九州自然歩道を週末に歩き倒す

目標は九州自然歩道の総延長2932km踏破。

九州自然歩道 33日目 本渡瀬戸歩道橋を渡って上島に 熊本県天草市本渡~天草市栖本 2020年7月12日

 今日は天草市の中心地である本渡からの出発。昨夜は友人宅にお世話になり、6:00に起床。そのまま本渡瀬戸歩道橋まで友人も一緒に歩いてくれることになった。

 7:57に本渡の中心街にある家を出た。しばらくは国道324号線に並行する街中の道路を歩く。そういえばかつては街の中にこんな映画館があったな、と思うような映画館が未だに健在。友人の同級生が経営しているとのこと。16世紀はこの辺りはキリシタン文化の中心だったからか、なんとなく文化の香りがする。

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 2kmほど歩いて天草工業高校のグラウンドに到着した。やはりユニークな構造。正門の近くにはテトラポットを模したような建築物がある。これはあとで調べてみたら2016年竣工の木製のトイレ。さらに回り込むと、3階建ての校舎が屋上の一部を削るようにして、5階建ての校舎の吹き抜け部分を貫通している。3階建ての旧校舎の上に、5階建ての校舎を新築せざるを得ない理由があったのだろうか。3階建ての校舎は途中で切断して、円形の窓を強引に取り付けたようにも見える。六角鬼丈の設計の宗教施設にこんな窓があったなと連想する。実習棟の形状も見れば見るほどユニーク。これも菊竹清訓設計の都城市民会館に似ているような。

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これがトイレ!

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3階建ての校舎を5階建ての校舎がまたぐ

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この実習棟もユニーク

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参考までに六角鬼丈設計の金光教福岡高宮教会

 高校の横の上島と下島の間の狭い水路に渡されているのが本渡瀬戸歩道橋。1978年完成の橋長124.8mのトラス式(三角形の組み合わせ構造)の橋。現在、自動車は隣の天草瀬戸大橋という1974年完成の橋を通行しているが、この橋は船舶の航行を考慮して海面からの高さが17mあり、ループ橋となっているため、歩道はあるものの徒歩や自転車の通行には難渋する。このため、歩行者と自転車の専用の橋として別に本渡瀬戸歩道橋が建設されている。中央の58mの部分が可動式で、10mと17mの2段階に昇降できる。

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本渡瀬戸歩道橋

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天草瀬戸大橋 歩道もあるがこちらは主に自動車交通

 本渡瀬戸歩道橋に到着したのが8:30で、こんな早くに航行する船舶は少ないだろうなと思いながら歩いて渡ったそのとき、サイレンが鳴って橋の信号が赤に変わった。有明海方面から船がやってきた。可動部分にかけられたウィンチが回転を始め、10mの位置に固定された下部を船が白い航跡を残して過ぎ去っていった。

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サイレンが鳴って信号が赤に変わる

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10mと17mの2段階の昇降

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これで船舶が航行できる

 ここからは集落を抜けて山道に入る。道路脇の田んぼでは水稲が栽培されているが、7月12日の現在、すでに穂をつけている。福岡ではいま田植えをしているようなところもあるのに。友人曰く、これは二期作とのこと。二期作という単語は、中学校以来聞いていなかった。それも、人の口から現物を見ながらの二期作というリアルな単語を聞いたのは初めてで、とても新鮮に感じた。中学校の時はメコン川流域の話だったっけ、とか思いながら歩いたところで友人は自宅に戻ることにした。この先は一人で次の集落まで山歩きを楽しむこととなる。曇ってはいるが、雨は降っていない。

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稲にすでに穂が見られてびっくり

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山の上からもう一度本渡瀬戸歩道橋を振り返る

 山道を登ると畑の手入れをしている方に出会った。聞けば、作物のほとんどがイノシシに荒らされてしまったとのこと。次に会ったスイカの収穫の方も同じ事を言う。スイカ畑は、ネットと電気柵で防御したうえ、プラスティックの箱をかぶせてある。手間のかかることだ。

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イノシシに荒らされたキュウリ畑

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イカも被害に遭う

 さらに山道を登り、高度を上げる。南の八代海に面した斜面には柑橘系が植えられている。雲高が低くなり、周囲がガスに包まれてきた。

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 10:10に朝食を摂ることにした。今日の朝食はビスケットと紅茶。地図を見ると、上りはもう少しだけのようだ。最高地点は250m程度。道の状態も良好で、雨さえ降らなければ快適この上ない。

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 山道が車道と交差しながら少しずつ高度を上げていく。南向きの斜面には柑橘系の樹木が植えられている。スダチのような小さな実がたくさんついているがなんだろうか。

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 しばらく進むと、峠を越して谷に沿って下り始めた。山道は依然として舗装された快適な道路。自動車の通行は皆無。小さな集落が現れる。集落の外れにバナナのような植物が育っている。熱帯の国に来たような気がする。

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このあたりが峠になる

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袋掛けしたモモも植えられていた

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これはバナナ?

