九州自然歩道を週末に歩き倒す

目標は九州自然歩道の総延長2932km踏破。

九州自然歩道 52日目 平家由来の内大臣峡から町に下る 熊本県上益城郡山都町内大臣峡~下益城郡美里町砥用 2020年9月22日

 今朝は内大臣峡(ないだいじんきょう)にある民宿、平家の湯で5:00に目を覚ました。せせらぎの音が耳に心地よい。部屋の中に干しておいたテントや寝袋をたたみ、7:00から川に面した部屋で、質素だが心のこもった朝食を摂る。朝食の間には火鉢が用意してあった。部屋に戻って荷物を調え、8:00に行動を開始した。

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部屋にはすでに火鉢が用意

 内大臣川にかかるつり橋を渡って水力発電所の前を通過。内大臣峡と美里町をつなぐ県道153号線は狭い舗装路で、離合はできそうもない。交通は少ないのでさして問題はなさそうだが。川を挟んだ正面にはお世話になった平家の湯と、その向こうには内大臣水力発電所が見える。さらに振り返ると内大臣峡の深い谷が見える。800年以上前にこの地に逃亡してきた平家の落人は、舗装路もないところを大変だったろうなと思いながら先に進む。

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吊り橋を渡って県道に戻る

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県道から川を挟んだ向こう岸には平家の湯と、左奥に水力発電

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内大臣峡の谷は深い

 内大臣峡の川沿いの道から、県道153号線はどんどん高度を上げていく。内大臣川は緑川と名前を変え、下流の方にりっぱなアーチ橋の内大臣橋が見えてきた。内大臣橋の横の斜面には大規模な崩落の跡。その際に山から転げ落ちたのであろうか、巨大な石が河原に鎮座している。

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下流方向に内大臣橋が見えてきた

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橋の横の崩落地からは巨大な石が2つ転がり落ちている

 土砂が流れ込んだ沢で治水ダムの工事をしている現場を眺めていると、工事現場からヒゲのおじさんが走ってきて声をかけられた。「山登りか?毎日山に登れる仕事があるけど、どうや。にいちゃん」と。重い荷物を担いで山を登っている有望な人材と思われたよう。「うちは元請けだから日当はいいぞ」と言われて少し気持ちがぐらついたが、丁寧にお断りして先に進んだ。

 8:55に内大臣橋のたもとに到着した。1963年に完成した、当時は東洋一のアーチ橋だったそう。橋長は199.5mで、水面までの高さは86.7mもあり、眺望は最高。バンジージャンプをしたら気持ちがよさそう。今回は飛び降りずに、反対側まで渡って引き返してきた。

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完成当時東洋一のアーチ橋だった内大臣

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川はずいぶん下を流れる

 県道153号線は内大臣橋からさらにスイッチバックを繰り返して高度を上げる。内大臣の地名の由来になった平家の落人の小松内大臣重盛が住居を構えた内大臣集落への林道はここで分岐する。上流に目をやると立派な斜張橋の鮎の瀬橋が見える。ここで道路わきのお地蔵さんの周囲を掃除している女性がいた。挨拶を交わし、お地蔵さんの由来や、昨日泊まった民宿の平家の湯のご主人の話などを伺う。

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内大臣林道と分岐する

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谷の向こうに見えるのが鮎の瀬橋の斜張橋

 さらにスイッチバックを繰り返し、高度を上げると内大臣橋はずいぶん下に見えるようになった。ここには出野という小さな集落があり、白糸第3小学校の跡地が現在は高校の校舎に使われていた。内大臣橋を過ぎたところから少し交通量が増えてきたが、それでも10分に1台通るかどうかぐらい。自動車のエンジン音は静かな山中ではずいぶん遠くから聞こえてくるので、自動車を気にせずに快適に歩くことができる。

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内大臣橋はずいぶん下の方に

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旧白糸第3小学校

 峠のトンネルを2つ抜け、10:00に屋敷集落、11:15に下福良集落を通過した。いずれも山間の小さな集落であるが、田んぼはきれいに整備されている。11:41に夏水集落に到着したところで、本日はじめての自販機を見つけた。次はいつ飲料水が手に入るか分からない。ここで荷物を下ろして小休止とした。

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 さらに県道153号線を先に進み、12:23に郵便局のある藤木集落を通過した。道路脇の公孫樹の木から、熟れた銀杏が道端に転がっていた。

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 12:46に県道153号線と緑川ダムとの分岐に到着した。九州自然歩道の本線はそのまま緑川南岸の県道153号線を進むが、そうすると緑川ダムや霊台橋を見ることができない。せっかくなので少し遠回りとなるが、トンネルを抜けてダムの堰堤に出て、緑川の北岸に渡ることにした。

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緑川ダム

 13:05に緑川ダムに到着。満々と水を湛えたダム湖からは放水が行われていた。ダム湖のほとりで、飲料水を飲みながらナッツの昼食とした。

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ダム湖が広がる

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現在放水中

 30分ほど休憩して、霊台橋に向かう。公園の横を通り抜け、緑川の北岸の道を進む。しばらくすると船津ダムの横を通り抜け、国道218号線に出た。交通量はそこそこ多い。今日はほぼ1日、自動車のほとんど通らない舗装路の真ん中を歩いてばかりだったので、車の音が気になる。

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緑川北岸の道を進む

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船津ダム 立ち入り禁止

 14:15に霊台橋に到着。1847年に造られた、単一アーチ式の石橋としては日本最大のものとのこと。通潤橋に先んじること5年前に完成している。江戸末期にはこの地域に広い視野を持った人間が輩出していたのだなと感心しきり。

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霊台橋 歩いて渡ることができる

 しばらく国道を歩き、並行する市街地の中の道路に分かれ、騒音が少なくなってホッとする。国道218号線は途中で次の目的地の五家荘(ごかのしょう)に向かう国道445号線に分かれる。国道445号線の向かう先は、内大臣峡に勝るとも劣らぬ山深いエリア。平家の落人によって作られた久連子(くれこ)、椎原(しいばる)、葉木(はぎ)、仁田尾(にたお)、樅木(もみき)の5つの集落を併せて五家荘と呼ぶ。五家荘への分岐に進むと、九州自然歩道上の80km近くには公共交通機関がない。

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国道を離れて町に向かう

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次の目的地の五家荘はこの山を越えた15km先がようやく入口

 本日は国道445号線とは別れを告げて、砥用(ともち)の町に15:00に到着した。今日の行動はここまで。これからバスを乗り継いで福岡まで帰るのがもう一仕事。

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砥用の町で4日ぶりに商店を見た

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ここからバスで帰途に着く

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 2020年9月22日 九州自然歩道 53日目 熊本県上益城郡山都町内大臣峡~下益城郡美里町砥用 曇り 気温25/9 距離20.9km 行動時間7:03 平均速度3.1km/h 34823歩

復路交通:

砥用中央15:40産交バス-桜町BT17:03/熊本17:34九州新幹線みずほ610号-博多18:09