ある美里町コミュニティバスの終点。ここから先にバスは行かないということは、ここから先には美里町の管内の人家はないということだろう。まだ5kmほどしか歩いていない。

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やまめ茶屋を過ぎる

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下津留の集落を通過すると国道は狭くなる

 下津留から先は道路の傾斜がきつくなり、またセンターラインのない狭い道路に変わった。自動車はほとんど通らなくなった。道路の脇にニホンミツバチの巣箱がかけてあり、先ほど通過したやまめ茶屋のご主人が長い竹竿を持って巣箱の周囲に振り回している。話を聞いてみると、スズメバチニホンミツバチの巣を狙い、ミツバチを捕獲しているのを退治しているとのこと。たしかに巣箱の周りに大きなススメバチが飛翔している。竹竿の先に着けた粘着剤でうまく捕まえて撃退した。尻尾に長い針を持った凶悪そうなハチだった。

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やまめ茶屋のご主人の巣箱

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撃退したスズメバチは凶暴そのもの

 さらに先に進むと、今度は道路工事の現場に出くわした。道路の拡幅工事だと思うのだが、足場を組んで作業をしている。拡幅ならば足場などを組まずに盛土をしそうなものなので、気になって監督さんのような方に工法を聞いてみたら足場を組んでその中に発泡スチロールのような資材を敷き詰める新しい工法を採用しているとのこと。面白い。

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道路拡幅工事の現場

 スイッチバックを繰り返して先に進んでいくと、砥用の町がずいぶん下に見えてきた。現在の標高は845m。砥用が120mだったので、すでに725mも上ったことになる。道路の状況が良いのでそんなに上まで来たことに気が付かなかったが、植林の切れ目から空が見えるところに来ると、雲の底に近づいたことがわかる。

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スイッチバックしてどんどん高度を上げる

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雲底が近づき

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雲の中に入ってしまった

 11:34に標高1100mの二本杉展望所に到着した。残念ながら雲の中にいるため眺望はなし。

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二本杉展望所

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雲の中だった

 昼食を予定していた東山(とうやま)本店には11:44に到着した。ここでは赤鶏そばと赤鶏の串焼きを食べて、サツマイモの天ぷらをおやつに購入して12:35に行動再開した。

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東山本店

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赤鶏そば

 東山本店から先は五家荘のエリアになる。そしてここから八代市に入る。国道445号線は再び片側1車線の立派な舗装に変わる。道路の脇には紅葉の始まったカエデがみえる。ここは標高1000m。紅葉が早い。

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ふたたび立派な国道に

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カエデの紅葉が始まる

 2kmほどで国道を右に折れ、大金峰(だいきんぽう、おおがなみね、とも)の登山口に入る。10分ほど舗装路を歩き、登山道の木道を登り始める。整備状況は良好。と思ったら、しばらく道が流された区間があった。しかしそれもすぐに終わり、ふたたび快適な山道となる。

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国道445号線から大金峰の登山口に向かう

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登山道は整備されていた

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若干の荒廃区間

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すぐに心地よい山道に変わる

 大金峰の登山道は最近草刈りが行われたよう。新鮮なササの香りが残っている。1時間ほど歩き、13:56に標高1396mの大金峰の頂上に到着した。残念ながら山頂近くまで植林がなされているため眺望はなし。立派な名前の山なので、どんな眺望があるかと期待していただけに残念。

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登山道は最近手入れされたよう

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大金峰の頂上はちょっとガッカリ

 大金峰からは小金峰に向かう稜線の道を歩く。30分ほどで小金峰への分岐点に到着。標高は1320m。稜線の道はほとんどアップダウンがなく、整備状況も良好でとても快適だった。ここでは小金峰のピークを左に眺めながら、九州自然歩道のコースに従って、尾根伝いに高度を下げていく攻(せめる)登山口に向かう。正面には保口岳が見える。

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大金峰から小金峰への連絡路も整備状態良好

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小金峰

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保口岳

 攻登山口はきれいに舗装された林道との交差部分。ここで小休止の後、尾根道を下って攻集落に向かう。ここが今回初めての悪路で、山道はほとんど見えないが、かろうじてテープを頼りに先に進み、40分ほどで300mほどの標高差を下り終えた。

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攻登山口

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攻集落までの尾根道が若干の悪路

 攻には広い広場があり、ここからは概ね歩きやすい舗装路となる。自動車はまったく通らないので気にする必要はない。攻集落には2軒のポツンと一軒家があったが、すでに居住者はいないようだった。

