九州自然歩道を週末に歩き倒す

目標は九州自然歩道の総延長2932km踏破。

九州自然歩道 43日目 思いのほか素敵な町だった玉名から山を越える 熊本県玉名市立願寺~和水町菊水 2020年8月16日

 今日は熊本県玉名市の立願寺温泉のホテルからのスタート。トレッキングに出ると、日の出の前に目が覚めてしまう。今日もそう。朝食は7:00からで、時間があるため昨日行っていない古い町並みが残るという、ホテルから2kmほどの高瀬裏川の街並みを見に行った。

 最初に謝っておこう、玉名ごめん。こんな素敵な街が福岡の近くにあったなんて知らなかった。古くからの菊池川の水運で栄えた町がそのまま残されていて、江戸時代にタイムスリップしたような気分。朝早くて誰もいない町を一人歩き満足。

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高瀬眼鏡橋

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 そのあとはホテルに戻り、がっつり朝食を食べて8:00に行動開始。市街地から30分ほどの蛇ケ谷公園から登山道に入る。この山は玉名市民に人気の山のようで、多くの登山客が行きかう。登山道の整備状態は良好で歩きやすい。玉名の市街地が眼下に広がる。

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玉名市郊外の蛇ケ谷公園

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ここから登山道に入る

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登山道からの眺めも良い

 10:10に丸山展望所(392m)に到着した。ここには屋根付きのベンチが整備してある。先週歩いていた二ノ岳、三ノ岳が正面に見える。日差しが強いが、登山道は適度に木々に囲まれており快適に歩くことができる。

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丸山展望所から眺める二ノ岳、三ノ岳

 丸山展望所からは、すこし急な木製の土留めの階段を上り、10:50に観音岳(473m)の頂上にたどり着いた。10名ほどの先客がいて、弁当を広げている人もいる。頂上は開けており、眺望は素晴らしい。ここで15分ほど休憩する。

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観音岳頂上

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頂上は開けている

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玉名市街地がきれいに見える

 ここからは稜線を進み、七峰台、荒尾展望台(470m)と景色の良いポイントを通過し、この山系でもっとも標高の高い筒ケ岳(501m)には11:50に到着した。ここからは雲仙も間近に見える。今日も雲仙の頂上は雲を纏っている。荒尾市にある三井グリーンランドの絶叫系のマシンもしっかり見える。ここは福岡市民もよく訪れるところ。

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七峰台からの眺め

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筒ケ岳の頂上

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雲仙

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三井グリーンランドの絶叫系マシンも見える

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 ここから先は傾斜の急な木製の階段の下りがいつまでも続く。反対方向から登っていたらさぞや大変だろうなと思うが、このあたりの登山者はほとんどいない。1時間ほどで舗装された林道にぶつかった。このあたりは植林された杉に囲まれていたが、すぐに道路の周囲の木々はなくなり、直射日光が差し込むようになる。帽子をかぶった頭の頭頂部付近がジリジリしてきた。

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急な下り道が続く

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林道に変わる

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舗装路に出る

 13:00に四つ原登山口に出てからは一般の舗装路になる。時折、数軒ごとに集まった集落が現れる。15分ほどで鬼王バス停の先を右折して交通量がそこそこある道路に入るが、歩道がない。晴れた日中は自動車が歩行者に気が付いてよけてくれるが、夕方や朝は心配なコースだ。

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 14:00に交通量の多い道路から中九州カントリークラブに向かう舗装路に入る。路面状態は良好だが、ずっと日陰がない。しばらく歩くと、山中に突然大きな工場が現れた。ここは廃棄物の処理場のよう。ここを過ぎると田園地帯に入る。

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山中に現れた処理工場

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 田園地帯から小さな川を渡り、右折して県道3号線を進む。ここは九州自動車道と並行した交通量の多い道路。しばらく進むと菊池川が見えてきた。橋を渡ると向こう側には九州自動車道の橋梁が見える。ここから2kmほどでインターチェンジがあり、福岡行きの高速バスのバス停がある。15:30に菊水インターチェンジの高速バス停に到着し、15:37発の冷房のしっかり効いたバスに揺られて福岡への帰途についた。

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県道3号線を進む

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菊池川を渡る 向こうの橋は九州自動車道

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2020年8月16日 九州自然歩道 43日目 熊本県玉名市立願寺~和水町菊水インターチェンジ 晴れ 気温36/26℃ 距離20.0km 行動時間7:38 平均速度3.3km/h 42038歩

復路交通:菊水インターチェンジ15:37高速バスひのくに号-博多バスターミナル17:53

九州自然歩道 42日目 越すに越されぬ田原坂 熊本県熊本市北区植木町田原坂駅~玉名市立願寺 2020年8月15日

 今週末の九州自然歩道トレッキングは西南戦争の激戦地として知られる熊本県田原坂から再開。

 歴史には疎いため、西南戦争の原因や経過がさっぱり分からない。大政奉還江戸城無血開城の中心的な役割を果たしたのが西郷隆盛だったのではないだろうか?それがどうして西南戦争では反乱軍の首領として官軍と戦うことになったのか?付け焼き刃で、西郷隆盛が明治政府から下野することになった明治6年政変や、士族の反乱の引き金を引くことになった明治9年廃刀令、西郷が鹿児島に設立した私学校に対する政府からの圧力、などの細切れの知識をおぼろげに頭に詰め込んだまま、定刻の8:13に鹿児島本線の列車は田原坂駅に到着した。