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見事に成長している水田

 しばらくゆっくりとした道を歩いていると栖本の町が見えてきた。タバコ畑では収穫をしているようだ。街の中には商店と食堂がいくつかある。次のトレッキングの再開地点がここになるので、補給が可能だと助かるなと思いながらもう少しだけ先に進む。

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栖本の町が見えてきた

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タバコの収穫

 海の近くに宗教施設のような建物があるので覗きに行ったら、天草市立栖本病院だった。このセンスはいかがなものだろうか。

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 12:33には本日の目標と定めていた栖本温泉かっぱの湯に到着した。これにて本日の行動終了。かっぱ温泉のトロトロのお湯に浸かって極楽極楽。

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かっぱの湯

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2020年7月12日 九州自然歩道 33日目 熊本県天草市本渡~天草市栖本 曇り 気温27/24 距離15.5km 行動時間4:59 平均速度3.5km/h 23667歩

 

九州自然歩道 32日目 天草で海の幸を堪能 長崎県南島原市口之津~熊本県天草市本渡 2020年7月11日

 今日のトレッキングは、口之津港フェリーターミナルに諫早からの島鉄バスが7:57に着いたところから始まる。本当は福岡を出てからここに至るまで、いくつかの試練があったのだが、長くなるので今回は置いておこう。

 口之津から対岸の天草までのフェリーの出航時刻は8:30。コロナ対策のため、通常の半分ほどに減便されている。ターミナルでフェリーの乗船券を購入して、出航10分前のアナウンスでフェリーに乗り込む。徒歩で乗船するのは一人だけだった。フェリーには自動車が8台積載されている。船室には10名ほどの乗客の方がテレビを見ている。船の名はフェリーくちのつで総トン数は548トン。島原と天草の間の海峡である早崎瀬戸は波が穏やかで、ほとんど揺れを感じないまま9:00に鬼池港に到着した。

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口之津鬼池間を繋ぐ島鉄フェリー

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口之津を後にする

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天草の鬼池はすぐそこ

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自動車と一緒に下船

 鬼池港ではさっそく天草四郎がお出迎え。雨は降ったり止んだりを繰り返しているため、レインコートの上だけを着けて歩き始めた。鬼池港からは国道324号線上が九州自然歩道となっている。歩道が分けられているため危険はないが、交通量は多い。しばらくは海沿いの道で景色がよい。1時間ほど歩いたところで雨脚が強くなったため、道路沿いの商店に入り、朝食用にカフェ・オ・レとサンドイッチを購入して店内で食べさせてもらう。ここでレインコートのズボンを着用し、ゲーターも装着した。

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鬼池港の天草四郎

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海岸線の近くを歩く 沖には亀島

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国道324号線を通るため交通量は多い

 ここから先はときおり前が見えないほどの大雨に晒される。国道を走る自動車から水しぶきが飛んでくる。11:00に佐伊津港を過ぎ、国道と離れる地点にコンビニがあったため、雨宿りと休憩を兼ねて入る。イートインコーナーでコーヒーを啜りながら雨が小降りになるのを待って11:30に行動再開。

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白砂のきれいな本渡海水浴場

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本渡の市街地に入る

 天草市内には大学の同級生がいるため連絡をとり、昼を一緒にすることとした。白砂がきれいな本渡海水浴場から本渡の市街地に向かい、12:46に同級生宅に到着した。昼食後は14:40から再度、九州自然歩道に復帰し、キリシタン墓地と天草キリシタン館に向かった。再び雨が強くなってきた。キリシタン墓地は繁華街のアーケードからすぐのところに入り口の看板がある。600mほど坂を登り、キリシタン墓地を経て、天草キリシタン館に到着した。

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本渡の中心地のアーケード

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ほどなくキリシタン館の看板が見える

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殉教者を悼んだ千人塚

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キリシタン墓地

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天草キリシタン

 雨が降りしきり、キリシタン館でゆっくりしている余裕がなかったため、次の目的地の十万山(239m)に向かうことにした。住宅地の中を縫うように進み、十万山の登り口にたどり着いた。登山道は舗装されているが、雨で濡れたアスファルトが滑りやすい。登山道の両側には木が生い茂っているため、雨はほとんど降り込まない。助かった。次第に雨脚が弱くなり、十万山の頂上に着いた頃にはほとんど雨は止んでいた。頂上に着いたのは16:47。しばらくすると同級生が自動車でやってきて、二人で展望台の上でコーヒーにすることにした。

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十万山への登山道

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頂上の展望台

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頂上からは本渡の市街地が一望できる

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今回は山コーヒーを二人分

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上島と下島の間の狭い水路に2本の橋が架かる

 コーヒーの後は、九州自然歩道に沿って亀川方面に下山した。苔のついた石段が雨に濡れて滑りやすく、1回派手に転んでしまった。その後は本渡の市街地に出て、十万山の頂上から眺めた可動式の昇降橋が気になって見に行った。ここも九州自然歩道のルート上。上天草島と下天草島との間の本渡瀬戸にかかる歩道専用の昇降橋。瀬戸を船舶が通過する際には中央部分が上がるようになっている。残念ながらこの日は橋が昇降するのを見ることはできなかったが。

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十万山からの下山路

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本渡瀬戸歩道橋

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昇降するところが見てみたい

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自動車はループ橋で往来する

 橋の袂にはちょっと風変わりな建物があったので見に行ってみた。天草工業高校だった。ちょうど学校関係者と思われる方が歩いていたので、兵舎のようなカマボコ型の建物が何か聞いてみたところ、実習棟とのこと。また、5階建ての校舎の吹き抜けに3階建ての校舎が嵌入する形のユニークな構造をしている。これは設計者や由来を調べてみないと。

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天草工業高校 左の建築物と建物の中央にコンクリート校舎が嵌入した建物が気になる

 工業高校の外観を見学した後は、2km離れた同級生の家まで歩き、18:57に到着。今晩は自宅にお世話になることにした。40年来の友人。つもる話がたくさんありそうだ。

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古い街並みを残す本渡市街地

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天草のホタウニ(赤ウニ) たまらん 醤油をつけると怒られる

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お造りはコチ、キンメダイ、イサキ、カンパチ、マグロホホ、マグロ頭頂、アジ、アオリイカ、タコ もう、たまらん

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2020年7月11日 九州自然歩道 33日目 長崎県南島原市口之津熊本県天草市本渡 雨 気温27/23℃ 距離21.7km(海上交通除く) 行動時間7:34 34246歩