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攻集落の広い草地

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ポツンと一軒家

 何回かスイッチバックをして高度を下げ、西の岩川に架かった攻橋(せめばし)を越え、対岸に渡る。ここから4kmほどで栴檀轟(せんだんとどろ)の滝。道路の下を流れる西の岩川は、山から流れ込む沢の水を集め、どんどん水量が多くなる。

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スイッチバックして高度を下げる

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攻橋を渡って対岸に

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西の岩川の水量が増えてくる

 17:20に栴檀轟の滝に到着した。道路の状況は良好なのだが、少し疲れてきたためスピードが出ない。明るいうちに有名な栴檀轟の滝に着くことができてよかった。落差が70mほどもある大きな滝で、下から眺めていると水しぶきで身体がだんだん湿ってくる。滝の音も轟の名にふさわしい。滝の正面に設置してある橋の上からゆっくり観察し、先に進んだ。

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落差70mの栴檀轟の滝

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橋から眺める

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まだ水しぶきを感じる

 だんだん日が落ちてきた。深い谷は暗くなるのが早い。しかも、街の明かりがないため、日が落ちたら歩くのは困難になる。栴檀轟の滝から30分ほど歩いたところで民宿の看板があったため、立ち寄ってみたが電気がついていない。

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日が落ちるのも、暗くなるのも早い

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民宿は休業のよう

 さらに先に進み、五家荘の集落を形成する仁田尾にある左座家という古民家の民宿を尋ねるが、水害のため施設が被害を受けて現在は宿泊を受けていないとのこと。やむなく18:30まで歩き、ようやく顔を出した月明かりでテントの設置を開始した。 

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左座家

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平地を探してさらに進む

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2020年9月26日 九州自然歩道 54日目 熊本県下益城郡美里町砥用~八代市泉町仁田尾(五家荘) 曇り 気温25/9 距離30.4km 行動時間10:50 平均速度3.3km/h 49924歩

往路交通:

熊本市内前泊 桜町BT産交バス6:45-砥用学校前7:58

九州自然歩道 52日目 平家由来の内大臣峡から町に下る 熊本県上益城郡山都町内大臣峡~下益城郡美里町砥用 2020年9月22日

 今朝は内大臣峡(ないだいじんきょう)にある民宿、平家の湯で5:00に目を覚ました。せせらぎの音が耳に心地よい。部屋の中に干しておいたテントや寝袋をたたみ、7:00から川に面した部屋で、質素だが心のこもった朝食を摂る。朝食の間には火鉢が用意してあった。部屋に戻って荷物を調え、8:00に行動を開始した。

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部屋にはすでに火鉢が用意

 内大臣川にかかるつり橋を渡って水力発電所の前を通過。内大臣峡と美里町をつなぐ県道153号線は狭い舗装路で、離合はできそうもない。交通は少ないのでさして問題はなさそうだが。川を挟んだ正面にはお世話になった平家の湯と、その向こうには内大臣水力発電所が見える。さらに振り返ると内大臣峡の深い谷が見える。800年以上前にこの地に逃亡してきた平家の落人は、舗装路もないところを大変だったろうなと思いながら先に進む。

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吊り橋を渡って県道に戻る

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県道から川を挟んだ向こう岸には平家の湯と、左奥に水力発電

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内大臣峡の谷は深い

 内大臣峡の川沿いの道から、県道153号線はどんどん高度を上げていく。内大臣川は緑川と名前を変え、下流の方にりっぱなアーチ橋の内大臣橋が見えてきた。内大臣橋の横の斜面には大規模な崩落の跡。その際に山から転げ落ちたのであろうか、巨大な石が河原に鎮座している。

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下流方向に内大臣橋が見えてきた

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橋の横の崩落地からは巨大な石が2つ転がり落ちている

 土砂が流れ込んだ沢で治水ダムの工事をしている現場を眺めていると、工事現場からヒゲのおじさんが走ってきて声をかけられた。「山登りか?毎日山に登れる仕事があるけど、どうや。にいちゃん」と。重い荷物を担いで山を登っている有望な人材と思われたよう。「うちは元請けだから日当はいいぞ」と言われて少し気持ちがぐらついたが、丁寧にお断りして先に進んだ。

 8:55に内大臣橋のたもとに到着した。1963年に完成した、当時は東洋一のアーチ橋だったそう。橋長は199.5mで、水面までの高さは86.7mもあり、眺望は最高。バンジージャンプをしたら気持ちがよさそう。今回は飛び降りずに、反対側まで渡って引き返してきた。