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 田原坂駅は山の斜面にへばりついたような形態の無人駅。1日の平均乗降客数は24人とのことで、この列車から降りたのは私一人。駅舎の中では、立派な角を持ったオスのカブトムシがあおむけになって暴れていたので、起こして記念撮影をしてあげた。

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 田原坂駅からは8:24に行動開始。数軒の家が並ぶ集落を線路に沿って進み、踏切まで来ると、撮り鉄と思われる方2名が機材の準備をしていた。田原坂踏切は緩いカーブが直線に変わる位置にあり、たしかにきれいに車両の撮影ができそう。ベテランの方が、後輩の指導をしているような図式。500mmの大きなレンズを使っている。撮り鉄の方たちは、撮影チャンスが一瞬しかないから、いい機材を使っている。運行再開したばかりのななつぼしの撮影かと思って尋ねると、古い415系の撮影とのこと。JR九州常磐線で運用されている機材だが、もうすぐ廃車になる可能性もあるとのことで、せっかくなので私も通過を見届けることにした。撮影風景を撮影させてもらったが、さすがに機材準備に手慣れている。私も通過する415系を1枚撮影してみたが、なかなか難しい。

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 踏切を超えて国道208号線をしばらく歩き、すぐに田原坂に向かう農道に右折する。農道に沿って梨畑が並んでいる。袋掛けをした梨がいくつもぶら下がっている。

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しばらく国道を歩く

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梨畑の農道に折れる

 農道を1kmほど歩くと、薩摩軍の墓地に到着した。開けた丘の上に立つ墓標の周囲はきれいに手入れがなされている。手を合わせて先に進む。官軍の墓地は、九州自然歩道から1kmほど外れた位置にあるよう。迷ったが、こちらにも立ち寄ることにした。官軍の墓地は広い駐車場があり、一人一人の墓標が並んでいる。薩摩軍と官軍の扱いが随分違うなと思いながらコースに戻る。

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薩摩軍の墓標

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官軍の墓地

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周囲にはメロンのハウス

 ここから田原坂公園までは1kmほどのはず。両側にメロンのハウスや梨畑の並ぶ舗装状態の良い道を進み、10:00に田原坂資料館に到着した。資料館の前には銃痕だらけの蔵が残っており、当時の戦闘の激しさがわかる。入場料を払って資料館を一通り見学した。資料館の正面には、ミカン畑の向こうに先週登った三ノ岳が青空の中にたおやかな姿を見せていた。

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田原坂資料館

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銃弾の跡の残る蔵

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資料館の正面はミカン畑と三ノ岳

 田原坂公園には西南戦争での死亡者を悼んで慰霊碑が建てられていた。官軍、薩摩軍に分けて名前が記されている。今日は終戦の日だったなと思いだす。

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西南戦争の慰霊塔

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官軍の戦没者名簿

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薩軍戦没者名簿

 慰霊碑の向こう側に田原坂の坂道が伸びている。ときおり車が通るだけの、ただの狭い田舎道。西南戦争の当時は、この道を通らなければ熊本城に大砲などの大型物資が運搬できない、唯一の輸送路として重要だったとのこと。今日の青空の下では、ミカン畑の中の穏やかな農道。

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これが田原坂

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田原坂の登り口

 田原坂を下りた先は木葉の集落。官軍病院跡の石柱を立てた寺院、正念寺がある。日本赤十字社の前身となる博愛社西南戦争の際に設立されたとのこと。木葉駅に11:30に到着し、駅の周辺の商業施設で12:20まで昼食休憩をとった。

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正念寺の山門

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木葉駅

 木葉から本日宿泊予定の玉名市の市街地までは10km弱。水田が一面に広がるコースで、その向こうには新幹線の高架が見える。振り返ると二ノ岳、三ノ岳が緑の絨毯の向こうに見える。平らな道で歩きやすいが、木陰がなく、脳がとろけてしまいそうなほど暑い。気温は35℃だが、体感はそれをはるかに超える。

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水田の向こうには新幹線が走る

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水田の向こうに二ノ岳、三ノ岳も見える

 菊池川を超えると玉名の市街地に入る。菊池川にかかる玉名大橋が見えてきてホッとした。菊池川の向こうには、明日の目標の丸山が見える。

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玉名大橋の向こうは市街地

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菊池川の向こうには丸山

 もうひと歩きしたところで温泉街が見えてきた。町の小路の中には古い映画の看板が掲げてある。はやくホテルにチェックインして、汗を流したい。15:00にホテルに続く最後の坂を登り始めた。

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2020年8月15日 九州自然歩道 42日目 熊本県熊本市北区植木町田原坂駅玉名市立願寺 晴れ 気温35/27℃ 距離18.0km 行動時間6:51 平均速度3.3km/h 28426歩