九州自然歩道 31日目 長崎の締めくくりは柑橘の聖地 雲仙市小浜町諏訪の池~南島原市口之津 2020年7月5日

 5:30に周囲が明るくなって目が覚めた。諏訪の池キャンプ場は快適だった。夜中に何度か雨がパラついていたが、木の下にテントを設営していたため気にならなかった。洗面所で顔を洗って歯を磨き、テントを撤収して6:33に行動を開始した。

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諏訪の池キャンプ場

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 諏訪の池にはすでに多くの釣り人が集まっていた。池にボートを浮かべて釣りをしている人もいる。目の前で30cmほどのブラックバスを釣り上げ、リリースしている。

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トケイソウの花が咲いていた

 しばらくは諏訪の池に沿った舗装路を歩く。交通量は少なく、快適。今のところは曇りで、気温は上がらず、歩きやすい。

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 2kmほど進んだところで、舗装路から山道に入る。両側が畑で、見通しが良い。植えられているのはジャガイモだろうか。ところどころ踏み跡のない道があるが、だいたい歩きやすい。山の向こうに有明海が見える峠を越したところで雨が降り出したので、ザックにカバーだけ付けた。何度かスイッチバックを繰り返して坂を下り、小谷集落に着いた。

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正面に見えるのが鳳上山410m

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柑橘畑の地面にマルチシートが敷いてある

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 この集落は車がほとんど通らないようなので、道路の脇に椅子を出して、シリアルの朝食を食べ始めた。すると手に清掃道具を持った5、6人の女性が山の上の方から下りてきた。また、草刈り機のエンジン音も聞こえ始めた。今日はこのあたりの草刈りのようだ。

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シリアルの朝食

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重機での草取りも

 朝食を終えて、行動を再開する。しばらくはよく整備された舗装路を歩いたが、ほどなく脇の山道に九州自然歩道が分かれた。整備状況の悪い暗い道で、いやな予感がしたが、すぐに日当たりの良い道に変わりホッとした。この辺りは、山間部の奥の方まで水田が開墾されていた。作業中のおじさんに挨拶して、植え付けた品種を聞くとヒノヒカリとのこと。とても田植え機の入ることのできないような、奥まった、変形の田んぼなので、手植えだろうと思って尋ねると、小型の機械で植え付けたとのこと。人手がないので、維持は大変そうだ。

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舗装路から山道に下りていく

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狭い谷間を開墾した田んぼ 植え付けてあるのはヒノヒカリ

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どうやって田植え機を入れたのだろうか?

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田植えから1月ほど経過

 川沿いの道をさらに進み、9:40に山口集落に着いた。このあたりでだいたい7kmと、本日の行程の半分ぐらいを歩いたことにある。この集落にはどぶろく工房という造り酒屋があった。清酒は生産せず、どぶろくだけのよう。まったくお酒は飲まないが、珍しいので、小さな瓶があったら1本だけ買おうかと覗いたが、誰もいないようなので諦めた。

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どぶろく工房

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正面には愛宕山 291m

 山口から、しばらく舗装路を進むが、再び田んぼの中の道に分かれ、さらに山の中に入っていく。ちょうど口之津の北にある愛宕山の麓をなぞるようなコースを描いている。アップダウンはそれほどなく、周囲の景色を楽しみながら残りの数キロを進む。

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 残り2kmぐらいの地点で、口之津の港が見えてきた。道路の脇の民家で、大量のブラシのような物を洗っている人がいたので声をかけてみた。ブラシのような物は、メダカが卵を産み付ける支持体とのこと。見てみると、庭中にメダカの水槽が並べてある。大量に育てているのは、突然変異で色のついたメダカを掛け合わせて、新しい色のメダカを作るためとのこと。

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口之津の港が見えてきた

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黒いブラシ状のものに卵を産み付ける

 ゆっくりとした坂を下り、町の中に入った。交通量は多い。港に着いたところで、停泊しているフェリーに近づいてみると、フェリー乗り場は新しい建物に移動したとの看板がある。

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2008年の普賢岳火砕流の後に廃線になった島原鉄道の南部分の路盤が残る

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 200mほど先に、新築になったばかりのターミナルが見える。ちょうど、天草からのフェリーが入港してきた。フェリーが接岸するのを眺め、ターミナルに入ったのが11:35。これで九州自然歩道トレッキングの長崎県は終わりとなった。

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口之津フェリーターミナル

 ターミナルの中の食堂でランチを済ませた。まだ時間がたっぷりあるので、ここからは付録で、まずは以前から行きたかった果樹試験場(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 口之津カンキツ研究試験地)に行ってみることとした。ターミナルからはだいたい3kmほどの舗装路。ターミナル内には大型のコインロッカーがあるので、水と文庫本と財布だけサブザックに移し、バックパックはロッカーに入れて歩き始めた。果樹試験場についたのが13:02。古ぼけた建物だが、ここがデコポン発祥の地かと思うと感慨が深い。敷地の奥の方には、ビニールハウスが並び、山の上まで柑橘系などの緑が続いている。

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果樹研究所

 ここからさらに海に向かい、海岸沿いのアコウ群落を見物した。アコウとは、ガジュマルのように気根を出すイチジクの一種。このあたりのアコウは巨大で、天然記念物に指定されている。

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アコウの群生地

 さらに、瀬詰崎長崎鼻とめぐり、口之津の半島をぐるりと1周してしまった。瀬詰崎からは、次の目的地の天草がすぐ目の前に見える。頑張れば泳いで渡ることができそうなぐらい。次回の天草を楽しみにしている。

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目の前にはもう天草

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2020年7月5日 九州自然歩道 31日目 雲仙市小浜町 諏訪の池~南島原市口之津 曇りときどき雨 気温24/20 距離14.5km 行動時間5:02 平均速度4.0km/h 34516歩

