本日は豊後竹田駅近くのホテルで4:00に起床。熱いコーヒーを飲んでから5:00にホテルを出た。日の出は5:22となっているが、四方を山に囲まれた竹田はなかなか明るくならないようだ。駅に着いたときには駅舎はまだ暗い。ホームに上って入線してきた始発列車を迎えた頃に、ようやく空が薄紫色に変わりはじめた。
5:16に豊後竹田駅を出発した豊肥線の車内は乗客2名。定刻どおり5:23に朝地駅に到着し、YAMAPのコースを設定してから行動を開始した。
小賀川に架かる駅前のアーチ式石橋の朝地橋を渡り、国道57号線を陸橋で越える。朝地の町は眼下に広がる。
舗装された山道を登る。ここからのコースは何度も右左折を繰り返すので、地図をよく確かめる必要がある。標高300mほどの丘を歩いているときに日の出の光が差し込んできた。
6:04に石ケ原集落を歩いていると、男性がネットに囲まれた畑でスイカを収穫していた。挨拶を交わして話しを聞くと、昨晩、イノシシに収穫直前のスイカを半分近く食べられてしまったとのこと。畑の中にはスイカの赤い切れ端が散乱している。傷んでいない大きなスイカの玉を抱えて持ってきて、一つ持って行けという。数kgもあるスイカをザックに入れて持ち歩くわけにはいかない。丁重にお断りした。
趣味で自宅のために栽培している畑のようで、いろいろな作物が少量ずつ植えられている。ちょうどオクラは開花時期で、黄色い花を見ることができた。落花生は花が地面に着いたところで、これから実を付けるところだという。その部分を持ち上げて見せてくれた。
その他にも、トウガラシ、カラーピーマン、八朔、白鳳(モモ)。モモはもいだばかりのものを、袋付きで一つ持って行けと手渡された。これはザックに入れておいた。
お礼を言って先に進む。ここから池在集落まではおよそ1kmが廃道で、足下がぬかるみ、藪漕ぎを強いられるところも散在した。九州自然歩道はこういった集落と集落をつなぐなんと言うことはない区間が一番怪しい。生活路として使われなくなると、非舗装路はあっというまに廃道化してしまう。
しばらく蜘蛛の巣まみれになりながら泥の中を歩き、ようやく6:36にビニールハウスが見えたときはホッとした。池在からはコンクリート舗装路になる。集落の家にはノウゼンカヅラのオレンジ色の花が映える。土手にはキツネノカミソリのオレンジも見られる。
6:53に池田大原線分岐を直進する。ここで直交する新しい道の下をくぐる。この道は地図には記載されていない。
サヤノ木集落を通過して、7:05に白石集落から二車線の舗装路に合流して、左折して高度を上げていく。振り返ると祖母山が頂上を雲に隠れながらも見えてきた。
7:10に標識は立っていないものの、地図の上では山道に右折ポイントとなった。少しだけ迂回することになるが、並行して舗装路があり、山道に進むべきか迷う。雰囲気がいかにも廃道だからだ。
しかし、可及的にオリジナルコースを踏破というルールに従い廃道感の漂う山道に進む。しばらくすると右手に菩薩像だろうか、2体の仏像が現れた。優しい表情にホッとした。手を合わせて藪の中に進んだ。
藪漕ぎはほんのわずかで、すぐに落ち葉の積もった山道に出た。7:20には山道を抜けて舗装路に復帰した。
舗装路をさらに進み、7:30に標高500mほどの白石峠に到着した。振り返ると祖母山が頭を雲の上に出している。祖母山はこんな日に登りたかった。峠の頂上は舗装路で何もないが、ザックを下ろして小休止することにした。どうせ自動車は通らない。昨夜、買っておいた竹田名物の丸福の塩唐揚げを朝食に食べた。あっさりして美味しかった。
7:50に行動を再開した。峠を越えると1車線に変わり、舗装状態も劣化した。道路脇にはサルスベリの花が咲いている。カーブを歩いていると、急に正面から自動車がやってきてぶつかりそうになった。アウト-イン-アウトのコーナーリングをしてきた自動車だった。
まさかこんなところを人が歩いているとは思ってもみなかったのだろう。ちょうどそこには恐淵入口の標識。淵までしばらくありそうだったので行かなかったが、轢いてしまった人間を淵に放り込んだら見つからないような場所であることは確かだった。
8:10に標高599mの鳥屋(とや)集落を通過。ここから左折して山道に進む。しっかりしたコンクリート舗装路で、とくに問題はなかった。ここで本日はじめての九州自然歩道の標識を発見。かなり前に設置されたものと思われ、文字はほとんど読めず、カヅラが絡まっていた。