往路交通:別府(べふ)5:59福岡市営地下鉄七隈線薬院6:06/6:25西鉄天神大牟田線大牟田7:29/7:39JR鹿児島本線田原坂8:13

九州自然歩道 41日目 武蔵の悟りの地から西南戦争の激戦地へ 熊本市西区岩戸観音~熊本市北区植木町田原坂 2020年8月10日

 朝、テントから出たときに気が付いた。岩戸観音宮本武蔵像もコロナ対策に取り組んでいた。武蔵に見守られながらテントの撤収を行い、7:02に行動を開始した。

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 最初に谷を下って向かったのは雲巌寺宮本武蔵ゆかりの寺院で、五輪書は武蔵がここの霊厳洞に籠って標したとされている。また五百羅漢も見事。いくつかの仏像は首が落ちているが、朝の挨拶を交わした住職さんに聞くと、廃仏毀釈運動で破壊されたとのこと。残念なことだ。

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霊厳洞

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この中に武蔵が籠もったとされる

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五百羅漢

 天気予報では曇りのち雨となっているが、今のところ天気は良い。最初の目標の二ノ岳の緑が青空に映える。南向きの二ノ岳の麓にはミカン畑が広がり、一ノ岳(金峰山)の北向きの斜面には棚田が広がっている。

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 二ノ岳の麓の面木集落には森の駅という九州自然歩道にちなんだ施設がある。ここに8:18に到着した。開館は9:00なので、外のウッドデッキでノートPCの電源を入れる。昨夜のテントの中はあまりの暑さでブログ更新の作業ができなかったため、1時間ぐらいかけて昨日分の原稿作成と写真整理を行った。その後は、クラッカーの朝食とした。

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森の駅

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宮本武蔵の木刀の正規レプリカが展示してある

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五輪書

 10:00に森の駅を出発し、1kmほど先の野出集落との分岐には10:20に到着。ここまでは立派な舗装路で、交通量もそこそこにある。この分岐は50mほどの間に8本の道路の交差するところで、九州自然歩道がどちらに進んでいるのか分かりにくい。地図とコンパスを参照して進み始めたが、300mほど進んだところでコースを誤ったことに気がつき引き返し始めた。そのとき坂の下の方からトレイルランの方が颯爽と走ってきた。トレラン氏に聞くと、この道が二ノ岳の登山道に向かうのは間違いないとのこと。ホッとして一緒に歩き始めた。5本指のシューズを履いて、ハイドレーションのチューブが見える。いかにも早そうだが、しばらく一緒に付き合って歩いてもらう。九州自然歩道を歩いているときに同行者がいるのは始めて。次の目標の山など話が弾む。

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二ノ岳に向かって歩く

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二ノ岳登山口

 11:10に二ノ岳登山口に到着した頃から雨が降り出した。トレラン氏とはここで別れ、整備状況のよい二ノ岳の登山道をゆっくりと歩き始めた。時折強く雨が降ったり、日が差し込んできたり、めまぐるしく天気が変わる。二ノ岳(685m)の頂上には12:10に到着した。頂上は小さな祠が設置された草地。西の有明海と北の三ノ岳の方向に眺望がひらける。西の空が黒く見えるので、少し先を急ぐ。

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二ノ岳登山道は整備状況良好

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二ノ岳山頂

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西に有明海を望む

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北には次の目標の三ノ岳

 二ノ岳から三ノ岳への道も整備状況は良好。山道の両側には針葉樹と、ときおり広葉樹が広がり、有明海の方向から風が吹き心地よい。三ノ岳への鞍部から頂上に続く道が少しだけ傾斜のきついところがあったが、なんなく13:13に三ノ岳(681m)に到着。ここも眺望は良好。頂上は台風のような風が吹くが、汗まみれの身体にはかえって気持ちがよい。ここでは行動食をとりながら休憩。

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三ノ岳頂上

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熊本の市街も見える

 13:30に三ノ岳の頂上から行動再開。15分ほどで三ノ岳神社を通過したあとは、舗装された林道に変わる。このあたりは木材の伐採や間伐を盛んにしているよう。地図に明記されていない道もいくつかあり、九州自然歩道の標識はほとんど見当たらないので、道を間違えないように注意する必要がある。

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間伐された森の中を進む

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材木が集積されたところも

 14:11に林道から分岐して柑橘畑の中の道に変わる。ここからはずーっと柑橘畑の中を歩く。見事だ。できることならば、ミカンの花の時期か、柑橘が黄色く色づく頃に歩きたかった。このルートはもう一度歩きたいコースのリストに収載することにした。

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ミカン畑の中をひたすら進む

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天気が悪いのが残念

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それでも素晴らしい眺め

 ミカン畑や、ときおり現れる西南の役の史跡をたどりながら、15:55に半高山(294m、はんこうやま)に到着した。この山は三ノ岳の半分の高さということで半高山と呼ばれるようになったとのこと。山を挟んだ向かい側の吉次峠(きちじとうげ)とともに、西南の役の激戦地として知られる。しかし、この西南の役という内戦の原因や目的がよく分からない。今度は少し予習してから来ることにしよう。

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半高山

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半高山の頂上から田原坂を臨む

 半高山からJR田原坂駅までは地図上では3kmほど。17時ぐらいにはJRに乗って帰途に着くことができるかなと思ったら、ここからがたいへんだった。半高山の北の斜面の一面のミカン畑の中を気持ちよく進んでいったが、九州自然歩道の標識はほとんどないため、地図を見ながら慎重に歩を進める。ようやく標識があったと思ったら五叉路のどこに向いているのか分からない。ミカン畑の迷路の中を彷徨い、コースに復帰できたと思ったら完全に道がなくなっていたり、イノシシ防止の電気柵やフェンスで先に進めなかったり、道の先が断崖だったりで、柑橘畑脱出には1時間以上を要した。