九州自然歩道 30日目 雲仙地獄を堪能 雲仙市小浜町雲仙~雲仙市小浜町諏訪の池 2020年7月4日

 今日こそは九州自然歩道トレッキングを再開するぞと、張り切って4:20に起床した。5:30に家を出たが、200mほど進んだところで犬の散歩の人のマスクを見て、自分がマスクを忘れていることに気が付き取りに戻る。山に行くのにマスクが要るか?という気がして、うっかり忘れてしまう。しかし、マスクがないと、地下鉄の中では肩身が狭い。

 予定より1便早い5:49の地下鉄に乗り、6:02には博多駅に到着した。中央改札口に行き、長崎本線の時間を確認すると、またもや6:33のかもめ3号の標示がない!なんのアナウンスもないため、やむなくみどりの窓口に行き、かもめの指定席の発券をお願いすると、先週の窓口と同じ女性で覚えていてくれたようだ。「すみません、今日は雨ではないんです。長崎本線で自動車との接触事故があって、運転見合わせなんです。」

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 なんと2週連続で長崎本線のトラブルのために、トレッキング再開地の雲仙に向かうことができない。次のかもめ5号は7:17発だが、まず定時に発車する可能性はないとのこと。かくなる上は、高速バスはどうかと時刻表検索を行う。博多駅バスターミナル7:19発の島原行の高速バスに乗れば、雲仙に12:00ぐらいに着くことができそう。あとの行程が少しきつくなるが、こうなったらバスで行こうと、バスターミナルに急いだ。幸い空席はたっぷりあり、予約の後、朝マックを購入してバスに乗り込んだ。

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 バスで島原まで3時間余。長い。文庫本を半分読んだ。今日は新田次郎の本。これ以上読むと、この先読むものがなくなったら困ると思い、残りの2時間は映画を見た。2015年のアメリカ映画のThe End of the Tour。おそらく芸術的なのだろうが、正直言ってつまらなかった。映画が終わるころに、ようやく島原の島鉄バスターミナルに到着した。ここで雲仙行きのバスに乗り換え、40分かけて12:02に雲仙の前回トレッキングコースから離脱した地点に到着した。

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 雲仙の温泉街から南に進み、山道に入る。そのまま30分ほど歩いたところで、小地獄温泉に到着した。ここは秘湯感溢れる公衆浴場で、建物がとても風情がある。歩き始めたばかりだが、白濁系のこの有名な温泉には入ってみたかったので、20分ほど浸かってみた。とろりとしたお湯で、なんだか効き目がありそうだった。

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 本来は、この温泉で旅館からの取り寄せ弁当を食べる予定だったが、現在は休止中とのこと。やむなく、100mほど下ったところにあるホテルのレストランで瓦うどんなるもののランチとした。

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 ランチの後は、13:18に行動再開し、シーズンならばミヤマキリシマで埋まっている宝原(ほうばる)園地を経由して、高岩山の登山道に入る。ここは宗教の山で、登山道のいたるところに鳥居やしめ縄がしつらえてある。ゆっくり時間をかけて登り、14:14に高岩山の880mの頂上に到達した。残念ながら頂上付近は濃い霧に覆われており、まったく眺望はなかった。

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 地図を見ると、今日のコースは高岩山をピークとして、急傾斜の高岩山を下りた後は、ほとんどゆっくりした下り。濡れた石段に気を付けながら、14:39には高岩山登山口まで下り、15:12には塔の坂の集落に到着した。ここには廃校になった小学校を活用した南島原食堂があり、名物の手延べそうめんを提供しているはずだが、残念ながら日曜日の昼だけだった。

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 塔の坂集落からは、ほとんど交通のないようなコンクリート舗装路や山道を進み、15:40に舗装路に沿った八手観音の交差点に到着した。さらに600m進むと論所原エコパークに到着した。ここは美しく整備された芝生のオートキャンプ場と農園の広がる公園。残念ながら持ち込みテントは禁止のため、先に進む。

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 ここからは、畑の中と山道とをかわるがわる繰り返しながら、16:40に金比羅神社に到着した。ここから先は舗装路で、時折、人家も現れる。原山ドルメンという縄文時代の墓石の跡地を通過した後は、ジャガイモ畑の中を通り抜けて17:30に諏訪の池に到着した。ここには3つに分かれた広い池があり、ブラックバス釣りが盛んなよう。釣り人を眺めながら、18:00に諏訪の池の休暇村に到着した。

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 ここは国民休暇村で、キャンプサイトも整備されている。また、宿泊施設もあり、温泉は外部の人間も利用できる。キャンプサイトにテントを設営した後、フロントでキャンプサイトの利用料と温泉代を支払い、ゆっくりとお湯の中で手足を伸ばした。極楽極楽。

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2020年7月4日 九州自然歩道 30日目 雲仙市小浜町雲仙~雲仙市小浜町大亀諏訪の池休暇村 曇り 気温26/22 距離17.4km 行動時間5:57 平均速度3.3km/h 32061歩

九州自然歩道 29日目  普賢岳の噴煙を眺めて雲仙温泉の湯煙の中に 雲仙市吹越峠~雲仙市小浜町雲仙 2020年6月21日

 今日は早い時間に雲仙の温泉に到着して、ゆっくりとお湯を楽しみたかったので、早起きをして5:37に行動を開始した。天気は悪くない。少し寒い。今朝の気温は8℃しかなかった。

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朝の天気は曇り

 傾斜のきつい山道を妙見岳に向かって進む。妙見岳雲仙岳の一つ。九州の山の雲仙という名前は有名だが、じつは雲仙岳という名の山はなく、主峰の普賢岳に、妙見岳、国見岳、そして最も新しくできた平成新山などを加えた、周辺の山の集合を雲仙岳と呼ぶ。今回は吹越峠の登山口からは最も近い妙見岳を最初の目標に進む。