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完成当時東洋一のアーチ橋だった内大臣

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川はずいぶん下を流れる

 県道153号線は内大臣橋からさらにスイッチバックを繰り返して高度を上げる。内大臣の地名の由来になった平家の落人の小松内大臣重盛が住居を構えた内大臣集落への林道はここで分岐する。上流に目をやると立派な斜張橋の鮎の瀬橋が見える。ここで道路わきのお地蔵さんの周囲を掃除している女性がいた。挨拶を交わし、お地蔵さんの由来や、昨日泊まった民宿の平家の湯のご主人の話などを伺う。

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内大臣林道と分岐する

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谷の向こうに見えるのが鮎の瀬橋の斜張橋

 さらにスイッチバックを繰り返し、高度を上げると内大臣橋はずいぶん下に見えるようになった。ここには出野という小さな集落があり、白糸第3小学校の跡地が現在は高校の校舎に使われていた。内大臣橋を過ぎたところから少し交通量が増えてきたが、それでも10分に1台通るかどうかぐらい。自動車のエンジン音は静かな山中ではずいぶん遠くから聞こえてくるので、自動車を気にせずに快適に歩くことができる。

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内大臣橋はずいぶん下の方に

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旧白糸第3小学校

 峠のトンネルを2つ抜け、10:00に屋敷集落、11:15に下福良集落を通過した。いずれも山間の小さな集落であるが、田んぼはきれいに整備されている。11:41に夏水集落に到着したところで、本日はじめての自販機を見つけた。次はいつ飲料水が手に入るか分からない。ここで荷物を下ろして小休止とした。

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 さらに県道153号線を先に進み、12:23に郵便局のある藤木集落を通過した。道路脇の公孫樹の木から、熟れた銀杏が道端に転がっていた。

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 12:46に県道153号線と緑川ダムとの分岐に到着した。九州自然歩道の本線はそのまま緑川南岸の県道153号線を進むが、そうすると緑川ダムや霊台橋を見ることができない。せっかくなので少し遠回りとなるが、トンネルを抜けてダムの堰堤に出て、緑川の北岸に渡ることにした。

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緑川ダム

 13:05に緑川ダムに到着。満々と水を湛えたダム湖からは放水が行われていた。ダム湖のほとりで、飲料水を飲みながらナッツの昼食とした。

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ダム湖が広がる

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現在放水中

 30分ほど休憩して、霊台橋に向かう。公園の横を通り抜け、緑川の北岸の道を進む。しばらくすると船津ダムの横を通り抜け、国道218号線に出た。交通量はそこそこ多い。今日はほぼ1日、自動車のほとんど通らない舗装路の真ん中を歩いてばかりだったので、車の音が気になる。

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緑川北岸の道を進む

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船津ダム 立ち入り禁止

 14:15に霊台橋に到着。1847年に造られた、単一アーチ式の石橋としては日本最大のものとのこと。通潤橋に先んじること5年前に完成している。江戸末期にはこの地域に広い視野を持った人間が輩出していたのだなと感心しきり。

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霊台橋 歩いて渡ることができる

 しばらく国道を歩き、並行する市街地の中の道路に分かれ、騒音が少なくなってホッとする。国道218号線は途中で次の目的地の五家荘(ごかのしょう)に向かう国道445号線に分かれる。国道445号線の向かう先は、内大臣峡に勝るとも劣らぬ山深いエリア。平家の落人によって作られた久連子(くれこ)、椎原(しいばる)、葉木(はぎ)、仁田尾(にたお)、樅木(もみき)の5つの集落を併せて五家荘と呼ぶ。五家荘への分岐に進むと、九州自然歩道上の80km近くには公共交通機関がない。

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国道を離れて町に向かう

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次の目的地の五家荘はこの山を越えた15km先がようやく入口

 本日は国道445号線とは別れを告げて、砥用(ともち)の町に15:00に到着した。今日の行動はここまで。これからバスを乗り継いで福岡まで帰るのがもう一仕事。

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砥用の町で4日ぶりに商店を見た

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ここからバスで帰途に着く

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 2020年9月22日 九州自然歩道 53日目 熊本県上益城郡山都町内大臣峡~下益城郡美里町砥用 曇り 気温25/9 距離20.9km 行動時間7:03 平均速度3.1km/h 34823歩

復路交通:

砥用中央15:40産交バス-桜町BT17:03/熊本17:34九州新幹線みずほ610号-博多18:09

九州自然歩道 51日目 通潤橋から豊穣の地を歩く 熊本県上益城郡山都町笹原~山都町内大臣峡 2020年9月21日

 本日は標高500mの山都町笹原からのスタート。よく知られた通潤橋という江戸時代に造られた石造りのアーチ水路橋の取水口がここにある。水路の長さはおよそ6km。このあたりもずいぶん人里離れたところで、昨晩も近くでシカの鳴き声が何度も聞こえた。