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だいたいこんな道

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怪しい五叉路の標識が悪夢の始まり

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突然道がなくなったり

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どう頑張っても進めない崖だったり

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赤が本来の九州自然歩道のコースだが青のように悪戦苦闘して進んだ

 17:45に田原坂駅にようやくたどりつき、18:07の鹿児島本線で帰途に着いた。

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田原坂駅は山裾に張り付いたような無人

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2020年8月10日 九州自然歩道 41日目 熊本市西区岩戸観音熊本市北区植木町田原坂 曇りのち雨 気温32/27℃ 距離23.3km 行動時間10:57 平均速度2.8km/h 45362歩

復路交通:田原坂18:07JR鹿児島本線大牟田18:38/18:53西鉄天神大牟田線西鉄福岡天神19:55

九州自然歩道 40日目 金峰山を登りながらこう考えた。とかく人の世は住みにくい。 熊本県宇土市本町~熊本市西区岩戸観音 2020年8月9日

 7:35に清々しい気分でホテルを出発した。昨日宿泊したホテルは正解だった。小さなビジネスホテルだが、清掃が行き届き、朝食も美味しく、とても居心地が良かった。宣伝を頼まれたわけではないが、応援したくなるような小さなホテル、こめや旅館。宇土市街はこれと言って見るものはあまりないのだが、街の中のホッコリとした風景が心に残る。

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こめや旅館 心地よいホテルでした

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 河口が近い市街には水路が多い。海抜は2mとの案内がある。宇土市が面した有明海は干満の差が大きいことで知られるが、防潮堤が何か所も設置してある。

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JR三角線を超える

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街中に防潮堤がある

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 8:50に宇土市熊本市を隔てる緑川に架かった平木橋を渡り、熊本市に入る。正面には本日の目標の金峰山と、その隣には二ノ岳が見える。

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木橋を渡って緑川を超えると熊本市に入る

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正面に見えるのが金峰山で隣が二ノ岳

 熊本も米どころで知られる。緑川の河口の周囲は穀倉地帯で、一面の水田が広がる。稲の成長の具合を見ると、茎が太く、がっしりと大地をつかんでいるが、まだ穂は出していない。先月の天草の稲の成長がどれだけ早いかよくわかる。この辺りは平らな土地ばかりで木陰がなく、喉が渇く。たまらず熊本を中心に弁当屋のチェーンを展開するひらいの店内に入り、アイスコーヒーを注文し、イートインコーナーで休憩をする。

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稲はまだ穂をつけていない

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クリークが縦横に走る

 11:10には、熊本市南区の城山ゆめタウンに到着し、店内の冷房でクールダウンしながら、昼食休憩。12:03に行動再開した。

 城山にある高橋稲荷の傍を通過し、井芹川に沿って北上する。太陽が頭の上から照りつける。13:15に登坂橋から西に折れて、金峰山の登山口に入る。住宅地を抜けて、少しづつ高度を上げていく。熊本の市街地が下に見えてきた。金峰山の登山道には草枕の道の案内表示がある。ここは夏目漱石ゆかりの道だ。旧制五校(現熊本大学)に奉職したことがある漱石には、この地にちなんだ作品がいくつかある。

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城山の高橋稲荷

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太陽は頭のてっぺんから照りつける

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金峰山登山道の標識

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熊本の街が眼下に広がってくる

 14:20にバスの終着点となる荒尾橋に到着。自販機で清涼飲料水を購入してしばし休憩。さらに30分ほど舗装路を歩くと、鎌研坂の標示があり、舗装路から山道に分かれる。ここが漱石の「草枕」の冒頭の「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」の山路だという。美しい文章だなあ。青空文庫で確認しながら書いたが、高校1年生の時に読んでから忘れられない。しかしこの文章の意味がわかってきたのはその後20年以上経ってから。今回は迷わず鎌研坂を選択して登り始めた。

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草枕の道

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舗装路を歩き進む

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鎌研坂の入り口

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鎌研坂は落ち葉の積もった幅の広い山路

 ほんの10分ほどで鎌研坂の山路は終わってしまい、再び舗装路に出る。そこから10分ほど登ると、これも草枕に登場する峠の茶屋があらわれる。漱石の頃の峠の茶屋はすでに解体され、看板しか残っていないようだが、茶屋を模した記念館が建てられている。内部をざっと見学してから、その下の駐車場にある甘味処で名物の揚げ饅頭とイチゴ氷を頂く。

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峠の茶屋のレプリカ

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揚げ饅頭のおやつ

 16:27に大将陣の登山口に到着した。ここには休憩施設がある。下山したばかりの地元の男性にどの登山道から登ったらよいか尋ねると、「ギャンして登ったら、ギャン曲がっとっとでしょう。そこばギャン行ったらサルスベリっちゅう道に入っとですよ。」と非常に丁寧にサルスベリというお勧めルートを教えてくれる。ただし、熊本の言葉では方向を示す単語はギャンの一択で、上下左右などという方向指示語がないので若干理解が難しい。身振りを観察すればだいたい分かる。男性の勧めに従って、鳥居の前でお辞儀をしてから、直登ルートのサルスベリから頂上を目指す。男性の言葉の最初のギャンは真っすぐ、次のギャンは右、最後のギャンは上向きの急勾配を示すことが、登るにつれて理解できた。