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吹越峠から妙見岳への分岐には比較的容易に到達

 早起きの効果があり、5:59には標高1300m近い妙見岳と国見岳の分岐に到着した。分岐部からはすでに平成新山の煙が見える。まずは分岐から標高差のほとんどない南の妙見岳(1333m)に向かい、6:14に妙見神社にお参りして分岐部に引き返した。

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木々の間から普賢岳とその向こうの平成新山が見える

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妙見岳の山頂近くにある妙見神社

 次に分岐部から北に向かい国見岳を目指す。国見岳はなだらかな尾根が連なった妙見岳に比べると、ずいぶんと鋭角的な山。頂上付近には鎖場がつけてあるのが下からもわかる。

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国見岳はずいぶんと鋭角的な山

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国見岳の頂上付近には鎖場が

 国見岳に登り始めてから10分ほどで頂上に着いた。ここは眺めが良い。1347mの頂上からは360度の眺望があり、有明海橘湾普賢岳がたっぷりと楽しめる。

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国見岳頂上(1347m)

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国見岳頂上から千々石の方向を眺める

 国見岳から分岐部に引き返し、今度は普賢岳妙見岳、国見岳でできた深い谷間をぐるりと回って平成新山を間近に眺めるコースに向かう。7:28に鬼人谷口(きじんだにぐち)という何とも恐ろしい名称のポイントに着き、ここから北東に、平成新山の北の斜面に向かって歩きはじめる。

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国見岳、妙見岳普賢岳に囲まれた深い谷間

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鬼人谷口の分岐

 途中に風穴(かぜあな)という洞窟が2カ所あり、洞窟の奥から吹き出てくる冷風で汗をかいた身体を冷やした。風穴は、かつては蚕の冷温養殖に使用されていた洞窟だそうだ。

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西の風穴 かつては蚕の冷温保存に使われていた

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北の風穴

 8:17には周回コースの北端の鳩穴分かれに到着した。ここは有明海を正面に望む景色の良いところ。ベンチが設えてあり、ここでシリアルの朝食とした。この先には、かつて鳩穴という洞窟があったそうだが、1991年の普賢岳火砕流で埋没してしまった。

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有明海を正面に望む鳩穴分かれ

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ベンチで朝食

 8:41に行動を再開。ここからは標高差150mほどの直登ルートを進み、立石の峰の1325mのピークを目指す。ここからは傾斜がきついのとコースの幅が狭いため、右回りの一方通行に指定されている。9:00に屹立した岩が目印の立石の峰に到着した。

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斜面の上の立石の峰

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 ここからほぼ平坦な道を10分ほど歩いたところが平成新山のピークに最も近いところ。展望所のすぐ足元から蒸気が噴き出ており、爆発したらどうしようかと少し心配になるほど。足元には角の尖った石が散在しており、平成新山から落石してきたのではないかと思われる。

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平成新山が最も近くで見える地点 足下から煙が上がる

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 平成新山を間近に眺めてからは、少しずつ高度を落としながら、谷底にある霧氷沢に向かう。ここは冬季の樹氷がきれいなところ。いまは白いヤマボウシの苞が谷を埋める樹木の緑に映えている。

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霧氷沢の谷間から見える平成新山

 今回の最後のピークとなる普賢岳には9:45に到着した。標高は1359m。かつては長崎県内では最も高い山であったが、現在は1483mの平成新山に抜かれている。ここも眺望は素晴らしい。

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普賢岳頂上(1359m)

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平成新山の頂上からは常時煙がたなびいている

 南には島原半島の先端の口之津が続き、その先には次の目標となる天草諸島が海を隔ててグルリと目に入る。天草はこの目で見るとかなり広い。ここを踏破するのには何日かかるだろうか。

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島原半島の先端が口之津 狭い海峡の向こうには天草列島が広がる

 眺望を楽しみながらコーヒーを淹れた。山頂で飲むコーヒーはこの上なく美味しい。

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普賢岳の頂上ではコーヒータイム

 10:21に行動を再開し、普賢岳から紅葉谷に降りて、そこから妙見岳普賢岳との間の谷にあたる部分をアップダウンしながら進み、あざみ谷を経て11:23に仁田峠ロープウェイ乗り場に到着した。ここでは久しぶりの炭酸飲料水コーラでのどを潤した。

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普賢岳の下の紅葉谷から仁田峠に続く快適なコース

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仁田峠から運行される雲仙ロープウェイ

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 仁田峠にはめずらしくゴミ箱が設置してあった。最近は街中や公共施設からゴミ箱が消えつつある。観光地でもゴミの持ち帰りを要請するところが多くなってきた。ゴミ処分のコストや環境意識の向上のためとは思うが、長期に歩く場合にはゴミ箱がない現状は大変困る。今回は、仁田峠の管理者に感謝しつつ、2日分のたまったゴミを処分させてもらった。ザックが軽くなる。本当にありがたかった。

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ゴミ箱の存在はうれしい

 仁田峠からは、コンクリートの石段でできた道をコツコツ下り、12:25に池の原に到着した。

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仁田峠から池の原に続く石段

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池の原の休憩施設

 ここはミヤマキリシマの名所なのだが、すでに花期は過ぎており、いくつかの株が咲いているのみであった。本来このあたりには見渡す限りにミヤマキリシマが生えており、5月の最盛期には赤一色の光景だったのではないかと思われる。

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 ここから再度山道に入り、12:45に温泉街の北端にあたるおしどりの池の畔近くに到着した。

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おしどりの池

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紫陽花が水面に映える

 ここから市街地に向かって歩いていると、コンクリート造りの四角い箱のような建物から、タオルを持った女性が出てくるのが見えた。正面には別所浴場と小さく書いてある。地域の共同浴場のようだ。入り口には100円と書かれた、穴の開いた金属製の棒が建ててある。料金箱だ。誰でも入ることができるのだろうか?