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通潤用水円形分水

 昨夜は星空がとてもきれいで、星のない部分の漆黒があまりに黒く、見上げると空に吸い込まれそうなほどだった。明け方は放射冷却のせいか、半袖では耐えられないほどの寒さ。残念ながら電波が届かないので気温はわからない。寒さをこらえながら5:30に起床して、6:33に行動を開始した。

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 稲穂の揺れる田んぼを見守るような集落を過ぎる。このあたりは休耕田が少なく、よく手入れされている。川は集落よりもかなり下方を流れているので、通潤水路の恩恵を受けている可能性が高い。

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 7:12に国道218号線に合流。合流地点は聖橋という、山都町では最も古い石造りアーチ橋。立派な造りだが現在は使用されておらず、すぐ隣の国道には景観を損なわないように上手に橋を架けてある。国道は交通量が多く、歩くには適していない。歩道があるのがせめてもの救い。

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 7:40に道路沿いにファミリーマートがあったため、イートインでコーヒーとサンドイッチの朝食とした。イートインコーナーに電源があって感謝!野営地は電波なしだったので、ここでブログの更新を行う。来店者が、今の気温は10℃で寒いと電話していることから、野営地の朝はもっと寒かったのだろうなと納得。

 8:27にファミリーマートを出発して通潤用水に沿って通潤橋に向かう。この道は回り道になるのだがこれが正解。稲穂を実らせた田んぼが美しく、用水沿いに花を着けたヒガンバナが映えている。30分ほど台地の上を歩くと通潤橋が見えてきた。

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 通潤橋1854年に布田保之助を代表として建造された日本最大級のアーチ橋。上流の取水口から台地の上に水を送るためにサイホンの原理が応用されている。重機のない江戸末期にこれだけの工事ができたのは驚異的。通潤橋のある上益城町は2016年の熊本地震で被害を受けているが、現在は復旧を終えている。当地では布田保之助は神格化されている。

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 通潤橋からは20分ほど歩いた位置にある五老ヶ滝に向かう。ここは通潤橋下流にあたるところで、落差50mの豪快な滝を吊り橋から眺めることができる。

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 つり橋を渡り終えて地図を確認すると、九州自然歩道の本線の赤いラインは五老ヶ滝に沿って南東に伸びているにも関わらず、九州自然歩道の緑色の文字は通潤橋から真南に本線のラインなしで伸びている。こんなケースは初めてだ。ひょっとすると、五老ヶ滝沿いのコースは大雨で流されたため、やむなく南向きの県道をう回路というかショートカットとして採用したような気もする。迷いに迷って、昨日から山都町内藪漕ぎなしの実績を信頼して、10:20に五老ヶ滝沿いの九州自然歩道オリジナル墓穴を掘るかもしれないコースに歩を進めた。

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 つり橋から50mほど先に進んだところに九州自然歩道の標識があったが、標識の指した方向にはおそらくこの2、3か月は誰も歩いていないような雰囲気を漂わせる藪が見える。一瞬引き返そうかとも思ったが、地図を改めて見ると危険そうなルートは1km足らず。墓穴を掘る覚悟で先に進むことにした。

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 山都町の藪はやっぱり優しかった。たいした苦労はなく、顔面に蜘蛛の巣が4、5回貼りつくぐらいのことで藪をクリアすることができ、その先に拡がる棚田の中の道を心地よく歩くことができた。棚田の畔ではおじさんが草刈り機で畔の草取りをしている。挨拶をして通り過ぎると、「こん先は柵に電気ば流しよるけん」とわざわざ追いかけて教えてくれた。「はい、気を付けます」と返事をしたものの、気を付けようがなかった。九州自然歩道の行く手には、イノシシ除けの電気柵が水平に、30cmほどの間隔で背丈ほどの高さまで張り巡らされていて、脱走できない収容所のような状態だった。

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 通常はこのような時は人の手で開けられる部分がどこかにあるはず。ところが、右に進めども、左に進めどもそんなところがない。台地の末端にあたるこの圃場には、向こう側に行く理由はないため、ドアに使われる部分はなく、柵を突破するかそれとも1.5km戻るかの2択となった。

 行くしかない。イノシシ除けの電気柵は200Vである。まずはバックパックを外し、電気柵の向こう側に送っておいた。次いで、トレッキングポールを使って電気柵を上に引き上げ、柵の隙間からそろりそろりと匍匐前進で向こう側に進んだ。もう少しというところで、臀部が電気柵に触れた。銭湯にある電気風呂の10倍ぐらいの痛みが一瞬起きただけで、ズボンに穴が開くこともなく、無事に通過することができた。