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金峰山の山頂が近づいてきた

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大将陣の休憩所

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正面の鳥居から登り始める

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しばらく広い参道を歩き

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サルスベリの急坂に分岐する

 40分ほどかけてサルスベリルートを上り、17:15に金峰山(665m)の頂上に到着した。途中で数分間だけ大粒の雨が降ったこともあって、頂上は涼しい。東には熊本市街、西には有明海が一望できる素晴らしい眺望。雲仙の麓には積乱雲から雨が降っているのが見える。残念ながら頂上の金峰山神社は、熊本地震で崩壊してしまい、現在再建を目指しているところ。

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金峰山の頂上までわずか

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熊本市街が一望

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雲仙に降る雨まで見える

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頂上の金峰山神社は再建中

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登山回数の記録 1万回以上登った方も

 30分ほど金峰山の頂上でゆっくりした後、17:45に行動再開。西に向かって真っすぐ下山路を進み、18:30に柑橘畑の中のパイロット道路に出た。立派な農道の正面には明日の目標の二の岳が見える。周囲を柑橘畑に囲まれた心地よい農道を2kmほど歩き、宮本武蔵の像のある公園で本日の行動は終了とした。 

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金峰山の西の麓の斜面は一面の柑橘畑

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農道の北には二ノ岳

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宮本武蔵像の前で行動終了

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2020年8月9日 九州自然歩道 40日目 熊本県宇土市本町~熊本市西区岩戸観音 晴れ時々曇り 気温31/24℃ 距離28.4km 行動時間11:52 平均速度3.7km/h 44225歩

九州自然歩道 39日目 宇土半島をのんびり縦断 熊本県宇城市三角町石打ダム駅~宇土市本町 2020年8月8日

 今回の九州自然歩道トレッキングは、JR三角線石打ダム駅から再開。定刻通り8:05に三角線の列車は石打ダム駅に到着し、ワンマンのため最前方のドアから切符を手渡しながら下車した。出発する列車の前方に回って写真を撮りながら見送ったら、ポッと軽く汽笛を鳴らして挨拶を返してくれた。

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 前回は蚊の攻撃に悩まされたため、今回は虫よけスプレーを用意して準備万端。露出した部分にたっぷりとスプレーして、行動を開始した。駅の周囲には数戸の家屋があるのみ。商店はない。舗装された山道を進んで、8:30に石打ダムに到着した。

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虫よけスプレーと液体蚊取り線香 これで万全

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石打ダムに向かう山道

 ダム湖は緑の水を湛えた静かな水面。ユニークな形状をしたダム資料館が建てられている。残念ながら開館時間は9:00からのため、今回はパス。上流にさらに進むとすぐにダムの管理棟が見えてきた。この建物も面白い形。資料館とダムの管理棟の設計者は後で調べてみよう。

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石打ダム

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ダム資料館

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ダム管理棟

 ダムの上流の川は本当に小さな流れ。その流れの上流に向かって進むと柑橘系の畑が道の両側に拡がってきて、9:13に千房の集落に着いた。数戸の家があるだけだが、山の斜面には多くの柑橘の木が植えられている。

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柑橘の木に囲まれた千房の集落

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 さらに歩を進めると、比較的大きな林道に合流し、ここで椅子を出して小休止。気温は32℃まで上がり暑いため、木陰に入ると蚊がたくさん集まってくるが、皮膚の上にとまることはない。今日は安心して小休止することができる。道路の脇にはきれいな形の栗のイガが顔を覗かせる。

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広い林道に合流

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 舗装された林道を進み、9:47に大岳山への分岐部に出た。ここから右折して大岳山への道に入るが、道中には柑橘畑が広がる。柑橘畑の中を楽しく歩いていたところで、急にあたりが暗くなり、大粒の雨が降り出した。今日は予定よりもかなり速いペースで進んでいるため、エノキの木の下でしばらく休憩することとした。15分ほど雨宿りしていると、雨は小降りになってきたため、バックパックにカバーをつけて再び歩き始めた。歩き始めたところで、オオムラサキが1頭ひらりと舞っているのが見えた。

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大岳山が見えてきた

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柑橘畑の中を進む

 再び柑橘畑の中を進み、スイッチバックしながら高度を上げていくと、イノシシ除けの電線で先がふさがれ、道が途切れてしまった。地図を確認したが、この方向で間違いはない。思い切って藪の中に歩を進めていくと、木製のステップを付けた道が現れた。道に間違いがないことがわかり安心した。ここから先は、木製のステップのついた山道を進み、11:00に大岳山(477m)の山頂に無事に到着した。山頂に着いた頃には雨は上がっていた。残念ながら山頂付近は樹木が多く、ほとんど眺望はない。サーモスの中の冷たい水を飲みながら小休止して、稜線に沿って下り始めた。