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別所共同浴場

 男湯を覗いてみると誰もいない。強い硫黄臭がする。かなりワイルドな公衆浴場だが、思い切って入ってみることとした。

 中には更衣場所と、数段の階段を下りたところに2m×2mほどのコンクリート製の浴槽が一つ。服を脱いで階段を下りた。恐る恐る湯桶にお湯を取り、かけ湯をしてみた。ビックリするほど熱い。こんなに熱いのは手前の方だけかと思い、奥に回って湯温を確かめてみたら、さらに熱い。奥にかけ流しの出湯口があるようだった。

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別所浴場の内部

 罰ゲームか拷問のように熱い。東京の下町界隈の銭湯よりも熱い(例として、熱いので知られる上野御徒町の燕湯は46℃)。最初は足首までしか浸かることができなかった。冷水の蛇口があるが、入れて冷ましても良いものか分からない。後で入ってきた地元の人から、「べらんめい、雲仙の湯にはこうやって入(へえ)るんだよ!」とか言われたら、かなわない。罰ゲーム級の熱湯に真っ向勝負で挑むこととした。

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 蛇口の冷水で真っ赤になった足を冷やして、次は膝まで浸かる。動くと熱い。さっと飛び出て、膝から下にホースの冷水をかけて処置を施してから、次は腰まで浸かる。最後は肩まで浸かって60数えて外に出た。これ以上浸かったら生命の危険を感じたため、これで雲仙の温泉は終わりとした。最後まで誰も入浴者は訪れず、正式な入浴の仕方は不明のままだった。筋肉痛をほぐすことはできなかったが、ローカル感のたっぷりな温泉に浸かることができて満足だった。

 着替えを済ませてから、別所浴場の前のベンチで身体を冷やした。風が心地よかった。

 それから雲仙温泉街を散策し、地獄めぐりの後、焼きたての温泉煎餅を賞味した。

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こちらはメジャーな湯の里温泉(通称だんきゅう温泉) 残念ながら現在は長崎県民限定の入浴

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温泉神社

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地獄

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大叫喚地獄

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地獄の湯気で加熱した温泉卵

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名物の手焼き温泉煎餅 とてもクリスピー

 14:45の雲仙始発の諫早行きのローカルバスの乗客は2名。のんびりとした気分で、福岡への帰途についた。

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2020年6月21日 九州自然歩道 29日目 長崎県雲仙市吹越~雲仙市小浜町雲仙 曇り 気温28/8℃ 距離9.4km 行動時間8:36 27381歩

九州自然歩道 28日目 ヤマボウシの映える九千部山から雲仙に 長崎県雲仙市千々石町~雲仙市吹越峠 2020年6月20日

 3か月ぶりの九州自然歩道になる。ようやく全国的に県をまたいでの移動が公に認められるようになった。4:20に起床して、花木に水遣りをしてからシャワーを浴び、機材の点検をしてフルーツの朝食を摂ってから家を出た。

 いつものように福岡市営地下鉄西新駅から目的地に向かう。博多駅で乗り換えて、6:33発のかもめ3号で長崎方面に向かった。バスのほうがやや安価だが、電車のほうが早く、乗り心地が良い。今日は久しぶりなので、JRの旅を選択した。

 かもめはJR九州の名物デザイナー水戸岡鋭治の作品。車内は快適で、2色のストライプの板張りの床が心を和ませる。乗客は少なく、現在はこの車両には3名しか乗車していない。

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 長崎県諫早駅に到着したのが8:14。ここからは1時間に1便程度運行されているローカルバスで、前回の九州自然歩道トレッキングを中断している雲仙市千々石まで向かう。諫早からのバスの乗客は6名。途中で2人乗降があったが、のんびりしていて良い。

 島原鉄道バス、略称島鉄バスは定刻より少し遅れて9:37に雲仙市の千々和小学校前バス停に到着した。このバス停のすぐ前にセブンイレブンがあるのは、前回のトレッキングの時に確かめている。セブンイレブンで、昼食用のおにぎり、夕食用のサラダ、それから飲料水を購入して、10:00に行動を開始した。

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 セブンイレブンから200mほど山手に上がると、橘神社がある。ここが前回の九州自然歩道からの離脱地点。ここから九州自然歩道のトレッキングが再開する。天候は曇り。気温は24℃。歩きやすい気候だ。

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 しばらくは千々和の集落の中をジグザグに進む。そこかしこに、キリシタンの名残りの像が残されている。集落の石垣が美しい。このあたりの石垣に使われているのは、長崎北部で使われていた黒く平らな石とは異なり、丸みを帯びた石。雲仙岳に由来する火成岩だろうか。

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 集落を抜けると傾斜の厳しい山道に変わる。踏み跡はほとんどついていない。昨日までの雨のため、苔のついた山道が滑る。転ばないように気を付けながらゆっくりと歩を進め、10:54に尾根にあたる弘法原に到着した。ここは牧場の里あづまの入り口にもなっており、眺めが良い。

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 ここからは尾根に沿った歩きやすい道。アップダウンは少ない。千々和の町から雲仙にかけて広がる山は、400~600mほどの高さであるが、等高線が幾重にも重なる急な傾斜をしている。この傾斜は、千々石町の前方に拡がる橘湾の陥没に伴う断層だとのこと。尾根沿いにあるピークである鉢巻山、九千部岳ともに、南面はスコップで抉られたような形をしている。

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 杉の植林の中の涼しい道を快調に歩く。ただし弘法原からの尾根伝いの道は眺望はほとんどない。また、距離は5.8kmと比較的長い。