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 電気柵の後は、200mぐらいで林道に出られるはずであるが、その先は道がまったく無くなっていた。やむなくGPSを頼りに、真っすぐ突き進んだ。こんな状況は南阿蘇外輪山で慣れている。最後は20mほどの崖。まっすぐ進めないので、巻いた。巻くとは通過可能なところまで迂回することを、登山用語でこういう。尻尾を巻くわけではない。ようやく20mの崖をクリアしたと思ったら、林道はすぐ先に見えるのに、またもや高さ1.5mの電気柵。こんどは300mほど迂回。尻尾を巻いた。1km足らずに1時間以上かかり、11:19に林道の米野橋に這う這うの体でたどりついた。墓穴を掘る覚悟で選択した道だが、実際に墓穴を掘ってしまった。

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 林道わきの木陰で肩で息をしながら休憩していると、白い軽トラックのおじさんが通りかかって話しかけられた。人の良さそうな林業のおじさん。杉の材木の値段は50年前から変わらないとぼやいている。イノシシの電気柵でお尻をやられたというと、大笑いされた。

 30分ほど楽しく話しをして行動再開。米内蔵の集落を通過し、11:56に10軒ほどの民家の集まる譲原集落を通過して、三差路を右折してスイッチバックして台地の上に向かう。傾斜はきついが、舗装路で路面の状態は良い。自動車は10分に1台通過するかどうかぐらいで歩きやすい。

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 しばらく進むと九州自然歩道の標識が唐突に現れ、しかも140度ぐらい地図上のルートとは違った方向を向いている。いま歩いている快適な舗装をそのまま行けば間違いなく九州自然歩道のオリジナルコースになる。一瞬だけ考えて、舗装路を進むことにした。ようやく学習したのである。

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突然反対向きの九州自然歩道の標識

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反対方向に怪しく登っていくルート

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選択した舗装路はこっち向き

 そのまま舗装路をしばらく歩き、台地の頂上近くの笠月に12:27に到着した。ここで立派な道路と交差するが、それは気にせずまっすぐ進む。12:33に白糸第一小学校の跡地を利用した山の都サテライトオフィスに到着した。自販機でもないかと訪ねてみたが、自販機はなく、誰もいない。玄関先で行動食の昼食を摂って休憩とした。

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サテライトオフィス

 サテライトオフィスの先は左折して県道180号線南田内大臣線に入る。今日の目標は内大臣内大臣は平家の落人の内大臣から付けられた地名のよう。この県道で九州自然歩道本線はショートカットコースと合流することになる。

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 棚田を眺めながら、わずかにアップダウンを繰り返して台地の上を進んでいく。1時間近く、自動車のほとんど通らない県道をのんびりと歩いた。

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 相藤寺という小さな集落を抜けた後は下りになる。正面には高い山が見え、中腹をスイッチバックしながら登っていく林道が見える。手掘りのような白藤第2トンネルと白藤第1トンネルを抜けると、地図では等高線15本(150m)以上の標高差があり、スイッチバック7回の道路が現れる。最上部から写真を撮ったが木に隠れて4回分しかスイッチバックが写らなかった。

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 7回のスイッチバックの末ににたどり着いた谷底を流れる川の名が内大臣川。水量の豊富な渓流である。地図では500mぐらい上流に行くとキャンプ場があるので行ってみた。おしゃれな斜張橋を渡り、しばらく進むと猿が城キャンプ場に到着した。入り口近くの道路がわずかに崩落しているためか、管理棟には人がおらず、営業していないようだった。

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 仕方がないので500mほど下流にある平家の湯という、これまた風情のありそうな温泉に行ってみることにした。電話をかけてみると、立ち寄り湯はないけれども料理だけならば出せるというので、とりあえず平家の湯に向かった。

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 内大臣川に架かるつり橋を渡り、内大臣水力発電所の脇の狭い道を進むと見えたのが平家の湯。こぢんまりとした川魚料理の店で、民宿もやっているようだった。看板はなく、秘湯感満載。料理を頼もうと思ったら、歩いてきたというとびっくりして、一部屋空いたから泊まっていくかと尋ねられた。渡りに船と、今日は15:27で行動終了し、平家の湯に浸かってゆっくりすることとした。

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2020年9月21日 九州自然歩道 52日目 熊本県上益城郡山都町笹原~山都町内大臣峡 晴れ 気温25/9 距離20.0km 行動時間8:44 平均速度2.6km/h 34158歩