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道が突然なくなった

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藪の向こうに再び道があらわれた

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大岳山山頂の神社

 稜線を下り始めると八代海が見え始めた。海が見えると嬉しくなる。さらに進むと山道は終わり、舗装路に出た。そこから1kmほど進み、12:06に県道58号宇土不知火線との合流地点に出た。ここからは整備状況の良好な県道を進むが、幸い自動車の通行はほとんどなく、快適に歩くことができた。

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大岳山から下り始めると八代海が見えてきた

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すっかり晴れてきた

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再び舗装路に出た

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県道に合流

 12:43に数戸の家の集まった網引の集落に着いた。ここには自動販売機があるのではと期待していたが、残念ながら見当たらず、橋の袂の木陰に折り畳み椅子を出しておにぎりと野菜スティックの昼食とした。川に下りて水に足をつけることができないかと道を探してみたが、どこも高さのある護岸工事が行われていて残念ながら川の水に手を触れることはできそうになかった。

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網引の集落

 13:00に行動再開し、標高400mを少し超えるぐらいの阿保峠に向かって歩き始めた。道路の状況はほぼ良好。舗装はしてあるが、ほとんど自動車は通行していないようで、落ち葉と砂利に覆われたところが多い。網引の集落がかなり下に見えてきたところで13:50に峠を越した。

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阿保峠への道

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だいぶ高度を上げてきた

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峠を越える

 峠の先の山間に貯水池があらわれた。ここでは数羽のカモが羽根を休めていた。餌付けしてあるようで、近づいても逃げない。ここからは道の向こうに三蔵の集落を見ながら先に進み、宇土の市街地が木々の間に見えてきた。

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阿保峠の先の貯水池

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カモがひなたぼっこ

 道路の標識に轟水源の標示が見えたので、道を折れて水源池に向かう。ここは名水として知られているところで、ぜひその水を飲んでみたかった。水源には15:07に到着した。ここには多くの人が集まり、ポリタンクに水を汲んでいる人たちもいた。サーモスに水を汲んで飲んでみたが美味しい。子供たちは水源の下の水溜りで水遊びをしていた。私も靴を脱いで、ズボンをたくし上げて水の中に足を浸けてみたが、非常に冷たい。気持ちがいいが、5分もすると足が痺れてくるほど冷たい。子供たちは水着で水を掛け合ったりしているが、とても真似はできそうにない。

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轟水源

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 轟水源で体を冷やしてから、再び猛暑の中を歩き始めた。15:50に西岡神社にお参りし、16:30には宇土城址の山の上から宇土の市街を眺めた。しかし、暑い。今日は町の中で、テントを張るところを見つけるのも大変そうだし、何より夜間も気温が下がらず気持ちよく眠ることはできそうにもないため、宇土城址からホテルの予約をして部屋を確保した。

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西岡神社

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宇土城址

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宇土城址から眺める宇土市街地

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明日の目標の金峰山

 17:00にはホテルにチェックインして、市街を散策して、たまにはきちんとした夕食を摂ることにした。宇土は小さいが歴史を大切にした、なかなか居心地の良い町だった。 

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宇土のシンボルの船場

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古い町並みも残る

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西念寺

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今日の晩御飯はちょっと豪華に

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2020年8月8日 九州自然歩道 39日目 熊本県宇城市三角町石打ダム駅宇土市本町 晴れ時々雨 気温32/26℃ 距離23.0km 行動時間8:49 平均速度2.8km/h 38909歩

往路交通:西新5:36福岡市営地下鉄-博多5:50/6:10九州新幹線つばめ307号-熊本7:00/7:19JR三角線-8:05石打ダム

九州自然歩道 38日目 三角の三角岳の三角点とはこれいかに 熊本県上天草市柴尾山~宇城市三角町石打ダム駅 2020年8月2日

 上天草市大矢野島の最北端にある柴尾山の中腹で目を覚ました。今朝は速攻ダッシュで撤収作業を行った。その理由は蚊の攻撃のためである。梅雨が明けて気温が上昇したここ何日かは、蚊の繁殖活動が旺盛なようで、ちょっとした茂みに入るととたんに蚊に襲われる。野営場所にも雲霞のごとく蚊が湧いてきて、片腕にいっぺんに10匹ほども吸血作業を行っている。このままでは貧血を起こすかもしれないと危惧するほどの勢いで蚊に襲われるため、たまらず最速での作業を行った。なんとなく、梅雨明けは蚊が多そうな気がしたので、ドラッグストアで虫よけスプレーなどを調達しようと思っていたのだが、うっかりして失念していた。

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岩谷の漁港 後方に見えるのが柴尾山

 6:35に行動を開始し、柴尾山を下りたところは岩谷の漁港。朝早くから釣りをする人で賑わっている。天草と宇土半島とを隔てる三角ノ瀬戸に沿って国道266号線を進み、天草五橋最後の1号橋に向かう。1号橋は橋長502mの天門橋。1966年に完成している。隣に見えるのは2018年に開通した天城橋。こちらは橋長463mで、自動車専用道となっている。天門橋には、狭いながらも歩道が設置されているため歩いて渡る。この海峡は大型船も通行するためか、海面からはかなり高く、景色が良い。