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 途中で小休止を挟みながら、昼食を摂ろうと考えていた田代原トレイルセンターには13:20に到着した。ここには30台ほどの駐車場と休憩施設がある。また、キャンプ場があり、数家族がオートキャンプを楽しんでいた。ここで昼食を摂って14:00から九千部岳の登山口に向かった。

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 九千部岳は1062mの山で、田代原との高度差は500mほど。ただし、地図では等高線はかなり密になっており、大きな荷物を持っての登山は覚悟が要りそう。案の定、登山道に入ったらすぐに直登のコースとなった。前回の英彦山から使い始めたトレッキングポールを駆使して、汗まみれになりながら先に進む。体中の汗が出るほど歩いたところに立っていた標識には残り1000mの文字が。登山口には頂上まで1800mと書いてあったから、まだ半分も進んでいなかった。

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 さらに辛抱を重ねて登っていくと、ときおりきれいな橘湾の海が見える。頂上間近ではザックが石の間を通過しないため、石の上に持ち上げてようやく眺望のある山頂付近に到達した。

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 先に親子連れと思われる5人組が岩の上からの眺めを楽しんでいた。とても気持ちの良い家族で、一緒に岩の上でしばらく眺めを楽しみ、ミカンを頂いた。剥いたミカンの皮を、これは持って帰りますからと言ってくれたのは本当に嬉しかった。こういう心遣いのできる人たちはなかなかいない。

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 九千部岳ヤマボウシの名所として知られる。頂上から橘湾にかけての斜面には、ヤマボウシの白い葉が緑の山のところどころを点状に染めている。

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 この岩からさらに10分ほど進み、九千部岳の本当の頂上に着いたのは15:50。頂上に着いた頃は雲がなくなり、雲仙の山々が見えてきた。ここから下山ルートを20分ほど進み、先ほどの家族とは分岐で別れることとなった。

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 ここからはアップダウンの少ない低木に囲まれた快適な道を1時間ほど進み、17:02に国道との合流部にたどり着き、17:16に吹越トンネルの入り口に到着した。この頃ようやく普賢岳の山頂を隠していた雲がきれいになくなり、美しい山体が見えてきた。

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 吹越峠から雲仙の山への道が始まる。少し迷ったが、木々の間から見える橘湾の眺めを楽しみながら30分ほど山道を進んだところで18:05に本日の行動を終えることとした。

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2020年6月20日 九州自然歩道 28日目 長崎県雲仙市千々石町雲仙市吹越峠 曇りのち晴れ 気温24/8℃ 距離13.7km 行動時間8:10 30668歩

往路交通:西新6:08福岡市営地下鉄-博多6:22/6:33JR長崎本線かもめ3号-諫早8:14/8:50島鉄バス-9:29千々石小学校前

九州自然歩道 27日目 見わたす限りのジャガイモ畑の中を歩く 長崎県諫早市碁盤の辻~雲仙市千々石町 2020年3月22日

 テントの外が明るくなってきた。鶯の声が聞こえる。雨の音は聞こえない。時間を見ると5:45。昨日の時点の天気予報では諫早市の6:00の降水確率は80%。神様が願いを聞いてくれたようだ。

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 テントの外に出てみたが、周りの草地も濡れていない。日の出の前ということもあるが、空は真っ黒で今にも雨が降り出しそう。少し早いが、雨が降り出す前に撤収して行動を開始したい。雨でぐっしょりになったテントをバックパックに詰めるのと、乾いたまま撤収を終えるのとでは気分は大違いだ。いつもはコーヒーを飲んでから行動を開始するが、今日はサクサクと撤収作業を進め、6:36に歩き始めた。

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碁盤の辻からの山道 最高に快適!

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 昨日の碁盤の辻は眺望を期待していただけにがっかりだったが、ここから土師野尾(はじのお)集落までの下りの山道は快適だった。簡易舗装の山道で、舗装の痛んだところにはきっちりメインテナンスがしてある。ついこの前コンクリートを流したようなところもある。

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メインテナンスの良い道路がいい!

 7:02に土師野尾の集落に出たが、途中の案内標識がなく、本来のコースよりも集落の奥にあたる少し西のところに出ていた。

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土師野尾の集落はちょっと奥まったところにあり、伝説の里の風情がある

 缶コーヒーを飲みながら散歩をしていたおじさんから声をかけられ、土師野尾の地名の由来、この集落が守る八天岳の天狗の話などを聞かせてもらう。土師野尾の名は豊臣秀吉が朝鮮の役の際に連れてきた土師、すなわち陶工に由来するとのこと。佐賀にもそんな有名な窯があったが、ここにかつてあった土師野尾焼も半島に由来するよう。100年以上前に土師野尾焼は廃れてしまったとのことであるが、現在も登り窯の跡地は残っているとのこと。

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日本の田舎はこれ、という感じの風景か

 また、土師野尾集落のシンボルとなっている2つの大鳥居は、八天岳のご神体の岩を守るためのものとのこと。これにまつわる天狗伝説も詳しく聞かせてもらった。

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村のシンボルの大鳥居 鳥居の向こうに土師野尾焼の窯の跡が残るという

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右の山が八天岳

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集落の入口にも鳥居

 土師野尾からはゆっくりとした峠を上り、8:10に山口の集落に到着した。ここは一面のジャガイモ畑。畑にはマルチシートが敷いてあり、畑ごとに収穫時期をずらすためか、成長の具合の違うジャガイモの葉がシートから顔を出していた。

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マルチシートから葉をのぞかせるジャガイモ

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植え付けの遅い畑もある

 山口集落のジャガイモ畑は集約化が進んでおり、直線道路を挟んだ両側に、大きな区画の一面のジャガイモ畑が並んでいた。

 ジャガイモ畑の一面に広がった山口、牧野集落を過ぎてから、広い道路から狭い農道に右折、南下して橘湾の見える丘に向かう。右手にはジャガイモ畑の一端に建てられた巨大なJAジャガイモ選果場が周囲を圧倒している。