8:20に神角神社にお参りして先に進む。この先で舗装路に合流。ここも鳥屋の集落の一部のようで、法面の草はしっかり刈ってあり、きれいである。道端には紫陽花が植えられていたが、これも手入れの状態は良好。
8:32に標高629mの峠を通過。ここにも古い標識が設置してあった。その先には城山への登山口。ここには鳥屋城という山城があったよう。
9:02に放牧場の横を通過した。5、6頭の放牧牛がこちらをしげしげと眺めていた。柵が終わるところから左折して非舗装路に進む。
牧場横の道はメインテナンスの自動車が頻繁に通過するためか、轍がついており、歩きやすかった。その先の下り斜面は踏み跡がなく、迷いやすい。地図を見ながらゆっくりと歩を進め、9:12に国道442号線と交差する田の尻に到着した。
ここには把握できていないバス停があったため、時刻表をチェックしていると急に雨が降り出した。さいわい、バス停には屋根とベンチがあるので、ここでパンを食べながら小休止とした。
雨はなかなか止まなかったが、9:30に行動再開し、山越えの舗装路を進んだ。志屋の集落には牧草地が拡がる。のんびりとした風景の中を歩いているうちに雨は小降りとなってきた。
10:10に県道との合流地点に着いたときには、雨はすっかり止んで日が差してきた。道路脇にラジコンカーレース場があったため覗きに行ってみた。すでに廃業しているようだった。残念。
小休止の後に10:25に行動再開。県道から山道に右折する。山道の周囲の草は刈ってあり、最近、重機で整備した痕跡がある。怪しいなと思いながら進むと、太陽光発電所が建設されていた。最近の山はこんなパターンが多い。木材の搬出か太陽光である。
正面に久住を望む好立地であるが、まだまだ太陽光発電所を建てていくようだ。山道の脇には私道の道路使用に関する文書掲示が何カ所かに設置されている。太陽光発電の業者と軋轢でもあったかななどと考えながら先に進む。
10:40に山道から舗装路に入り、しだいに高度を下げていく。木々の間から長湯温泉の町が見えてきた。下りの斜面にもキツネノカミソリと思われるオレンジ色の花が咲いている。
11:05には長湯温泉の天満神社に到着。芹川に架かる橋を渡った向こうが長湯温泉の中心街のようだ。古くから続く旅館が多いよう。与謝野晶子と鉄幹の歌が刻まれた歌碑や、山頭火の句碑が道端に並んでいる。ぶらぶらと中心街を歩きながら、11:30にバス停のある道の駅ながゆ温泉に到着して行動終了とした。
大分駅行きのバスの時間は13:50で、あと2時間ほどもゆっくりできるため、町中を見物することにした。
まずは長湯温泉療養文化館御前湯という由緒正しげな温泉に立ち寄る。玄関前に飲泉場があったため、カップを出してテイスティング。茶色の水。鉄の匂いが強くて一口でギブアップ。
次に訪れたのはガニ湯。有名な温泉なのでご存じの方も多いと思うが、人間になって娘を嫁にしたいと願ったカニ(ガニ)の伝説のある温泉。有名な理由はこの伝説のためではなく、オープンエアーの温泉であるため。露天風呂というより、露出風呂といったほうがよいのか。そばにある橋の下で服を脱ぎ、衆人から丸見えの湯船に飛び込むのだ。無料なのだが、なかなか実行する人はいないようだった。私も遠慮しておいた。手を浸してみると、温度はやや低く、38℃を下回るぐらいだった。
最後に訪れたのはラムネ温泉。ここは32.3℃と湯温は低いものの、炭酸ガスの含有量が1300ppmと日本最高の数値を示す温泉。建物の設計は藤森照信。今日はここに浸かることにした。写真をお見せできないのが残念だが、魅惑的な建物の中に進むと、低温の高炭酸含有泉が1か所と、42℃から39℃ぐらいまで段階的に低くなる3つの温かい温泉が設置されていた。いずれもかけ流し。
汗まみれの服を脱いで、かけ湯をしてから高炭酸含有泉に浸かると、身体中の産毛に気泡がまとわりつく。それを手で拭うと、お湯の表面にジュッと発泡する。最初は寒く感じていたが、次第に慣れてきていつまでも浸かることができる。
ときどき温かい浴槽に浸かりに行っては、また低温の浴槽に戻る。そんな温泉を1時間ほど楽しんでから、13:50のコミュニティバスに乗って大分駅までの帰途に着いた。
九州自然歩道110日目 2021年7月25日 大分県豊後大野市朝地駅~竹田市直入町長湯温泉 曇りときどき雨 28/22℃ 行動距離16.9km 行動時間6:00 30109歩
復路:道の駅ながゆ温泉13:50コミュニティバス-大分駅8番乗り場15:30/要町16:02西鉄高速バスとよのくに号-博多BT18:40