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左が天城橋、右が天門橋

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1号橋を渡る

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 1号橋を渡った後は三角の市街地に向かい、三角駅には8:05に到着した。三角駅はレトロな雰囲気の残された建築物。その向かいにあるのが三角フェリーターミナル。海のピラミッドの名前が付けられている。サザエのようならせん状の構造で、外部と内部の両方から屋上まで登ることができる。屋上部分からは天草の海が一望できる。海のピラミッドの前の芝生の上で、シリアルの朝ご飯を済ませた。

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三角駅

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フェリーターミナル

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内部もらせん構造

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屋上からの景色が良い

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ここでシリアル朝食

 朝ごはんの後はスーパーマーケットで水と食料品を購入して、三角岳の登山口に進む。9:25から登り始め、標高203mの展望場所の天翔台には10:07に到着した。山道はどういうこともない道なのだが、蚊の数がものすごい。ゆっくり歩いていると体中を刺されてしまうため、早いペースで、しかも両手を振り回しながら歩くため消耗が激しい。天翔台からは天草の島々がきれいに見えるが、しっかり眺める余裕がなかった。

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天翔台

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 三角岳の山頂にほど近い展望場所の竜雲台には10:52に到着した。ここは蚊が少なく、天門橋と天城橋を山上から眺めることができた。

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竜雲台からの眺め

 三角岳(407m)の頂上には11:35に到着した。ここは頂上付近に樹木が繁り、眺望はあまりよくない。三角岳(みすみだけ)の三角点(さんかくてん)は記念に撮影しておいた。ここで昼食を食べようと思っていたが、蚊が多いので断念。先に進むことにした。

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三角岳からの眺め

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三角岳の三角点

 三角岳から先は地図では少し北に進んだ後に、高度を下げながら254mピークを経由して高野山(262m)に向かうはずだが、標識はなく、またYamapのスマートホン用の地図アプリにはその山道が掲載されていない。こんな時は、ほとんど使われていない山道で、藪漕ぎに苦しめられることが多いので不安になる。恐る恐る先に進むが、積もった落ち葉の下に木のステップが見えるところがあり、道に間違いがないことはわかる。何度か道を間違えたが、その都度地図で方向を確認し、それほど悪路に苦しめられることなく、12:40に高野山に向かう舗装路に出ることができた。舗装路の両側には柑橘の畑が広がる。ここ三角はデコポンの有名な産地だ。

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少し進んだら道が見えてきた

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柑橘畑に出た

 高野山には13:00に到着した。NTTの通信施設が山頂に建てられているため、サービス用の舗装路が整備されている。眺めも良い。

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高野山山頂のNTT施設

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眺望も良好

 高野山から先は、またもやほとんど使われていないような山道に続いている。地図を確認すると600mほど先で林道に接続していることが分かる。この道を通らずに舗装路を引き返す手もあるかと思うが、誰も見ていないときにズルいことをできない性格のため、恐る恐る先に進む。このコースはしばらく誰も歩いていないようで、道は不鮮明で、倒れた木々や藪でときどき行く手を阻まれ、蜘蛛の巣にまみれることになる。しかし、悪路部分は400mほどで終わり、柑橘畑の中を進んで、舗装路に出ることができた。

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不穏な雰囲気の山道入り口

 しばらく舗装路を進むと、食と農の体験塾と看板を掲げた建物があり、営業中の看板が出ている。飲食店のような造りで、中では数人が飲食をしているので入っていったら、山登りの会の打ち上げのようだった。まあまあ座って飲みなさい食べなさいと、ピザやおにぎりを出してくれ、1時間近くお邪魔させてもらった。思いもよらぬ楽しい時間を過ごすことができた。

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柑橘畑

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食と農の体験塾

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飲食店かと入っていく

 ここから先は舗装路が続く。山中には柑橘畑が広がっている。ハウスやマルチ栽培の畑があるが、残念ながら品種がわからない。南向きの斜面の一角には、露地栽培の柑橘にもかかわらず、袋掛けしたものがある。袋の外からそっと触ってみると、他の木に比べると数倍の実の大きさになっている。徹底的に摘果をして選抜して育てているのかもしれない。

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柑橘畑が続く

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マルチ栽培畑もある

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柑橘ではあまり見ない袋掛け

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 柑橘畑から下り道に折れた後は一気に高度を下げ、民家が見えてきた。石打ダム駅も近いようだ。

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 線路を超え、先に駅が見えたときに、列車が近づく音が聞こえてきた。たぶん、前の駅を出て加速をし始めた音。耳が良いわけでも、山歩きで感覚が研ぎ澄まされたわけでもなく、たんに谷間に列車の音が響いて伝わってくるのと、蝉の声以外の雑音が全くないため数km先の音が聞こえる。ホームに上がったときにちょうど16:09の熊本行きの三角線の列車が入線してきた。来週は虫よけスプレー持参で戻ってくるぞと思いながら帰途についた。

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2020年8月2日 九州自然歩道 38日目 熊本県上天草市柴尾山~宇城市三角町石打ダム駅 晴れ 気温35/24 距離20.0km 行動時間9:31 平均速度3.1km/h 41151歩