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巨大なジャガイモ選果場 ちなみに長崎県のジャガイモ生産量は日本で2位

 ジャガイモ選果場の先は、海沿いの早見の町に下っていく。橘湾が眼下に広がっていき、早見集落を通過する海沿いの道に出て、有喜(うき)漁港には9:57に到着した。

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見事な一面のジャガイモ畑

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その先に海が見えてきた

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橘湾に面した早見の町

 漁港では遊漁船のおじさんとしばらく話す。連休だがいまは釣れる魚があまりいない時期で、お客さんがいなくて暇だとのこと。もうすぐ産卵を控えた鯛がつれ始めるとのこと。

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有喜漁港

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 有喜の町で朝食を食べようとGoogle Mapで見つけておいた料理屋を探すが、2軒とも建物自体存在しなかった。仕方なく、200mほど山手に進み、国道251号線沿いのセブンイレブンでコーヒーブレイクとした。セブンイレブンの駐車場内に揚げたてかまぼこの店があったので3品購入して、断りを入れてからイートインで食べさせてもらった。揚げたては美味しい。お腹もくちくなった。ゆっくりしたかったが、コンビニは人の出入りが激しく、ゆっくりはできない。イートインの電源コンセントはテープで封じられている。15分ほど滞在し、10:30に行動を再開した。

 有喜から松重の町を通過し、丘の上から雲仙岳を眺める。ここが次の行程の山場になるが、海抜0mから1000mを超える山に至る縦走路には、山を越えた雲仙の元湯までは補給はなさそう。重い荷物になりそうだ。

 松重までは九州自然歩道の標識を見ながら歩いたが、地図に記載のあるここからから先の九州自然歩道の登り口はない。何度探してもない。無理をするとひどい藪漕ぎになるのが目に見えていたのでここは諦め、しばらく交通量の多い国道251号線を歩き、並行する旧道に移動することとした。しばらく静かな旧道を歩いていたが、その後旧道がなくなり、再び国道を歩くが、この道路は歩道がなく、路側帯もほとんどなく、それでいて交通量が多く、道が狭く、危ない。

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眺めは良いが交通量が多い

 500mほど国道を我慢して歩いた後、唐比(からこ)湿原に向かう静かな下り坂に入る。ここは交通量がほとんどない。スイッチバックの下り坂の先には湿原が広がっている。

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坂の向こうには湿原、その向こうには雲仙

 12:15に湿原まで下りてみると、このあたりは牧草地になっており、馬が放牧されている。家族連れが飼育舎のあたりを見学している。周囲が数キロほどもありそうな大きな放牧場で、こころなしか馬が幸せそうに見える。さらに進むと湿原を管理するネイチャーセンターがあるが、営業はしていないよう。

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湿原の牧草地に立てられた飼育舎

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見渡す限りの牧草地

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 地図上ではネイチャーセンターのすぐ先に、唐比温泉があるよう。もし営業していたらぜひ浸かってみたいと寄り道してみたが、ここは見事なまでの廃墟だった。そのかわりに、この海岸からの雲仙岳の眺めは素晴らしかった。

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唐比温泉の廃墟

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海岸からの雲仙の眺めは素晴らしい

 海岸沿いに500mほど進んだところにあじ彩という店があったので、ランチとした。地元の方が使う海鮮割烹という感じの佇まい。予約なしで入ることができ、海の見える部屋に通してもらった。おすすめのあじ彩ランチには質・量ともに満足し、14:10までゆっくりとさせてもらった。

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このお店はおすすめ 眺めも良い

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料理もよかった

 ここから先は千々石(ちぢわ)の町まで海のすぐ横の、右手からは橘湾に寄せる波しぶきを感じるほどの海沿いのコンクリート舗装の道路が5kmほど続く。正面には雲仙普賢岳が頭を雲に隠して聳え立つ。左には100mほどの絶壁。波の音を聞きながら、アブラナ科ハマダイコンの花に囲まれた最高に気持ちの良い道を、1時間ほどかけて歩くことができた。このコースは死ぬまでに歩きたい道の候補にする予定。

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唐比から千々石までの海岸沿いの道路は左が絶壁で右が海

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ここにかつては軽便鉄道がとおっていた 乗りたかった!

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道路はハマダイコンアブラナの花に囲まれていた

 海岸の石は、雲仙に近づくにつれて、丸みを帯びたものから、黒くゴツゴツした石に変わってきた。それにつれて、波の音も激しい音に変わってきたような気がする。

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はじめは海岸の石が丸い

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雲仙に近づくほど石が黒くゴツゴツに

 千々石の町に入ると、海岸沿いには防風林がきれいに整備されていた。この海岸は西に面しているので、とくに冬は強い風波に曝されるからだろう。しかし、この防風林の整備状況がすばらしくきれいで、とても絵になる。

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千々石の海沿いの町は防風林で守られる

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防風林の手入れがいい

 15:30に千々石港に至るまで、橘湾の美しい海と雲仙の山並みを楽しみ、千々石の街並みを散策してから、長崎行の急行バスに乗って帰途についた。

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次のトレッキングはこの町をスタートして背後の雲仙岳にアタックする

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2020年3月22日 九州自然歩道 27日目 長崎県諫早市碁盤の辻~雲仙市千々石町 曇り 気温18/10℃ 距離25.8km 行動時間9:56 37215歩

復路交通:長崎県営バス雲仙特急 千々石小学校前 16:48-長崎駅前 17:51/JR長崎本線 かもめ38号 18:18-博多20:14/福岡市営地下鉄 20:27-西新 20:40