復路交通:石打ダム16:09JR三角線-熊本16:56/17:40九州新幹線つばめ334号-博多18:43

九州自然歩道 37日目 歩いて渡る天草五橋 熊本県上天草市松島~上天草市柴尾山 2020年8月1日

 今週の九州自然歩道トレッキングは、熊本県上天草市松島からの再開。福岡から九州新幹線三角線と乗り継ぎ、三角からは船に乗って松島港に到着。そこから天草五橋の5号橋のたもとにある松島展望台から10:08にスタートした。

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スタート再開地点の松島展望台からの眺め

 まずは5号橋の松島橋を渡る。赤い橋が海の色に映える。橋の上からの景色は素晴らしい。橋長は177mで、すぐに渡り終える。

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5号橋

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5号橋からの眺め

 松島を横切ったあとは4号橋の前島橋。橋長は510mあり、大型の車が通るたびに上下に揺れるのがわかる。この橋からは大小さまざまな島が浮かぶ海をゆっくりと眺めながら歩くことができる。海は穏やかで、数艇のシーカヤックが航跡を残しながら進んでいるのが見える。4号橋からは、しばらく小さな島の上の道を歩くことになる。

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4号橋の全景 これは船から撮影したもの

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4号橋を歩く

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島に囲まれた穏やかな

 3号橋は中の橋と名付けられた361mのコンクリートの橋。ちょうど橋の下を水上スキーが通過していった。これも気持ちがよさそう。

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水上スキーが通過する3号橋

 2号橋は大矢野橋。白いアーチの橋で249m。これで天草五橋のうちの4つを歩いたことになる。

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2号橋

 ここから先は大矢野島の島内を歩くことになる。最後の1号橋は、大矢野島宇土半島の先端の三角とを繋ぐ橋で、大矢野島の中を20km以上歩かないといけない。ここまで、5号橋から2号橋まで、いずれも素晴らし眺めだったが、宇土半島から天草につながる唯一の道路である国道266号線のため、非常に交通量が多い。景色を眺めるために橋の右側から左の歩道に移ろうとするが、車がなかなか途切れずしばらく待たなくてはならない。

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 大矢野島に入ってから2kmほど進み、国道266号線から分かれて左折し、大矢野島の西の海岸線に沿って進むと、自動車の交通はほとんどなくなる。しばらく潮の匂いを楽しみながら、漁村をいくつか通過する。いずれも長閑な雰囲気。ちょうど干潮の時間のようで、港には船底を砂地の上に着けてしまっているものもある。正面に見えるきれいな三角形の高杢島は、干潮時は隣の樋合島と地続きになっているようだ。

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国道から離れて西の海岸線を進む

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干潮時に地続きになる高杢

 さらに海岸線を北上する。12:00になり、太陽が真上から照りつけてくる。気温は35℃。暑いが日陰がない。正面には頭に雲をかぶった雲仙が見えてきた。時折、エビの養殖場がさかんに水車を回しているのが見える。

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雲仙が正面に見える

 12:57に道の駅サンパール天草に到着した。向かい側に天草四郎ミュージアムがあるがこちらはパス。とりあえず、食堂で漬け丼を頂いた。デザートには濃厚なソフトクリームを食べて12:54に行動再開。今日は暑くて歩くのはつらいが、食事で元気が出た。

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天草四郎ミュージアム

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まずは腹ごしらえ

 さらに大矢野島の西の海岸線を北上する。野釜島が見えてきた。野釜島大橋の下をくぐり抜けて2kmほど進むと弓ヶ浜の海水浴場に出た。子供たちが泳いでいる。今日はここに行きたい温泉があったので、脇道に少しだけそれて温泉に向かった。弓ヶ浜温泉湯楽亭に到着したのは15:10。立ち寄り湯は14:00までと書いてあったので、入れなかったら宿泊してもいいやと思いフロントで尋ねると、わざわざ歩いてこられたのならば断われませんねと快く温泉に入湯させてくれた。この温泉は、場所が山中の鄙びたところにあるのに加え、夢のお告げに従って洞窟を掘ったら中から温泉が出てきたというところ。本当に手掘り感いっぱいの洞窟の中からお湯が沸き出ていた。鉄分が多いようで、赤いお湯。運よく楽しみにしていた秘湯が楽しめた。

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野釜島を通過

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弓ヶ浜

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弓ヶ浜温泉湯楽亭

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お湯の湧き出る洞窟

 1時間ほど温泉を堪能した後は、さらに歩を進める。せっかくさっぱりした後だが、すぐに汗まみれに変わってしまう。4kmほど海岸線に沿って進み、成合津のヨットハーバーの脇を進み、小さな山を越えると、きれいな海水浴場とその先に形の良い山が見えた。柴尾山(225m)だ。

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成合津のヨットハーバー

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柴尾山と書いてぞうやまと読ませる

 柴尾山の先の集落が岩谷。ここには食堂が数軒ありそうだ。18:37に食堂にたどりつき、あら炊き定食。なかなか美味。食堂では、明日のコーヒー用に水を分けてもらい、野営地を探しに柴尾山に引き返すことにした。

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2020年8月1日 九州自然歩道 37日目 熊本県上天草市松島~上天草市柴尾山 晴れ 気温35/24 距離24.5km 行動時間9:23 平均速度3.6km/h 40461歩

往路交通:西新6:35福岡市営地下鉄-博多6:49/7:01九州新幹線-熊本7:51/8:06JR三角線-三角8:58/9:15松島フェリー-松島港9:35